126.輝雪無双
「いやー、本当に魔獣が出てくるとはな」
「お兄ちゃん。気楽に言ってくれるけど数結構多いからね」
「数だけならどうにでもできる。人海戦術はまさに海の如く大量に投入しなきゃ意味が無い」
「うわー。どんどん首が切り落とされていくね」
「頑張れー！」
「ファイトー」
なんか皆遠足気分ねー。
私としては紅くんの方が気が気でないんだけど……。
「輝雪はもっと余裕持とうよ」
「そう言うけどね月島さん」
「ルナって読んでね」
「………………………………そう言うけどねルナ」
「すっごい葛藤したね今」
「魔獣の頭を探しに白木さんと氷雨さんは行っちゃったし、護衛対象は二人もいるし、魔獣は全方向から来るし、大変なのよ？」
「そういう事を話しながら片手間で片付けてる輝雪に言われてもねー」
「ねえ、さりげに一人入ってないけど私じゃないよね」
「焔、頑張って」
「晶助けてー！」
外野うるさいわねー。
ああ、そうだ。
「餌として吊るし上げて魔獣を集めるという手も」
「無いよ！ そんな手は無いよ！」
「うるさいわよ囮さん」
「文字ー！」
あー、でも囮さんを本当に囮にしちゃうと紅くん怒るよなー。
嫌われるのは嫌だなー。
『まさに愛ね』
「黙りなさいクロ。その毛を剥がされた上で爪を割られ関節を折られ歯を抜かれ目玉くり抜かれた上で頭を握りつぶされたくなきゃね」
『さすが輝雪。私が手塩に掛けて育てただけあるわ』
「あんたから教わった事は無いから。母親面すんな」
『もう、遅めの反抗期かしら』
「恋愛小説没収するわよ」
『ごめんなさあああああい！！』
効果はバツグンだ！
「あんたって本当に変なところで人間臭いというか何というか」
『死は輝雪が引き受けてくれるからどうでもいいけど、恋愛小説はダメなのよ！』
「さらっと私が死ぬ事をどうでもいいって言ったわねあんた」
これでパートナー成立してるというから不思議だ。
『それより輝雪。暇だからって死体をアート風に斬らないであげて。可哀想だから』
「ああ、こういうのは可哀想って言うんだ。でもこいつら魔獣だし死んでるわよ？」
『……少し疑心暗鬼の時期が長過ぎたかしら。芯から腐ってるわ』
「私蒼ちゃんや焔ちゃんみたいに紅と他の男が濃厚に絡んでる本とか読んでないし！！」
「ちょっとー！ そこさっきから何を話してんのよー！？」
あんな舌絡めあったり裸で抱き合ったり愛の言葉を囁きあったりその他諸々の本なんか、べ、別に興味なんか無いんだからね！
『いや、ツンデレ風に言われても』
うーん。それにしても暇ねー。
……あ、そうだ。
「月牙◯衝！！」
『アウトー！！』
「ついでに卍解版よ！」
『黒いからねー！？』
「えー。何が不満なのよ。そりゃ、威力は単純比較出来ないから再現出来てるかは知らないけどさー」
『リアリティの問題じゃない！』
「あ、あと私バスケの黄色の人と同じこと出来るよ！ コピーするやつ！ あと武◯色っぽく腕を黒くして炎とか水とか殴ったり、スサ◯オっぽいのも多分出せるよ！」
『ジャ◯プばっかねー！？』
「個人的には日曜日がタイトルの週刊誌の方が好きなんだけど、私で使えそうなのって言ったら……ねえ？」
『知らないわよ！』
もー、ノリ悪いなー。
「おい輝雪。一応は護衛だ。もっと真面目にやれ」
「大丈夫よ。二人なら逃げられる」
「私が逃げられないっての！！」
「お兄ちゃーん。ご褒美とか無いのー？」
「無視！？」
「ご褒美？ ご褒美か……」
お兄ちゃんは少し思案したあと、内容を言った。
「紅とイチャイチャしていいぞ」
「ちょっとクロ！ 何もたもたしてんの！ 九陰先輩とお兄ちゃんは三人を守って！ 魔獣は全部私が斬り捨てる！！」
『えええ！？』
驚く皆を尻目に、修羅と化した私は縦横無尽に走り回り、魔獣を一体残らず肉片にしてやった。
『愛の力ね』
自分でやっててあれだけど、それは違うと思った。
