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とりあえず平和な日常をくれ!  作者: ネームレス
領土戦での日常
136/248

135.世界の秘密

「第一回・秘密大暴露 〜世界の秘密を教えちゃうぞ〜 スペシャルー! いえー!」


『いえー』


 ……なに? このノリ。

 えーと、整理だ。

 とても真面目な顔したルナに秘密話すから来いって言われて、ルナの部屋に行って、輝雪がお菓子持ってきて、和也が飲み物持ってきて、九陰先輩がお菓子を食べにきて、そしたらルナがシリアスを捨て始めて……。

 猫たちは日向ぼっこをし始めるし、こんな状態で大丈夫か?


「大丈夫だ。問題ない」


「和也。少し黙れ」


 ネタぶっこむな。


「使える状況では使いたくなるからな」


「ああ、まあわかる」


 笑えば(ry)とか、目が、目(ry)とか、あ、ありのまま起こった事を(ry)とか、使えそうだったら使いたいよな。


「そこ! 私語は慎む!」


「だが断る」


 ふっ、言えた。


「殴りたい、その笑顔」


「がはっ!?」


 おい! 今結構本気だったろ!?


「何しやがる!」


「ネタをぶっこんでみた」


「いいぜ。表に来いよ。男女平等パンチくらわしてやるよ」


「紅くん如き、生身でも勝てるわ。……叫べばね!」


「卑怯だぞてめえ!」


「いや、それ以前の問題なんだか」


『………………」


「おいそこ。黙々と菓子ばかり食べるな」


 俺とルナが睨み合う外で和也が苦労している気配がする。


「てめえ、いつまでも勝ってられると思うなよ」


「あらごめんね〜? 怒っちゃった? 怒っちゃった?」


「……殴ってやろうか」


「当てれないくせに」


「ポッキー美味しい」


「ポッキーゲームしましょうよ」


「は、恥ずかしい」


「私色に染めてあ・げ・る」


「お前ら少し黙れ」


『はい!』


 この場を支配したのは絶対的な恐怖だった。

 空間に染み渡る濃密な殺気は、這い上がってくるように体を支配し、脳の中に無理矢理に認識させた。


『これ以上騒いだら、殺す』


 と。

 実際はしないとわかっていても、頭の中のセーフティが、和也に従えと強制的に命令を下すのだ。恐ろしい。

 気配を出すも消すも自由な和也だからこそ出来る技だ。素でかなりチートだな、こいつ。わかってたけど。


「さっさと世界の秘密を教えたらどうだ」


「うぅ、そうだね。じゃあ、紅。よ〜〜〜〜く聞いてね。一回しか言わないから」


「おう。どんと来いよ」


「この世界の秘密っていうのはね……」


 場に緊張の糸が張る。

 世界の秘密……ついに明らかに。


「この世界は、実は繰り返されているのよー!」


「な、なんだってー!?」


 ……。

 …………。

 ………………。

 ……………………。


「で?」


「終わり」


 …………………………。


「終わりかよ!?」


「終わりよ!」


「逆ギレすんな!」


 一言。

 かなり凄いことではあるが、秘密だ。期待し先延ばしされてた分、がっかり感が凄い。

 というか、この中では俺だけが知らない事実なので、騒いでるのが俺だけだよ凄く恥ずかしい。


「で、繰り返されているってどういうことだ」


「あ、急に戻るんだ。まあ、実際大したことなのよ」


「大したことなのか」


「大したことなのよ。実行犯はマキナ・チャーチで崇められている存在。デウス・エクス・マキナ。そいつを倒せば全て終わる……!」


「っ」


 一瞬。

 ルナの体から強烈なプレッシャーが出る。言葉を失うぐらいに。


「で、でもよ。繰り返されているんだろ? 未来なんか、変えれるのか?」


 決定されてるんじゃねえのか?


「紅くん。パラレルワールドって知ってる?」


「は?」


「つまりはifの世界よ。たった一人が選択を変えるだけで、この世界は大きく動くわ」


「それがどうしたよ」


「わからないの? “記憶を保持した人間が、前回とは違う行動を取ったらどうなるか”。この意味はわかる?」


「…………あ」


 そっか。ルナは前回の世界の記憶を、いや、それより更に以前の記憶までも保持している。だから、新しい選択肢を唯一、意識して選べるわけだ。


「じゃあ、そのデウス……長いからマキナでいいや。マキナを倒す未来になるまで、この世界を繰り返すってことか?」


「……ええ。そうね」


「それって、確実に勝てるじゃねえか!」


 何のためにやったかは知らねえが、マキナって奴もバカだな。わざわざこちらの勝ちを確定させてくれるなんて。

 ……しかし、ルナの顔は浮かない。


「ルナ。どうし」


「紅。今は」


「和也?」


 和也に肩を掴まれ、静止させられる。

 輝雪も、九陰先輩も、全員が顔を俯かせる。

 どういうことだ?


「あ、そうだ。紅のことだから、どうせ私だけが特別みたいに思ってるんでしょうけど、紅もだからね?」


 その声音は、何とも空元気、と言えたものだった。そのおかげで、反応が遅れてしまった。

 ……また、俺だけ気付いてないのか。


「お、俺?」


「紅くんに覚えはない? 不意に変なイメージが、頭の中に浮かんでくること」


「……ある」


「紅も、私と同じ前回以降の記憶を引き継げる者よ」


「……はぁ!?」


「私ほどはっきりはしてないけどね。だから、紅も私と同じように未来を自由自在だよ!」


「いらなっ!? あ、もしかして俺が変な異名付けられて命狙われている理由って……」


「それのせいだね!」


「マイガッ!」


 な、何ということだ。この記憶のせいで、狙われている?


「いらねええええええええええええええええ!!!」


 この記憶に救われた事もあるが、そんな事も忘れて今だけは切実に、ただこんな記憶はいらないと思った。


 *


「いいのかい? あのこと話さなくて」


「カグヤ。……いいのよ、別に。話さなくてもいい情報なんてあっても、紅が悩むだけだから」


「……そうか」


 “私の死は決定している”。

 マキナのせいだ。あいつにわたしの時間を根刮ぎ取られた。

 しかし、言うことはできない。紅が、きっと全力で止めにくる。それに巻き込まれて、紅は何度も死んでしまった。

 もう、巻き込まない。


「これは全部、私が引き受けることだから」


 皆は私が守るんだ。

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