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789:白き船と、先々の展望


 バハムートの第二次侵攻の報を受け、城内も少々慌ただしくなった。

 今回の敵戦力は小規模なもの。単に撃退するのは容易だが、それならば……と、ちび妖精ブランから提案があり、敵主力空間戦車「フォルティック」の本格的なデータ収集を、「白き船」ブランシーカーと共同で実施する運びとなった。


 実際に前面に出て迎撃、交戦を行うのは、前回同様、魔王軍の選抜部隊。ブランシーカーはそれを後方からモニターし、逐一状況を記録し、より詳細なデータを取得する。

 船長のレールと相方のアロアも、一時的にステージレッスンを中断し、このモニタリングに参加する。なんせあの船の持ち主自体は精霊ブランだが、乗員はほぼ例外なく「ソシャゲ主人公」レールに心酔して、もしくはレールに心の底から屈服させられてついてきたような連中なので、レールがいないと船内の統制が取れないのだ。アロアは、そんな船内の天然癒し系というかマスコットキャラというか、そんな扱いだが。


 そしてなぜか、リネス、アイツ、フルルまで、ブランシーカーに同乗する。


「アロアちゃんがそっち行くなら、ボクもそうするー」

「そういうことなら、この件が済むまでレッスンはお休みにしようか。あ、俺も乗せてくれるの? じゃあ是非頼むよ」

「あんなおっきい船なんて、初めて見るよー。え、あたしもついてっていいの? やったぁ!」


 とかなんとか、そういう事情で。あの船が沈むような事態なんてまずありえんし、とくに危険もなさそうだから、ここは好きにやらせておこうかね。


「ほうほう、面白いことになっておるな。そういう話ならば、ぜひ我もまぜよ。駄目といわれても勝手に乗り込むがな!」


 と、強引に首を突っ込んできたのは、黒髪オッドアイ幼女な大精霊ツァバト。叡智の女神を自称するだけあって、異世界の超技術の塊であるブランシーカーに興味津々なご様子だ。


「べつに何人来てもいいけどさ、船内設備を勝手にイジったりしないでね。特に機関室! あそこには絶対近づいちゃダメ! みんな、いい?」


 ブランがやけに真剣な顔つきで、乗船希望の連中に釘を刺している。

 そりゃ、あの機関室はな……。部外者には絶対見せられんだろう。とくに女子どもには。


 実際にモニタリング作業を担当するのは、例の全自動AIロボ、アロアの護衛兼ブランシーカーのオートセンサーでもあるボルガード。

 あれも何やら独自の思考で動いてるようなフシが見られるが、アロア大好きはいいとして、何故俺に敵意を向けてくるのかわからん。機会があれば、いっぺん腹を割って話し合う必要があるかもしれんな。


 そんなこんなで、ブランシーカーはすでにエンジンを始動し、出撃準備に入っている。

 魔王軍前衛の編成はスーさんに任せてあるので、その準備が済むまでの短い時間、俺はとりあえず城内のあちこちを軽く見て回った。


 中庭の第一ハンガーでは、クラスカ、イレーネ、それに先日こちら側に付くことを宣言した青龍人アスピクらが、旧式空間戦車の改装に取り掛かっている。今回の作戦で取得したデータは、この車体にもある程度フィードバックする予定なので、その準備ということでもある。

 城内の第二ハンガーでは、機神ロートゲッツェの最終調整中。こちらもいよいよ追い込み作業に入ってるようで、とくにチーやティアックはほとんど不眠不休で働いてる状況。


 アンデッドのチーはともかく、ティアックは普通のエルフなんだが、職業柄か、やたら徹夜慣れしている。

 一方パッサは「夜更かしはお肌に悪いので……」と、割とマイペースにやってるようだが。女子連より男の娘のほうが美容に気を使ってるってのも、なんとも面白いものだ。





 ところで四分霊のうち、あのイケメン吟遊詩人ルードは、ここのところ城内の資料室にこもりっきりだ。

 おもに建築や都市計画にまつわる関連資料を読み漁ってるらしい。随分気合が入ってるようだ。あいつも他に色々やるべきことは多いはずだが、新魔王城建造と遷都についても手を抜く気はないという。


 遷都といえば。

 いつぞや地下都市サカエドで見た、近代都市の夜景。あれを地上でも再現できんものだろうか。リネスともそんな話をしていたしな。遷都は、その実現のよい機会となるはず。


 で、資料室で読書中のルードにも、それとなく、そういう話を振ってみた。

 いまの西洋中世っぽい城砦都市もいいが、サカエドの都市も参考になるかもしれん、と。


 それに応えて、ルードいわく。


「ああ、サカエドですか。さすがに基礎技術に差がありすぎて、現今の地上にはそぐわない気もしますが……そういえば、あなたは、そういう世界の出身でしたね」


 多少はルードの興味を引く提案になったようだ。

 俺としても、魔王城そのものを近代化する必要までは感じない。城下の一区画をサカエド風にしてみると面白いかも、という程度の話だ。


「ここでの資料収集が一段落したら、一度、視察に行ってみましょうか。もちろんアークさんも付いてきてください」


 あー、そういや、あそこの中央塔をぶっ壊した直後に強制転移しちまったから、その後どうなったのか知らないんだよな。すっかり忘れてたけど。

 そういうことなら、リネスも連れて、サカエドの様子を見に行くとするかね。


 もちろん、バハムートの侵攻を退けた後のことだがな。今はそちらが急務だ。



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