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804:超級ソシャゲー大戦


 互いに距離が詰まり、混戦となった。

 赤ブルマ少女のカーサは、ビームや機銃弾を素手で弾き返しながら、単独、悠々と空中を駆けまわっている。


 ハネリンも、たいていの攻撃はトブリンが反射的に回避するものの、時折危なっかしい場面もあり、テルメリアスとダイタニアがすばやくサポートに回っていた。とくにダイタニアは、至近距離で中性子ビームと機銃弾の集中攻撃を浴びながら、小揺るぎもしない。すべて全身の筋肉で受け止め、跳ね返している。

 なるほど、筋肉は裏切らないって、こういうことかぁ……。


『くらえぃ! 八つ裂きにする光の輪!』


 カーサが、例の回転する光輪を、空間戦車の後方側面に叩き込む。酷いネーミングだ。どっかの光の国からクレーム来たりしないだろうな?

 さすがに一撃で真っぷたつとはいかなかったが、輝く光の輪は装甲を深々と切り裂き、内部にまでしっかと食い込んだ。


 そこへ、ハネリンの狙いすました一矢が、まっすぐ飛び込んでゆく。

 爆発。


 空間戦車は見事、青空に四散した。


『宇宙忍法! スペースバズーカ!』


 テルメリアスが、どこから取り出したのか、右肩に銀色のバズーカっぽいものを担いで、ぶっ放した。白濁するビーム光線が、空間戦車の砲塔側面の付け根あたりを正確に撃ち貫く。あれのどのへんが忍法なんだ? しかもビームバズーカ。宇宙って凄い。

 テルメリアスの攻撃でも、一発撃墜とはいかない。しかし、ばっくり開いた損傷部分に、ハネリンの矢がきっちりと突き立って、トドメを刺した。空間戦車は、炎を噴いて、地表へと墜ちてゆく。


 一方、ダイタニア・バージョン3は。


『筋肉の力を借りて、いま必殺の! 乙女アタックー!』


 とか叫びながら、空間戦車を正面から普通にぶん殴っている。よりによって、あの正面装甲が、一発で、ぐにゃりと凹んだ。乙女とはいったい……。

 そこへ、またまたハネリンのトドメの一射。


 あっさり爆発、撃墜。

 そのようにして、四人は見事な連携プレーで一輌、また一輌と、空間戦車を屠っていった。


 ハネリンの弓の腕前は正確無比。魔弓の威力も素晴らしい。とはいえ、やはりブランシーカーSSR組の人外っぷりがいちいち際立っている。

 ……そんな連中でさえ、戦闘力でいえば船内ではせいぜい中の上くらい。ちび妖精ブランがいうことにゃ、出番はストーリーイベントの強制配置以外だと、デイリーバトルの雑魚狩りがせいぜいで、イベントクエストの高難易度バトルなんかではスタメンにも入らない程度なのだとか。これだからソシャゲってのは。





 ところで、後方からは上級アンデッド部隊が「ここぴえ」を抱えて、ようやく戦場へと辿り着きつつある。

 あいつら昼間は本当に能力ガタ落ちだな。移動速度まで低下するとは。


『宰相閣下。全員、所定の位置につきましたが……』


 そのアンデッド部隊のリーダーから、指揮所へと通信が入った。城内でも数少ないバンパイアロードの一体で、日光にも耐性がある個体ってんで、今回の部隊長に抜擢された経緯がある。外見は若い人間の男に蝙蝠の羽が付いたような姿。名前はなんといったか……。


「どうしました、デルモンテ。何か問題が?」


 スーさんが通信に答えた。ああ、そうだデルモンテだ。どっかで聞いたような名前だな……。


『その、どうにも敵味方が入り乱れているようで、このままでは攻撃できません』


 そりゃ、ああも混戦してりゃ、無理だろうな。ここぴえは指定座標への範囲攻撃しかできんし。下手すりゃ味方も巻き込んで凍らせかねん。

 スーさんが、俺のほうへ、クンッと頭蓋骨を向けてきた。俺に判断を求めている。


 俺は、ただ、無言でうなずいてみせた。

 スーさんは、了解とばかり、頭蓋骨をカクッと傾け、素早くマイクへ向き直った。


「デルモンテ。追って指示を出します。それまで、その位置で待機するように」


 ……そんな俺とスーさんのやりとりというのも、傍目には異様な情景なのかもしれない。背後で、オペレーターズ四人娘が、今更ながらに俺たちを注視し、ひそひそ囁きあっていた。


「なんかー、あーいうの、阿吽の呼吸っていうんだっけー?」

「通じあってんねー。言葉も交わさずに」

「うちらんとこの操縦室なんてー、いっつもギャーギャー言い合ってんのにさ」

「ていうかー、シュール……イケメンお兄さんと、骸骨の組み合わせ……」

「あれかー、骨まで愛しちゃってるってかー」

「骸骨だけにー」

「それウケるわー」

「マジパネェー」


 おまえらホンマ言いたい放題だな! スーさんとはそんなんじゃねーから! でもイケメン扱いだから許す。

 ふと見やると、スーさんが再び頭蓋骨をこちらへ向けていた。


 じっと、俺を見つめている。

 その空虚な眼窩の奥底から、いまスーさんが何を考え、何をいわんとしているかが感じ取れる。


 俺は、静かにうなずいた。

 スーさんは、カコンと、顎の骨を鳴らして、また無言で席へ向き直った。


 四人娘に囃されちゃって、ちょっと照れてるらしい……。

 乙女かよ。かわいい骸骨もあったもんだ。





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