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121.絶対強者

「じゃあね音音(ネオン)ちゃん」


「うん。ばいばい蒼ちゃん」


 お兄ちゃんたちが帰ってから、私たちはすぐに別れた。

 本当はもっと遊びたいんだけど、音音ちゃんが用事あるって断っちゃうんだよね。

 仕事は私の監視で補修は無く、家族でどこかに行こうという話もなく、趣味はBLで友達は私以外無しで話す人もいず、学校から変人認定されているのにそれに気付かなくて、私と一緒にいることから(ビースト)テイマーなんて言われてることすら知らなくて、さらに今月の小遣いはすでにBL本に使われて一文無しで、そもそも夏休み中は外には出ないと段下してたのを私が無理矢理引っ張り出した感じなのに、そんな音音ちゃんにどんな用事があるのか聞いてみたい気もするけどやめておこう。


「さーて、じゃあ私も帰りますかね」


 夏は暑いですね。ついつい薄着になっちゃいますよ。私の胸はそこまで大きい方じゃありませんから、色気は皆無ですけどね。いや、もしかしたらそっちの方がいいという方もいるかもしれません。まあ、私の方がすでに九陰さんや泥棒猫より大きいのですが。これでは間違っても自分のことをロリキャラなどとは言えません。

 それを踏まえた上で、


「帰路につく女子中学生を嫌らしい目で見る変態さんはいるとは思いたくありませんね。変態さん」


「……おいおい。凄え言われようだな、嬢ちゃん」


 ……若い。大学生くらいでしょうか。

 ミーンミーンとセミの声がよく聞こえる。周りに人がいないのを確認し、鋭く睨みつける。


「おいおい、あまり見つめるなよ」


「そんなこと言わないでください。私、もうあなたから目が離せないんです」


「……マジか」


「ええ。まずどこから攻撃するのが効率的なのかな、と」


「はっはっは。今すぐ視線を外せ寒気がする」


「おやおや。今は夏ですよ? 寒気がするなんて風邪でしょうか。こちらに濃硫酸(クスリ)があります。楽になりますよ」


「死んじまうだろ!!」


 死ぬ? 失礼な。


「運良ければ生きれます。重体でしょうが」


「風邪より悪化してるじゃねえか!!」


「もっと効き目のある王水(クスリ)もありますよ。コップイッパイ分ぐらい」


「致死率100パーじゃねえか!! というか、そんなもんどこから盗ってきた!!」


「え、そんな……もう、言わせないでくださいよ!」


「可愛らしく言っても狂気しか感じねえぞ」


 乙女の秘密なんです。


「で、変態さんは私に何をご所望ですか? 陵辱プレイですか? 鬼畜プレイですか? 着る服はなんでしょう。メイド服でしょうか。それともバニーですかね。すいません、初対面の方だと好きなタイプは存じ上げないもので」


「待て。何だそのさも日常的にヤってるような言い方は」


「……不景気な今がいけないんです」


「ビッチ!?」


「失礼な。ヤるのは私の方ですよ?」


「は?」


「最近は変態が多いので、襲ってきたやつはそういうプレイを行って社会的に抹殺できる動画を保存。あとは私の奴隷です」


「なん……だと……」


「絞れるだけ絞ったらあとは警察に引き渡し、動画もネットに公開します」


「悪魔! この悪魔!!」


「ま、しませんけどね。面倒ですし。今までのは全部嘘です」


「てめえええええええ!!」


 おお。今のご時世、奇跡と言っていいくらい純粋(バカ)な方ですね。ある意味尊敬します。


「……さて、そろそろ本題と行きましょう」


「本題?」


 ……はい?


「……おお! そうだそうだ。本題だよ本題。お前を殺しにきた!」


 アオは にげだした。

 バカは騙しやすいが、こういう時判断力が凄い。即断即決。戦闘においては非常に厄介な場合がある。

 それに、あの男からは凄い威圧感を感じる。見た目とバカさに惑わされてはいけない。

 あと、気になる事があるとすれば人の異様な少なさ。いくら田舎とは言え、誰も通らないなんてあるか? いや、あるかもしれないけど、幾ら何でも少な過ぎる。多分、人払いされてる。それは多分、“いつでも力を使えるようにするため”。

 とにかく、少しでも遠くへ……!


「転移!」


「っ」


 遅かった。

 空間は光に包まれ、視覚と聴覚から入ってくる情報を一変させる。

 こいつやっぱり……!


「マキナ・チャーチ!」


「悪いがそういうことだ。で、聡明な嬢ちゃんならこの状況がわかるよな?」


「……生け捕りは一度失敗されて警戒されている。なら、わざわざ危険を侵して攫いに来る必要は無い。だからと言って、自分たちが攫おうとしたぐらいの者をわざわざ相手側に残しておく必要も無い。つまり、生け捕りよりも遥かに簡単な……殺し、でしょうか」


「ご名答!! さすがうちが攫おうとしただけはある。美少女だし、口惜しいな。なあ嬢ちゃん。今からでも俺の女に」


「ならないので安心してください」


「そっか。“カグツチ”」


「しまっ!?」


 早い! というか殆ど直感で動いてるんじゃないの!?

 カグツチ。火の神。かなり有名な神だろう。

 その神の名の下に作られた業火が私に迫って……そして、誰かに引っ張られた。


「……?」


 業火が来ると思い、目を瞑っていた私はどういう状況かわからない。ただ一つ言えるのは、少し引っ張られた。それだけで私は生き残った。


「火遊びはいけませんよ〜」


 間の抜けたような喋り方。

 少しだけ、聞き覚えがある。そう、この喋り方。あのアパートの……


「……東雲、舞」


「は〜い。そうですよ〜」


 やはりこの人も魔狩り。

 と言っても、たしか直接話した事など無かったはず。それでも、見かけるぐらいはしていた。

 その時のイメージでは、温厚そうな感じだった。家庭的な、そんな感じ。

 だけど、今のこの人は、この人の目は、まるで殺人鬼……。


「んだよばあさん。今どうやった」


「……ふふ」


「何笑ってんだよ」


「いえ、嬉しくて。ああ、“久しぶりに力が振るえます”」


 語尾はもう、伸びてなどいなかった。


「はぁ? 何言ってんだ?」


「私の力は少々大き過ぎて、世界を壊しかけないので、いわゆる決戦様だったんですよ。ですが、あなたなら思う存分、振るえます」


「もう何でもいいかさっさと来いよ。燃えかすにしてやっか」


 その時だった。

 何と表現すればいいだろう。そう、あえて言うなら、“空間がきえた”。


「さあ、あなたは“何秒間”、逃げれますか?」

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