112.トモダチ
「じゃあね、由姫ちゃん」
「また来るね」
晶と焔も由姫が埋まる墓に挨拶を終え、帰る時間を迎えた。
「蒼はいいのか」
「由姫はすでに死んでいます。墓に何を言おうと無駄です。……本当に必要としている人だけが、語りかければいいのです」
「厳しいんだが厳しくないんだが」
「ご想像にお任せします」
蒼も相変わらずだ。
「じゃ、帰るか」
じゃあな、由姫。またいつか。
・・・
・・
・
「あ、お兄ちゃんはいつまでこっちにいるんですか?」
「どうしたんだよ」
「ほら、友達紹介したいので」
「あ、蒼の友達?」
普通に驚いてしまった。
というか。そういや出発する時に言ってたような……。
まあ、こいつは友達を作るタイプじゃなかったし、成長したんだなー。
……しかし蒼の友達。不安だ。
「そんな身構えなくて大丈夫ですよ。立場は対等ですから」
「その言い方だと対等じゃない人がいるのか」
「学校の生徒は私の奴隷です」
「おい!?」
え? まじ?
……こいつならやりかねない。こういうとこは正した方がいいのかもしれないんだけど、どうするか。
「任せて紅くん」
「おお、輝雪か」
何か策はあるのか。
「蒼ちゃん」
「何ですか輝雪」
「私は永遠の忠誠を誓わせたわ」
「やりますね」
「何の話だ!」
「え? もっと徹底的にやれって事じゃないの?」
「ちげえよ! 戒めろよ!」
「嫌よ。駒は増やしておいた方が楽よ? たまに襲ってくる奴らもいるけど」
「入学式の奴らかああああああああああああ!!!」
懐かしきモブキャラ。
「というかいるでしょ? 手駒ぐらい。みんなも」
「いやいや! いないよ!」
「風紀委員だと風紀委員長だからそういう意味では風紀委員全員手駒だけど。輝雪、あなたも含めて」
「まず作ろうと思わないよ」
「……勘弁してくれ」
「……意外といないのね」
「いると思う方がおかしいだろ!」
規格外だった。
今更だが、輝雪も大概凄えよな。
「で、蒼ちゃんの奴隷はどんな人なの?」
「もう、失礼な人ですね。労働力じゃなくて普通に友達です」
「会話の内容が最低だな!」
『え? どこが?』
こいつらって何処か似通っってるな。厄介な。
「やめとけ紅。輝雪はこういう奴だ」
「蒼ちゃんも昔からこんな感じだったし」
「……でも蒼。俺は今女だぞ?」
「だからいいんじゃない!」
「………………」
「痛い痛い痛いいいいい!? お兄ちゃん、いつの間にここまでの握力を!?」
「知るか! 潰れちまえ!」
「にゃああああああああああああああああ!?」
蒼が叫び始めた時点で周りから仲裁された。
チッ、命拾いしたな。
「とりあえず、お前の友達に興味はあるが俺はパスだ。適当に町を回ってるよ」
「ああ、お兄ちゃん!」
たくっ、蒼には困ったもんだ。
*
「ま、発信器付いてるしいつでも合流できるんですけどね」
「さすが蒼ちゃん!」
「妹の鏡」
『こんな妹は嫌だ……』
*
「おばちゃん、コロッケ一個」
「あらあら、若いお嬢さんね〜。はい、一個サービスしちゃう」
「お、サンキュー」
「ふふ、あなたと接してると紅くんのこと思い出すわ〜。あ、紅くんって子はね」
「あ、あはは」
まさか本人だとは思うまい。
「おばちゃん、コロッケありがとな」
「いつでもいらっしゃい」
いやー、いいねこういう雰囲気。
懐かしいし、解放的になれるしな。
いやー、本当に、本当に、本当に……。
「魔狩りさえ無けりゃな!」
「うるさいですよ紅」
「一週間だぞ!? たった一週間で何故また魔狩りをせなならんのだ!?」
「運いいですね」
「悪いんだよ!!」
はぁ……コロッケどうしよ。
*
「ああもう、蒼ちゃんと遊ぶ予定があったのに」
というか、魔狩りは一週間前にやったばっかなのに、早過ぎる。生き残りがいたのかしら。
「掃討戦って面倒なのよね。探し出すのが」
『おいおい、あんま愚痴ってないで、さっさと殺りに行こうぜ』
「頭は潰したはずだから、さっさと片付けるわよ」
私は銀色のティンパニを叩いた。




