125.残ったのは
「ん? なんだお前ら」
「うわー。時の迷子だよゲイル」
「うわー。時の迷子だねエレキ」
『なら潰そっか』
「そこの君! 危ない!!」
あそこの特攻服のようなのを着ている人が誰かはわからない。
でも、一人で勝てる相手じゃ……!
「死にな! 時の迷子!」
「死んで! 時の迷子!」
「っ!!」
ダメだ。ここから缶をを投げても間に合わな
「ああ。“慣れてるから平気”」
『え……!?』
片方が掌から雷、もう片方が風を出す。
だが、“雷はずれ、風はきえた”。
「雷は、前にどうにか出来ねえか刀夜に勝つために軽く調べたんだよ。そしたら、真空状態だと雷が通りやすいってあってな。だったら、真空状態を作って、そらせっかなって。風に関してはバカかお前としか言えねえな。俺は風の神“四柱”の加護を受けてんだぜ? 風で俺が力負けすっかよ」
「……油断してたなー」
「……油断してたねー」
「だったら!」
「今度は!」
「暴風の一撃!!」
『うわああああああ!?』
「鬼ですかあなたは!?」
はっ!? ついツッコんでしまった!
というか、何でこんなに強いんですか、この人は。
敵の情報はほぼ無し。それでいて、相手は見た目によらずかなりのやり手。だと言うのに……。
「……おいガキども。お遊びなら誰にも迷惑かからんようにやるんだな。今の俺は気が立ってる」
「……調子に」
「乗るな!」
すっと、息を吸い込む片割れ。えーっと、あっちは
「ふうううう!」
「やっちゃえゲイル!」
そう! ゲイル!
ゲイルは息を吸い、吐き出す。でもそれにどういう意味が。
「おい! 音音! さっさと逃げろ!」
「えっ、何で私の名を知って」
「いいから!!」
この時の私はいろいろと混乱していた。
元々、複数の事を考えるのは苦手だ。なのに、こんなたくさんの事が起きて混乱しないわけがない。
よし、言い訳完了。
「た、台風!?」
そう、ゲイルの息から出たのは台風。
それも複数の台風が出現し、複雑な気流を生み出し、動くこともままならない。
このままじゃ……!
「旋風の乱撃!!」
だが、謎の青年は右手を地面に着き、それを軸に回転を始める。
それを起点に周りの台風を巻き込む巨大な台風が……いや、それだけではない。
“風の斬撃”とでも表現するような、巨大な三日月状の風が辺り一帯、それこそ大きさも、方向も全てランダムに放たれる。
……て、こっちにも!?
「ちょおおおおおお!?」
『んにゃあああああ!?』
建物が、地面が、空気さえも、全てが乱され、崩れていく。
「って、危ないじゃないですかあああああ!!」
「おお、悪い悪い」
き、気楽に言ってくれますねこの人は!! あんなのくらったら重賞どころじゃ済ませんよ!
しかし、周りの台風が全て消えたのも事実。この人なら……。
「……チッ。逃げられるか」
「え?」
何で? この人なら双子を……。
落雷が落ちた。
光と轟音。頭がクラクラする。
「な、何が」
「雷獣」
この声は、双子?
声の先には、いろいろな動物の部位がくっついたような生き物がいた。……あれは、鵺? その背中には双子?
……双子認定してるけど双子、なんだよね?
「ふふ、まさかお兄さんがこんなに強いなんて」
「はは、任務失敗だねこれは」
「ふふふ」
「ははは」
『これで勝ったなんて思うなよおおおおおお!』
またしても光と轟音。そして、次に視界がはっきりした時には、もう双子はいなかった。
……勝った?
これで命の危険は去った。本当に、今でも何が何だか、と言った感じだ。
まあ、差し当たって。残る問題は、
「ふぅー、案外大した事も無かったな」
『ですね。楽勝です』
……問題は、この青年だ。




