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846:やわ肌に手をのばし


 俺の胸に、がっしりしがみついてる赤眼銀髪の全裸美少女、タマ。

 その肌の感触は人間とかわらない。背格好や顔つきは幼いながら、胸元は豊満な部類である。体温は若干低め。


 名前の由来は我ながら最低である。ツァバトにいわれるまでもなく自覚してるが、なんかこう、どうしても真面目に考える気になれなくて。

 今は俺も、突然現れたタマの存在に、戸惑い半分という感覚しかない。なんせ、いきなりパパ呼ばわりだし。


 それでも、しばらく一緒にいれば、そのうち愛着も湧いてくるかもしれん。

 ……などという常識的感覚は、俺の目の前にいる超越者どもには通じないらしく。


「造形は、基本的にアークさんの好みに合わせてデザインしています。肉体構造も限りなく人体に近いものに仕上げていますので、いますぐ(自主規制)されても、とくに問題はないですよ」


 ルードが爽やかに告げる。いや問題だらけだと思うんだが……。


「アークよ、これは汝の好みや、趣味の問題ではない。汝の目的を達するために、必要な行程だ」


 ツァバトも、やけに容赦なく言い放ってくる。


「ただ、当然のことであるが、そこなタマに(自主規制)のプログラムなどは仕込んでおらん。汝が、手取り足取り、じっくり(自主規制)まで教えてやるのだぞ。さいわいタマは汝によく懐いておるから、口説くのにさほどの手間もかかるまい。なぁ、パパ」


 おまえがパパいうな!

 ホンマこいつら人の心とかないんか……人じゃなかったわこいつら。


「……遺伝子情報の登録といったな? なら(自主規制)でなくても、ほかに方法があるんじゃないのか?」


 無駄な抵抗とは承知しつつ、一応、超越者どもに、そう問いを投げかけてみると。


「ありません」


 まずルードが、一言のもとに、俺の退路をズバッと断ち切った。

 さらにツァバトが補足を入れてきた。


「遺伝子情報の登録には、必ず(自主規制)のプロセスを踏まねばならん。そういう肉体構造になっておる」


 いやそれ絶対故意にそういう風に作ったんだろ!


「なに、設計段階では、上の(自主規制)からの(自主規制)でも(自主規制)で登録できるようにしておいたのだがな。それで終わってはつまらん、ということで、我々の意見が一致してな。結局、実際の製造段階に至る前に、そのへんの(自主規制)の(自主規制)についての機能はオミットしたのだ」


 おまえらなー。

 つまらんとかいう理由でなー。


 上の(自主規制)ってのも、それはそれで大概だが……それでもなあ。

 そのタマは、というと。


 俺の背中にしっかと手を回しながら、顔を上げて、じっと俺を見上げている。


「パパ?」


 どうも俺の内心の動揺が、顔に滲み出てしまってるようだ。


「いい子だ」


 と、ついその頭を撫でて、いい子いい子してしまった。


「タマ、イイコ!」


 えへへ、と純真無垢な笑みをこぼす、美少女タマ。

 身体はともかく、中身はまるっきり子供じゃねーか。これと(自主規制)って、ハードル高いわ。


 ただ、ルードの言うように、少なくとも肉体的外見は、俺の好みにかなり近い。

 もともと俺様のストライクゾーンは相当広いほうだ。さらに、近頃はエロヒムの嗜好の影響により、下限が倫理的にヤバいレベルまで広がっている。そこな、かぼパン一丁の半裸幼女大精霊に、うっかり欲情しかねないくらいには。


 タマの容姿は、俺の現在のストライクゾーン内では直球ド真ん中に近い。

 チーの復活のために、どうしても必要だというなら……やれないこともなかろう。


 心理的抵抗はかなり強いんだが、そこは根性で乗り切るしかあるまい。覚悟を決めようじゃないか。


「いくぞ、タマ」

「ンー? ドコイクノ?」

「すぐにわかる」


 俺は、小首をかしげるタマの手を取り、瞬間移動の術式を発動させた。

 行き先は――。






 ここは、魔王城の後宮の一室。

 もとは人間の王国を攻め滅ぼした際、王都から連行してきた貴族の娘たちのうち一人にあてがっていた部屋だ。


 美少女だったんだが無駄にアクティブな文系少女で、暇さえあればペンを執り、春はあけぼの、やうやうとか好き勝手に書き散らしてた。

 だが美人薄命。その娘は先日、大精霊シャダイによる「魔王城凍結事件」に巻き込まれ、低体温症に陥って死亡した。以後、ここは空き部屋となっている。


 俺はタマを連れて、この空き部屋へ転移した。

 部屋の主はいなくなったが、清掃はいまもきっちり行き届いているし、なによりここには、しっかりしたダブルベッドがある。


 タマは、転移魔法の効果に軽く戸惑いを見せたものの、すぐ目の前のベッドに興味を示し、いきなり上に飛び乗った。


「フワフワー! パパー、コレ、フッワフワー!」


 大喜びでベッドの上を跳ね回るタマ。全裸で。


「……なあ、タマ」

「ナーニ? パパ」


 きょん、と、赤い瞳を向けてくるタマ。


「許せ。これもチーのためだ」


 俺は、ゆっくり、タマの柔肌に手をのばした。

 そして――。


(自主規制)

(自主規制)

(さらに自主規制)

(ガガッピーーーーーー)

(もっと自主規制)

(パパー! コレ、タノシイ! キモチイイ!)

(自主規制だから! そういう台詞はやめなさいって!)

(ハーイ)

(咲き狂う自主規制)

(アーーーーレーーーーー)


 かくして。

 後宮のダブルベッドにて、俺はかろうじてタマへの「遺伝子情報の登録」を済ませた。


 ……戻ったら、ルードに苦情をいわねばならん。

 完全物質なのに、物理的に処女とか。何考えてんだあの野郎。


 おかげで後始末が大変だ……。



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