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118.私の覚悟

「うーん、いい朝」


「んにゃー」


 いやー、清々しいね。本当にね。でもね、


「やっぱり紅くんがいないと暇!」


「急にうるさいふぁ〜よ」


「はいはい」


 あー、でも。なんか忘れてるような気がするなー。何だっけ。

 今日何かあったかな? うーん、夏休み三日目。前の世界では……。


「あー、だめだ。思い出せない」


「そうなの? その記憶も完全じゃないのねー」


「そりゃそうよ。振るいにかけられてるようなもんよ。出なきゃ、“全世界の人間が自分の記憶で頭がパンクして死んじゃう”」


「そんなに?」


「人の記憶って本来の寿命より長く記憶出来るようになってるって言うけど、私たちは春から夏休みの終わりまで。四ヶ月間かな? それを何度も繰り返してるのよ。何百回何千回“何万回”とね」


「……本当にそんな過ごしてるの?」


「ええ、過ごしてる。“覚えてる”」


 絶対に、忘れたりなんかしない。“あの記憶だけは”。


「まーた、嬉しそうな顔してる。そして、複雑そうな顔」


「あの時、私は嬉しかったけど紅や皆には迷惑かけたしね。素直には喜べないよ」


 でも、何万回過ごしても唯一変わらなかった。状況が違えど、いつも紅の出した答えは同じだった。

 だから、私は嬉しかった。でも、その後に私は……。


「はぁ。生きられないのかな、私」


「ねえ、話が脱線してない?」


「ああ、えと、……なんだっけ」


「本当に私たちはそんなに過ごしてるのかって話」


 ああ、そうそう。


「過ごしてるよ。でも、普通は覚えられないからしょうがないよ」


「何であなたは覚えてるのよ。あと紅紅も」


「特別だから。そうとしか言えない」


「どう特別なのよ。私の場合はあなたも関係してるのよ? 私は月の巫女よ。月と強い繋がりを持っている。とくに、私とあなたはまさしく選ばれしパートナー。おかげで、私は強い神の加護を受け耐えれるの。世界が繰り返されてるのも、神の力だからね。相殺されてるのよ」


「なるほどねー。じゃあ、紅紅も四柱の加護を受けてるから? あと、あなたの不死性を分けてもらってるのも関係あるのかしら」


「多分ね。でも、あと一つ、何か足らない気がするなー」


「足りない要素があるの?」


「多分ね。流石に、“あの程度の繋がりじゃあね”」


 心の繋がりは大したものだと思う。力を少しずつだけど引き出しつつあるのも凄い。だけど、相性には関係無い。

 それに、この物語もこの夏休み中に全てが終わる。それじゃ遅過ぎるし弱過ぎる。あの程度の加護じゃ記憶を守れない。

 でも、私は弱い紅までしか知らない。


「だとしたら私の死後」


「でも、そんな急に記憶を守れるまでにパワーアップ出来る? こと相性に関しては、精神論とかじゃ片付かないわよ。……まさか」


「……鬼化(オニカ)


 あれなら、力を引き上げる事が出来る。だけど……。


「……まさか、ね」


 きっと紅が主人公体質でも使ってパワーアップしたに違いない。きっとそうだ。

 そもそも、鬼化しちゃったら元に戻れなくなるのだから。


「というかまた逸れてるー」


「えー、結論言ったじゃない。加護を極端に強く受けている私は同じく神の力で発動する巻き戻しの効果を相殺し、少なからず記憶を保持でき、多分紅くんも同じ。だけどそれ以外の人は耐えれずにそのまま同じ日常を繰り返す」


「でも、変わってるんでしょう?」


「私と紅が引っ掻き回してるからね。そりゃ変わるよ。一人の変化は世界の変化だよ」


「本当にー?」


「例えば落し物を拾う拾わない。これだけでも凄い変化だと思うわよ? 拾わないと本人に届かない。届かないからその人から動きが狂い始め周りにも影響する。一日もすれば極僅かと言えど世界が変わる」


「……そう。でもね雪音。あなたはじゃあ、後何回死ぬ気なの? 後何回、“極僅か”を積み重ねるつもりなの?」


「何回でも、だよ。目的を達成するまで。私は何回でも……死んでやる」


 これは私の覚悟。

 絶対に、このループを終わらせる。その先の未来を紅たちのために、切り開くんだ。


「……そう」


「…………ああああああああああああああ!!!」


 思い出したー!


「ど、どうしたのよ」


「今日紅たちのとこにマキナ・チャーチが攻め込むんだよ!! 舞さんたちに知らせてすぐ出発しなきゃ!!」


「ちょっと、雪音!!」


 大丈夫。まだ死なない。その運命じゃない。

 今できることを少しでも多く、極僅かを僅かに出来るように、頑張るんだ。

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