152.第四試合:太陽
「さあ! 僕のステージの開幕だ!」
「ほざけ!」
俺は風を足に集める。
思い出せ……あの時の、烈とやった時の加速を!
「だっらあああああああ!」
「なっ!?」
距離は結構あったが、このスピードの前には関係ない!
「突風の一撃!」
いつもより一層強く吹き荒れる風を無理矢理に押さえつけ、日差の顔面にパンチを放つ。
「太陽域!」
だが、日差の周囲が一瞬で気温が上昇する。
……って、あちぃ!?
「あっつあっつ! ふー、ふー」
焼ける焼ける!
「ふっ。この太陽域の前には何人たりとも踏み込むことはできない!!」
今の俺には、それを真っ向から否定する手立ては無い。
「前は陽炎結界とか言ってましたよね〜」
「その前は拒絶の日差し、だったか」
「サンライト・エア、というのもあった」
萎えるからやめてくれないかな。
「ふっ。こんな戦い、すぐに終わらせてくれる! くらえ! 僕の秘奥技を!」
「え、ちょっ、初っ端からか!?」
バランスブレイクし過ぎだ!!
「閃光滅焼殲か?」
「コロナ・ブレイズだと思いますよ〜」
「ソル・メテオリトだと思う」
「今回は何かしら。陽炎の波動かしらね」
「シャイニング・ブラスターじゃね?」
「一番まともだったのは光牙・崩だと思うな」
「我はフォーリン・サンだと思うぞ」
……秘奥技ってそんなにあるものだっただろうか。
俺は合体技がたくさんある主人公ならしってるけど、個人の秘奥技だと、多くても五つだぞ。それだってレベル1秘奥技、レベル2秘奥技みたいに威力にはバラつきはあったが。
だが、同じ威力が七個とか規格外だな。
「ハァァァアアアア!」
「って、惚けてる場合じゃねえ!」
妨害をすればいい。
だが、日差の持つ剣が発光し始めた瞬間、圧倒的熱量が壁となり、進行を防ぐ。
……攻防一体かよ。チートですね。わかります。
『紅! 冷やして!』
「っ! そうか、北風!!」
西風を発動させたまま、北風を使う。
前よりも明らかに冷たい空気が俺を中心に吹き荒れる。
だが、“風”と“太陽”では、イメージではどうしようも出来ない程の差があるらしく、まだ常夏並の暑さが残る。
「こんな調子じゃ氷礫も作れねえ。というか、打つ手なしか?」
流石にヤバイと思い始めた矢先だ。
日差が動き出す。
「大地を照らし、闇を祓う日輪の輝きよ。民を守り邪を滅せん。我が名は日差 太陽。陽光を受け継ぎし者なり」
前任者がいたのか。
「くらえ! サンライズ・ソリューション!!」
「げっ!」
剣から閃光が放たれた。
それは全方位無差別に放たれ、浴びせられた箇所は溶解していく。
これは、やばい!
咄嗟に回避行動を取り続ける。
稀に見る驚異的な集中力で、俺は体を動かし避け続ける。
しかし、圧倒的な量の閃光に、俺の体はところどころ擦り始める。
というか、擦っただけでも
「あちちち!」
『我慢してください』
数分間。無駄に長く感じた数分間。
俺はついに避けきった。
「はぁ、はぁ……危ねえ」
「ほお。僕の秘奥技を避けるか。なら次は」
まだあるのか!?
「くえら! シャイニング・ドラゴン!」
それは、龍の形を模した光。
俺はすぐに逃げたが、まるで意思を持つかのように、俺を追跡してくる。
……追跡?
「なんで追ってきてんだあああああああ!!?」
「ははは! シャイニング・ドラゴンは僕の意思で操れる! 僕もその場から動けなくなるが、僕のドラゴンは最強さ!!」
「ちぃっ!」
その光輝く龍はまるで守護神だ。いや、実際そうなのかもしれない。
動けない主を護る最強の盾。
性能は高い。
だが、
「チャンスだパズズ」
『わかってます』
動けない。
奴は、龍が出てる間は動けないのだ。
だったら、龍の存在。たった一つ。これだけをクリアすれば、勝てる。
俺は日差から離れるように逃げる。
「離れれば僕が操作をミスするとでも? くらえ!」
「っ!」
龍のスピードが急激に上がる。
回避行動をとるが、ギリギリで左足が食われる。
だが、セーフだ。
『紅!』
「大丈夫だ! 右足が残ってる!」
右足が残ってれば、まだ何とかなる。
あの龍のスピード。一瞬なら、俺の全力で引き剥がせる。あれ以上のスピードが無ければ、だが。
そのためには、左足よりも右足の方がいい。俺がいつも最初に踏み出す足だからな。
「何を企んでるかは知らないが、これで終わりだ!」
「終わりなのは……」
俺はすでに壁際だ。
しかし、これでいい。
龍が目前まで迫る。
だが、耐えろ。
ギリギリまで待つんだ。
……………………今だ!!
「お前だああああああああ!」
俺が使いこなせるだけの風を全部右足に集め、地面を蹴る。
地面を凹ませ、上空へと身を踊らす。
「なっ!?」
山なりに移動し、日差の真上まで移動する。
スピードなら、俺の方が上だ!
「いっけえええええええ!」
手を空にかざし、風を放出させ推進力とする。
右足えお突き出し、上空からのキック。
これがラストチャンスだ!
「くっ!」
ドラゴンは間に合わない。
お前は動けない。
これで!
「まだだああああああ!」
当たる瞬間だった。
日差の剣から、閃光が走る。
これは、サンなんたら!?
一筋の閃光が頬かする。
だが、その熱量はかするだけでも絶大なダメージを伝える。
軌道はずれ、俺はキックを失敗する。
「はぁ、はぁ」
「ふう、危なかった。なかなかの戦いだったよ君は。だが」
日差は龍を仕舞い、俺の首筋に剣を近付けた。
「これで詰みだ」
……ここから逆転をする術を俺は持ち合わせていない。




