12.俺はフラグなんて信じない
「さて、行くか」
「輝雪、ちゃんと終わらせろよ」
「はーい」
夜。俺はついに初めての見回りに行く事になった。…楽しみでも何でもないけどな。
俺の理想はとにかく散歩で終わること。面倒事はご免だしな。…やるとなった以上、やるけどな。俺の命の為にも。
そして、今回は和也と俺の二人だ。輝雪は昼間に幼馴染の部屋を散らかしやがったから掃除だ。
「じゃ、お前はそっちな」
「おう。て、別れんの!?」
「当たり前だろう?効率がいいしな」
いや、俺初見回りなんだけど…。
「安心しろ。誰かがエルボスに入った時点で他の魔狩りもエルボスに飛ばされる」
「どういう仕組みだよ…」
「コク達は生まれてからすぐに共鳴転移というものが施される。それのおかげでコクやクロ、パズズのような猫と契約した魔狩り関係者はタイムラグ無しで同時にエルボスに行ける。…まあ、誰かが引っかからないといけないし、一般人が引っかかっても意味が無いがな」
「そうなのか」
仕組み云々は聞かなくていいか。わからんし。とりあえず、契約者及び猫が魔獣の群れに引っかかればみんなでエルボスに行けると。
「まあ、昨日出てるしそう簡単には出ないと思うがな 」
「了解。とりあえず歩き回ればいいんだな」
そして俺と和也は別れた。
・・・
・・
・
「紅、ちょっといいですか?」
「ん?何だ?」
そこら辺歩いてたら頭上の猫状態のパズズがいた。いつも思うんだが、和也達はパズズ達を猫と称すが、人間にも武器にもなれるこいつらを猫と言っていいのだろうか?
「紅は何故この街に来たのですか?」
…ふむ。
「お前と会うため、かな」
「辞世の句はそれでいいですか?」
「よくねーよ!」
何こいつ?怖い。
「言った筈です。私は我が儘です、と」
「それは我が儘じゃねえ!短気と言うんだ!そして俺はそれに対し多少は妥協はしてもらう、と言った筈だ!」
「冗談ですよ。で、何でこの街に来たのですか?」
俺の本能が叫ぶ。次は無い、と。特に隠す事でも無いので俺は体質について教えた。
「自分の事について考える時間が欲しかったんだ。俺は昔から不幸な出来事に間接的に会いやすい」
「えーと…」
「例えば、目の前の人の頭上から鉄骨が落ちたり、車に轢かれそうになったり、金銭面で助けを求める人にも沢山あった。多人数にボコられる人も見たことがある」
「…今まで、ずっとですか?」
「当たり前だろう?幼い頃は危うかったな。今はそこそこ自分にできることを把握してるが、昔は所構わず突っ込んで、逆に悲惨な結果を招いたり、自分自身が怪我をする事だって少なくなかった。家族にも迷惑かけた。だからこその自分のことについて考えたくて高校を家より遠目の所にして、アパートで一人暮らしする予定だったんだ」
「…成る程。…あれ?一人暮らしって、焔さんと晶さんがいますよね?それは…」
「俺がポロっとあの二人だけに言っちまって勝手について来たんだ。自分について考えたいから一人暮らし選んだのに、これじゃ家族と住んでる時と変わんねえよ」
俺は苦笑する。俺が言った瞬間に準備し始めたり、親説得したり。今でもあいつらの考えはわからない。
「…でも、紅は何だかんだ言って、何処となく嬉しそうですね」
「まあな」
あいつらが来れば、楽しい学校生活が送れるだろう。あまり友人作れる方じゃ無かったからな、俺。それに、あいつらと居る時間も楽しい。意外とプラス要素が多いのだ。
「まあ、紅の事が少しだけ知れて良かったです。私だけ過去を知られてるのは癪ですしね」
「おいおい」
まあ、いいか。
「それにしても、居ねえなー、魔獣」
「そんな毎日出る程頻繁じゃありませんよ」
「そうか」
「それに、こっちの方が安全ですし、喜ぶべきでしょう」
魔獣が出ない=平和。
……ふむ。
「それもそうか」
「でも紅、これってフラグ立ててると思いません?」
「いやいや。現実をあまり二次元とごっちゃにすんなよ」
「いえいえ。こういうのは意外と当たるんですよ?不幸を呼び寄せる主人公、闇が深まる夜、そして今日は出ないという根拠も無い答え。これはフラグですって」
「いろいろツッコミどころ満載だな、おい!そもそも俺は主人公じゃ」
パキーン!
ガラスが割れるような音。色が変わる世界。ほら見ろと言わんばかりのパズズ。
そういえば、俺は夜になると自分自身も不幸に巻き込まれやすいんだった。
決してフラグが立った訳では無いと信じたい。




