99.サキュバス輝雪
記念すべき百話!
九十九話目だけどプロローグ含め百話!
やった!やったよ!これも全部読者の皆様のおかげです!ここまで読んでいただきありがとうございます!
「お疲れ、紫」
「うぅ〜、お姉ちゃん負けちゃったよ〜」
あの後、紫一人奮戦するも、総合的な部分で勝つ事ができず紫の組は負けてしまった。
「お疲れさん。紫。大丈夫だ、どう見ても今日のMVPはお前だ」
「うぅ〜、紅さんありがとう」
「……がんば」
「ふん!」
「………………」
刀夜のこめかみがピクピク動いてたのはきっと見間違いじゃない。
「あらあら、負けたんですね」
「さ、帰ろうか。もう準備OKだぜ」
「片付け手伝ってくれてありがと、二人とも」
「……早く帰りたい」
「疲れたー。お姉ちゃんおんぶー」
「はいはい……」
「無視するんじゃありません!」
俺たちは気にせず無視して帰った。
・・・
・・
・
「ただいまー」
「……ただいま」
「ただいま」
「ただいまー!」
セリフだけで誰が誰だかわかったら凄いと思う。
「あら、みなさんお帰りなさ〜い」
「あ、舞さん」
「あ、紅くん。みなさんがご立腹でしたよ〜」
「げっ。なんて言ってました?」
「『九陰先輩とあんなプレイしてたなんて許せない!』『私に酷いことしておきながら!』『ロリコンだったのか』『紅〜、早く帰ってきて〜』……まだ聞きます?」
「……もういいです」
ああ、上に行きたくない。
・・・
・・
・
現在、部屋のドアの前。中から音がするため、絶対いる。
「……緊張するな」
ああ、嫌だ。でも開けなければならない。
そう、人はいつだって安定を望む。嫌なことから目を逸らし、自分にとって都合のいいことだけを情報として得る。
だけど、それじゃいけないんだ。
そんな停滞をいつまでもしていたら、人はいつか、進み方を、歩き方を忘れてしまう。
だから、
「俺は、行く!」
「無駄にかっこいい決意固める前にとっとと開けたらどうですか?」
「うわあ! パズズ!?」
「何があったか知りませんが、さっさと言ってください」
「へいへい」
結局開けるしかなかった。
「おーい、いるかっ!?」
黒い影は物凄い勢いで俺に覆いかぶさって!?
「お、おい!」
「嫌だ〜! 嫌わないでよ〜!」
「……この声、輝雪?」
「うん、輝雪」
覆いかぶさるというよりは抱きつく感じで俺を押し倒したのは輝雪だった。
というか、
「酒くせえ!」
アルコールの匂いが凄かった。
「はぁ、紅くんポカポカする」
「おーい! 和也ー! いるんだろ!? 状況を説明しろー!」
「あ、ありのまま起こった事を話すぞ。悩んだ時は酒がいいと舞さんがくれたんだ。最初は未成年で、舞さんも半ば冗談だったが、輝雪だけが一杯だけと無理に飲んだ結果、こうなった。何を言ってるかわからねえと思うが」
「わかるよ! 今の説明で全部わかったよ! 無理にネタに持ち込もうとすんな!」
「ああわかった。結論だけ言おう。紅に酷い扱いをされたショックで飲んだ結果がこれだ」
「巡り巡って俺のせいか!!」
というか、あれ伏線だったのか。
「う〜、紅くん私がいるのにお兄ちゃんと話してばっか。……お兄ちゃんが攻めで紅くんが受け……ポッ」
「悲しんだと思ったら俺を出汁に妄想するとはいい度胸だ。そこに直れ。ぶん殴ってやる」
「やだ〜、紅くんに抱きつく〜」
「離せええええええええ!!」
というか、そろそろ状況把握し始めて脳が余裕を持ちつつある。
……やばい。
何がやばいって、輝雪が抱きついているこの状況だ。
さっきはパニックだったから気にしなかったが、やたら柔らかい感触ならシャンプーのいい匂いやらで俺の理性がやばい!!
「焔ー! 晶ー! いたら返事しろー!」
「諦めろ、紅。あいつらは」
「二人がどうした!?」
まさか酔っ払い輝雪に。
「酔っ払い輝雪に酒を飲まされダウンしてる」
「やっぱりかちくしょおおおおおおおおお!!!」
「紅さんさっきからうるさい!」
おお! 光明が見えた!
「紫! ヘルプ! ヘルプ!」
「ふぇっ!? あ、ええと、後学のために勉強させてもらいます!」
「おおおおおいいいいいい!?」
紫はそこで体育座りをしてこっちを凝視し始めた。
「ねえねえ紅」
「……なんだよ」
「キス、しよ?」
「ぶふぉっ!?」
「だ、だいたん……」
やばい、やばいやばい。
うるうるした目に真っ赤な頬、普段の輝雪の飄々とした感じが抜け落ちて、なんか凄く色っぽい。
……い、一回ぐらい。……はっ!?
落ち着け俺落ち着け俺落ち着け俺ええええええ!!!
「キス、ダメ?」
理性が崩壊を始めた。
「あ、いや……」
視線が輝雪の唇に吸い込まれる。
「……ん」
輝雪がだんだんと唇を近付けてくる。俺はまるで石になったかのように抵抗できない。
「あらあら〜。今日は赤飯かしら〜」
「そいやあああああああああああああああああ!!!」
「きゃあ!」
あ、危ねえ! 間の抜けた舞さんの声が無ければあのまま何をやってたかわからん。
そう考えると、恐ろしくなった。
「紅くんの、ケチ」
輝雪が上目遣いで睨みながらそう言う。
……はぁ。
「俺たちはそういう関係じゃねえんだから、そういうのはダメだ。ほら」
キスの変わりでも何でも無いが、頭を撫でてやる。
そうすると輝雪はにへら、と緩んだ笑みを浮かべ、そのまま眠りについた。
俺はお姫様抱っこで輝雪を部屋に運び寝かせてやる。
「ぷ、プロだ」
紫の言ったプロがなんのプロか、俺は怖くて聞けなかった。
記念すべき百話!
九十九話目だけどプロローグ含め百話!
やった!やったよ!これも全部読者の皆様のおかげです!ここまで読んでいただきありがとうございます!まだまだ続きます!
……まあ、記念すべき百話がこんな話になるとは思ってもいませんでしたが。




