110.昨日の夜は
「さて、行くか墓参り」
「ええそうね」
「行く」
「おお」
「……何でお前らも来るの?」
昼。
いろいろひと段落して、やっとか墓参りに行ける……。
「あ、もしもし。私だけど。うん。銀行の口座に100万ほどお願い。え? 無理? いやいや、行けるって。うん。行ける。まあそういうことで遊びの予定は遅れちゃった! テヘペロ☆ まったねー」
「……お前はどういう電話をしてんだ蒼」
なに軽い調子で詐欺ってんだ。
「ちょっとねー。友達」
「へぇー。蒼ちゃんの友達ってどんな」
「近付かないで!」
「っ!?」
「それ以上の近寄りは敵対行為とみなします」
「い、いや蒼ちゃん」
「輝雪さん。私はあなたの事を殺したい……殺したくない。お姉ちゃんのお願いで仕方なく……お兄ちゃんとか関係なく殺したい……殺したくない。だからそれ以上近付かないでください」
「殺したいの!? 殺したくないの!?」
「というか俺の呼称を統一しろ!」
「わかりましたお姉ちゃん」
「そっちで統一すんの!?」
「ねえ、ちょっと私は」
「シッ!」
「おっと! 危ない!」
「チッ」
「本気で殺りにきたわね?」
「気のせいですよ」
……何故出る前でこんな喧嘩を見なきゃならんのだ。
……ん? 輝雪がイヤホン付けてる。
「輝雪。何を聞いてんだ?」
「え!? ……いや、これは……」
「何を慌ててんだよ」
聞くって言っても音楽だろ? なんか恥ずかしいやつか? まさか、カラオケとかで自分で歌ったやつか?
「……きーせーつ♪」
「な、何かしら蒼ちゃん」
「私、何を聞いてるのか、とーっても気になるな♪」
「べ、別に皆に聞かせるようなもんじゃ」
「隙あり!」
「しまっ!?」
蒼が一瞬の隙を付き、イヤホンのコードを強引に引っ張った。
いや、流石にダメだろう。
「おい蒼。機器をそんな強引に」
『しゅ、しゅいましぇんごしゅじんしゃま〜』
『………………』
「きゃあああああああああああああああああ!!!」
輝雪が顔を真っ赤にしながらイヤホンの先……iPhoneの電源を落とした。
いや、まあ輝雪だし。何を聞いてても不思議ではない。こういう時も、生暖かい目で見守ってやるべきだと思う。
……俺の声で無ければ。
「……どういうことだ輝雪」
「ち、違うの! これは違うの!」
「輝雪。俺は説明してほしいんだ」
「いや、ね? その、いろいろあったのよ」
「俺の昨日の記憶があやふやなのと関連してるのか?」
「え? やっぱりそうなの?」
やっぱりって何だやっぱりって。
「まあ、昨日、“あんなこと”しておいて、何も言ってこない。覚えてないと考えるのが普通ですよね」
「おい吐け輝雪!! 俺の今後に関わる事だ!!」
「わ、わかったわよ! 昨日ね……」
・
・・
・・・
「ふう! さっぱりしたわね!」
「そうですね。お姉ちゃんの肌すべすべでしたー」
「うん」
「………………」
「紅くん?」
「ふみゅ?」
『っ!!?』
・・・
・・
・
「おい待てえええええええ!!! 「ふみゅ?」って何だ!」
「え? 紅くんが言ったのよ」
「言ってました」
「言ってた」
・
・・
・・・
「こ、紅くん?」
「ひゃっ!? ご、ごめんなさい!」
「あ、その」
「悪いことしません! だから許してください! お願いします! お願いします!」
『……これ、どうしよ』
「うぅ……」
「……とりあえずいろいろやっちゃいましょうか!!」
「ですね!」
「うん」
・・・
・・
・
「開き直ってるんじゃねええええええええええええええええええええええ!!!」
「てへ♪」
ああ、読めてきた。
そのあといろいろ俺で遊んだってのか。
「とりあえずそれ消せよ輝雪」
「うぅ〜……」
「お前らは録音してねえよな」
「まっさか〜。輝雪じゃあるまいし」
「そんなこと、しない」
「じゃあ、後ろに隠した物を出そうか」
油断も隙もねえ。というか、人がおかしくなってるってのに、よく人の体で……。
ついでに、そのあと晶と焔から、
『どうしたの紅? 何かあった?』
『紅遅いよ〜。早く〜』
という電話があった。いつもならこんなに時間かからないのに。無駄に和数稼ぎみたいなことしなくていいのに。
「……イベント多過ぎて怠い」
来年からは輝雪たちは連れて来ない。絶対。
結局性格が急変した理由もわからず、俺たちはやっとか動き出した。
……というか和也。面倒だからって会話に一切加わらなくなるのやめようぜ。
*
「ばれてない?」
「ええ、大丈夫です」
「大丈夫。紅の頭は残念だから」
「こういう時、紅くんの単純さは助かるわ」
「まさか、既にバックアップがあるとは思いもしませんよね」
「ミッション・コンプリート」
「コスプレ写真もいっぱい撮れたもんね」
「最高でした」
「紅可愛かった」
「じゃ、これからも」
「紅くんを愛でる会」
「活動頑張る」
『イエーイ!』




