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793:パリピ共鳴


 ケライノ隊の出撃からおよそ十五分ほど経過。

 まだ敵影も見えず、魔王城指揮所内のセンサーや通信にもこれといった反応や連絡はなし。


 その間、指揮所内では……。


「ていうかさー、アロアっち、最近アイドルめざしてるってさー」

「デジマ?」

「えー、アロアっちのアイドル衣装とか、それもうガチヤバじゃん! マジ大天使ってカンジ?」

「想像したらマジパネェっすわそれ!」

「あのコ、もともと天使だけどね。でもこー、ウチらもなんかー、ウズくじゃん? そういうの聞くとさあ」

「いやー、そりゃテンアゲっすわー。ここはゼッテー応援っしょ!」

「んじゃー、任務終わったら、とりまアロアっちのとこ行く?」

「行く行くー! 迷わずゴーっしょ!」

「おっしゃ、ガンガンアゲてこー!」

「ウェーイ!」


 ブランシーカー派遣組、花のオペレーターズ。

 パリピやん……。一応、暇な時間帯は好きに喋ってていい、とは事前に言っておいたが。リラックスしすぎだ。


 それと、アロアって意外と船内人気あるんだな。レールのオマケくらいの扱いかと思ってたが。

 などと観察してると、そのうち一人がくるりと椅子を回転させて、こっちに声をかけてきた。


「ねー、アークっちー、ちょっと聞きてーんだけどー」


 気安い……。アークっち、なんて初めて呼ばれたぞ。そりゃ俺はあいつらの上司でもなんでもねーし、外見だけなら年下にすら見えるだろうが、俺がここの城の主であることは知ってるはず。最低限の礼儀ってもんが……。

 あ、俺の隣りでスーさんの頭蓋骨がカタカタいってる。どういう反応だこれ。連中の無礼に怒ってるのか、それとも俺のパリピ風呼称が面白くて笑ってるのか……ともあれ落ち着け。


「……なんだ」


 俺は、スーさんの白い頭蓋骨をなでなでしながら応えた。


「いやさー、リネスちゃんってー、アークっちの妹っしょ? なんか、あのコもアイドルやるって、チラっと聞いちゃってさー、マジかな? ってー」


 リネスは妹ではないが……でも世間的にはそういう風に見えるよな。妙な関係と思われるよりはいいか。いちいち否定するにも及ばん。


「マジだぞ。アロアたちと一緒にレッスンやってたからな。ユニット組むらしい」


 そう肯定してやると、四人はわっと歓声をあげた。


「うわー、マジー? やっべ、それめっちゃイケてんじゃん!」

「ガチマブ美少女ユニットとか、もうヤバすぎー!」

「ステージ並んでるとこ想像したら、マジパネェー! ウェーイ!」

「それって、ぜってーバズるっしょ!」


 また勝手に盛り上がりはじめた。こいつら、言い回しはアホくさいが、話す内容は他愛もない。ミーハーか、たんなる可愛いもの好きってとこかね。あとバズるってなんだ? ロシア戦車にバズーカぶち込むこと……ではないよな。

 と、モニターのひとつが、突如、ブザー音による警告を発した。


 途端、四人娘は一斉に表情を引き締め、モニターへ向き直ると、キビキビとコンソールの操作をはじめた。


「現在位置より一時方向、距離六百、熱源反応! 確度確認!」

「SSCO正常動作!」

「警報、正常動作!」

「地上指揮所よりブランシーカー操縦室! 前面ドローン、熱源反応感知! 確度高、数……三十七!」


 つい今しがたまでとは別人のような、緊張感に満ちた仕事っぷり。さすがはプロ。なぜか俺の横でスーさんが鎖骨をカコン!と鳴らしている。感心してるらしい。どんなリアクションや。

 ともあれ、オペレーターズがガチになったってことは、いよいよ本格的な接敵間近ってことだ。まだ目視できる距離ではないが、ケライノには状況を伝達しておこう。





 そのケライノは、敵影感知の報をスーさんからの通信で受け取ると、ヘッドセットごしに「承知しました」とうなずき、空中で、さッと背後へ向き直った。


「あなたたち、前へ出なさい。後続は私の周囲を固めながら前進よ」


 つまり陣形変更か。相当大雑把な指示ではあるが、あまり細かい指図をしても、ガーゴイルどもはまともに従わないだろうしな。


「……いい? あなたたちが壊れようとどうなろうと、私は痛くも痒くもないけど、もし私が怪我でもしたら、私が痛いじゃない。痛いのは嫌よ。だからあなたたち、しっかりがっちり、私を守りなさい。怠けてたら中身の霊ごとあの世へ吹っ飛ばすわよ?」


 ケライノが凄みをきかせてそう告げた途端、ガーゴイルどもは大慌てで隊列を組み替え、たちまち一糸乱れぬ立体方陣を空中に浮かび上がらせた。

 ガーゴイルの群れをこうまで統制するとは、思った以上に見事な指揮官ぶり。脅迫の文言がちょっとネジぶっとんでるけど。そりゃ誰だって痛いのは嫌だろうけどなぁ。


 そうこうやってるうち、彼方の碧空に、小さく輝く光点が、いくつか、ぽつぽつと浮かびはじめている。そろそろ肉眼でも敵影が捕捉できる距離まで接近したようだ。

 今回は「ここぴえ」とはまた違う特殊な攻撃兵器をケライノに持たせているが、一応、こちらから先に手出しはしないよう指示してある。


 まずは相手の出方を見極める――。

 そこへ、オペレーター席の警報が鳴り響く。


「一時方向、複数の新たな高熱源体を感知! 一時方向より急速に直進中! 数は五! ケライノ隊との接触まであと三十秒――」


 すでにケライノ隊は敵側のセンサーに感知されてるはず。

 ってことは……先手を取るべく、遠距離ミサイルを撃ってきたな。それもかなり速い。極音速ミサイルってやつか。なかなか殺る気満々じゃねーか。


 さて、ケライノ隊は、どう迎え撃つかな?






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