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とりあえず平和な日常をくれ!  作者: ネームレス
領土戦での日常
156/248

155.最終試合:ライアー

 不意に、世界が歪む。


「っ!!」


 一歩だけ、横にずれる。

 しかし、僅かに間に合わず肩口から血が吹き出る。


「ぐ……」


「ほお流石の反応速度だな惚れ惚れするやはりNo.1の肩書きは伊達じゃないということかしかし残念ながら今のお前では我について来る事は出来ない何故ならお前の時間は他よりもゆっくりと流れているいや我が流させているのだから流石に人間相手にやるのは骨が折れるがゆえせいぜい倍率としては二倍と言ったところだがそれでも一秒は二秒一分は二分に伸ばされるが故一瞬で全てが決まる勝負の世界においては致命的であろうしかし反撃も怖い故ダラダラと話すのはやめそろそろ決めさせてもらおう」


 間などあってないような物で、一気に喋られ頭でも理解が追いつかない。

 しかし、重要な部分は聞き取れた。

 時間は他よりもゆっくり流れている。

 倍率は二倍。

 私の周りの時間が二倍のスピードで流れているということ。

 私はすぐに勝負を決めるつもりだった。

 しかし、これでは私が受けるのに必死になる。

 そうなると、二倍の速度で時間は過ぎて行く。そうなると短期決戦もへったくれもない


「まあこの方法は難しくはあるが自分を加速させるより遥かに長時間展開させることが出来るため有用だしかし自分を加速させることも出来なくなる故多対一には向かないが一対一にはその本領を発揮する悪いがお前に勝ち目はないぞ」


 斬撃が飛ぶ、いやそう見える。

 それを反射だけで避ける。

 刃が体を掠める。

 血が飛ぶ。

 絶え間無く、変わり無く、暇も無く、ひたすらにその状況が続く。

 まるで、繰り返される時間に囚われたかのように。


「どうした東雲 舞まるでカメのようにゆっくりだぞもっと早く動けないのか」


 聞き取る暇も無い。

 だけど、バカにされた事だけはわかる。

 少し、ムカつきますね。


「どうした避けてるだけでは勝てないぞそれに続けば続くほどお前の恐れる最悪の展開になりかねんぞ」


 そんなのはわかりきっています。

 マキナ・チャーチの合流。

 この状態では逃げることも難しい。

 どうする。

 ……手は無くは無い。

 しかし、危険過ぎる。

 だけど、これ以外に手はない。

 危険を侵して結果を求めるか。

 安全を求めて危険を侵すか。

 ………………。


「決まってますね」


 安全を求めても、結局その先にあるのは危険のみ。

 なら、今起こす方が、目に見えるところで起こった方が、安心できる。


「座標確認」


「それはやらせん!」


 とても焦ったように、先ほどよりも倍速の速度で言葉を発し、攻撃の苛烈さが増す。


「痛ぅぅぅっ!」


 斬撃が先ほどよりも深く入り込む。

 集中が途切れそうになる。

 しかし、途切れさせるわけにはいかない。


「設置」


 その一言と同時に、槍投げの槍のような物がコロシアムを囲むように置かれる。

 いや、その表現は正しくはない。

 空間が歪み、そのように見えるだけだ。


「それ以上は進ません!」


「あなたの斬撃は見切ってます」


 例え二倍でも、来るとわかっている斬撃を見てから避けるのは容易い。

 予測出来るのが一番いいんですけど、この世界の中で相手の一挙一動全てを見切るのは難易度が高かった。

 しかし、致命傷を受けなければそれでいい。


「連結」


 歪みによって出来た槍が、一つの歪みで繋がれる。

 結界は出来た。

 後は時間だ。

 歪みは徐々に大きくなる。大きければ大きいほどいい。

 世界が壊れない程度に、歪ませる。


「タイミングが難しいですねー。感覚的にはいつもの二倍なんですけど、二倍になってる分タイミングもシビアなんですよねー」


 歪みが大きく、太くなる。


「くっこのままではこれで決める!」


 それは今まで見た中で一番純粋な、二撃目、三撃目に繋げる斬撃では無く、必殺の一撃。

 しかし、


「っ!」


「ちぃっ!」


 一番深く、刃が入り込み、血が噴出する。

 しかし、その斬撃がタイミングだったかのように、歪みも丁度いい大きさになる。

 発動させる。


次元破壊(ワールド・エンド)


「っ!」


 結界は世界。

 世界を限定し、世界を切り離す。

 限定された世界だけを、“破壊”する。

 爆音が、轟音が、途轍もない衝撃と共にその身を襲う。

 世界にヒビが入り、世界が割れ、世界が崩れる。

 同時に、私の時間も元に戻る。


「ぐぅぅっ!」


「どうやらあなたの能力も切れたようですね。これで終わりです!」


 世界の崩壊に、廻間を落とす。

 そう、落とした。


「世界は壊れた」


 誰かがそう言った。

 事実だ。

 誰からどう見ても、その通りだった。

 なのに、なのに……。

 まるで先ほどの光景が全て、“嘘”だったかのように、世界が戻っていた。


「……嘘」


「嘘ですからね。“世界が壊れたなんて”」


 直感する。

 この状況はやばい、と。


「遅いぞ、“ライ”」


 “ライ”。

 前に、本部に送還されたマキナ・チャーチの一員。


「飛びます!」


「わかった」


「了解した!」


 冷華さんが輝雪ちゃんを、和也くんが紅くんを背負ってるのを確認し、ゲートを開く。

 誰かが何かを言う前に、私たちはゲートへと飛び込んだ。

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