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108.男としての大事な何か

「つ、疲れた……」


「お疲れさん。うちの両親、話し出すと終わんないからさ」


「……個性的な両親だな」


「……凄かった。いろんな意味で」


「そうかい。でも、うちじゃあれが普通だから。あと母さんには逆らうなよ」


『はい』


 一同が最初の関門をクリアしたところで、皆は俺の部屋に集まっていた。

 本当は殺したいところだったが、母親の目があるため殺れなかった。……有言不実行は趣味じゃ無いんだが。


「にしても、ここが紅の部屋か」


「意外とスッキリしてるわね」


「そりゃそうだろ。漫画やラノベ、ゲーム類。他にも学習用具や着替えとかは、殆どアパートに持ってったんだから」


 別に、片付けているわけではない。片付けるだけの物が無いのだ。

 まあ、短い期間……少なくとも高校卒業まではここに帰ってくることは殆ど無いのだから、面倒が無いのはいい。


「ん? 紅、あれなに」


 九陰先輩が指差すのは、俺の机に置いている写真立てだ。


「ああ。昔に撮った集合写真だよ。幼馴染の」


 別に隠すような物でもないため、取って渡してやる。


「へぇー、これが紅くんね。可愛いのね」


「これは……氷野と火渡か。あまり変わってないな」


「蒼ちゃんもいる。……? もう一人は」


「陽桜由姫ですよ」


「おい、ノックぐらいしろ」


 もう、狙ったかのようなタイミングでの蒼の登場だった。


「これが……?」


「月島に似ているな」


「そっくり」


「月島さんと言うのは?」


 ああ、そういや蒼は知らなかったな。


「由姫に見た目はそっくりな奴だよ。で、関係者」


「なるほど。その方は今どこに?」


「監視対象だからアパートに軟禁」


「……調べる必要がありそうですね」


 こういう事を調べれる一般市民って何なんだろう。いっそ、こいつが主人公の方がいいんじゃないか?


「私は主人公の器じゃありませんよお兄ちゃん」


「いや、いいから」


 サラッと心を読んでくるのにはもう慣れた。

 というか、さっきから気まずそうにこちらを見る魔狩り'sはどうした。


「んだよ」


「い、いや。いいの? こういう写真って、普通見せたがらないよね?」


「いいよ別に。変な気を使うな。引きずっちゃいるが、だからと言ってそれに足を取られ続けるのはもうやめにしたんだ。だから、由姫関連で俺を気にかけるような事はやめてくれ」


「まあ、お前がそう言うならそうするが」


 同情も慰めも、俺にあっちゃいけない。

 許しを求めちゃいけない。

 だからこの事で、誰かが気に病んではいけない。少なくとも、無関係な奴らは。


「墓参りは明日でいいか。今日はもう疲れたし」


「ほう? そ、れ、は、お風呂タイムってことね!」


「蒼ー。入るぞー」


「はい、お兄ちゃん」


「ちょっと待ったー!!」


「……んだよ」


 うるさいな輝雪は。


「何で蒼ちゃん!? アパートだと私担当だったよね!? ここでも私に任せるという選択肢は!?」


「無いな。あり得ない。皆無だ」


「否定の三段活用!? いや、でも何故蒼ちゃん!? 一番危険人物でしょう!!」


「少なくとも、お前よりは信頼出来る」


「それに、私には彼氏がいますし」


 蒼が頬を染めながら嬉しそうに言う。

 ……ふぅ、あの幸せ者め。

 俺は携帯を取り出し電話をかける。


『……もしもし』


「殺ス」


『え? な、なになになに!? 何か恨まれることしt』


 何か言ってる途中だったけど、まあいいか。


「とりあえず、入るか」


「そうですね。あ、その前に葉乃矢さんに「この前会ってた女の人は誰ですか?」ってメールしとかなきゃ」


「くそっ! 葉乃矢め! こんなにも愛されやがって」


「サラッと愛され方が怖いけどね!?」


 なに、蒼に不可能の三文字は無い。


「……紅」


「九陰先輩。どうしました」


「私も一緒に入りたい」


「……うーん、どうする蒼」


「私は別にいいですよ」


「流石に三人で入るのは俺の心臓に悪い」


「そうですね。なら交代で入りましょうか」


「了解」


「待て、俺はどれだけ風呂に入らないといけないんだ」


 交代制って、明らかに俺一人長風呂だよね。


「待ってよ! 私も話の中に含めてよ! 私にも権利が」


「……しょうがない。三人で入るか」


『はーい』


「私は!?」


「後でな」


「……お願いします。一緒に入らせてください」


「土下座までするか!?」


 こいつ、頭を床に付けたぞ。


「輝雪……どうしてそこまで」


「蒼ちゃん。あなたならわかるはず。紅くんが女になってから一週間以上経過している。もう、いつ元に戻ってもおかしくない。そんな紅くんの裸体を見れるチャンスはそうない。そう! 紅くんの胸を揉んだり、肌をぷにぷにしたり、ぱふぱふしたりかみかみしたり出来るのは今だけなの! これを逃せるわけが無いでしょう!」


「ダメだ病気だ」


 こいつは今すぐ精神科に行った方がいい。


「輝雪……」


「蒼ちゃん……」


 まあ、蒼なら納得させれるだろう。


「感動しました!!」


「なにぃ!?」


 え? 蒼さん?


「たしかに、お兄ちゃん……いいえお姉ちゃんとあんな事やこんな事が出来るのは今だけ! ええ、入りましょう! 一緒にお姉ちゃんと入りましょう!!」


「蒼ちゃん……!!」


 感激したように抱きしめ合う二人。

 俺はすぐさま逃げる事を決意し、部屋から出ようとする。……が、袖を掴まれてしまった。

 ……九陰先輩に。


「……九陰先輩?」


「あ、あの……私も」


 頬を赤く染め、恥ずかしそうに言う九陰先輩は可愛かった。ああ可愛かったさ。

 だが、言葉の内容は、「私も一緒に紅とあれこれしたい」である。

 つまり、こいつも変態(テキ)だ。


「……さらば!」


「しかし回り込まれてしまった!」


「なにぃ!?」


 いつの間に!?

 輝雪が目を離した一瞬の隙に扉の前に立っていた。

 そこで、行動を止めてしまった俺に羽交い締めを行う蒼。完全に動きを封じる。


「ま、待て! 話せばわかる!」


「うんうん。じゃあお風呂の中で聞くね」


「レッツゴー!」


「ごー」


 ダメだこいつら。早くなんとかしないと。いや、その前にこの状況をどうにかしないと。


「和也! 和也ー!」


「……御愁傷様」


「和也あああああああああああああああ!!!」


 結局四人で風呂を駆け込む事に。

 うちの風呂はそこまで広くない。だから、いろいろと……その、触れた。

 ……俺の男として大事な何かは、ばっきばきに粉々に粉砕された。

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