079:一夜の夢
お姫さま抱っこでミレドアを寝室に運ぶ。もうミレドアは半分、夢見心地だ。
「あ……そのお部屋です……」
ミレドアの案内に従って、廊下から寝室へ入った。中は薄暗い。床に置かれた行灯の明かりがチラチラ揺れている。もう布団も敷いてあった。ダブルサイズ一組。
俺はそっとミレドアを布団の上におろした。
「明かりは……消さないぞ?」
俺が告げると、ミレドアは、ぷるぷる首を振ってみせた。
「は、恥ずかしいですよぉ……消してください……」
「だめだ。しっかり見ておきたいからな」
「うぅ……」
ちょっぴり涙目で俺を見つめるミレドア。しかし、それ以上は抗わなかった。
ミレドアの帯をするすると解く。あらわになる白い肌。たわわに実ったやわらかな膨らみ──そっと浴衣をはだけさせれば、意外なものが見えてくる。
大きい。
膨らみが、ではない。いや、それもけっこうな大きさだが。ピンク色の。輪が。ちょっと大きい。
「はぅぅっ、や、やっぱり恥ずかしい……」
ミレドアは、肩をすぼめ、両手で覆い隠してしまった。なんという初々しさ。
この反応が、一気に俺の煩悩に火を付けた。
俺は無言で、ミレドアの身体へ覆いかぶさり(以下いいところですが自主規制)。
(自主規制)
(自主規制)
(激しく自主規制)
……で、翌朝。
激しい自主規制の一夜を過ごした俺とミレドアは、日の出頃、連れだって店を出た。
今頃はもうエナーリアが湖の魚を呼び戻してくれているはず。集落の連中に、漁の再開を呼びかけねばならない。
結局、丸一晩を費やしてしまったが、これでようやく、幻の美味にありつけそうだ。
昨夜は三ラウンド目でミレドアが完全にダウン。さすがに張り切りすぎたかな。ミレドアも、しっかりと俺を受け止め、最後まで俺を満足させようと頑張ってくれた。本当にいい娘だ。置いていくのは惜しいが、今連れていっても足手まといにしかならない。いつか必ず迎えに来よう。
朝空は赤く染まっている。漂う浮雲に、まばゆく照り映える朝日の輝き。住民どもも、ぼちぼち目をさましている頃だろう。
──ふと。どこか遠くから、奇妙なざわめきが響いてきた。
「なんでしょうー……?」
ミレドアは、怪訝そうに首をかしげた。
「おまえにも聞こえるか」
「ええ。これ、街道のほうからですよねぇ」
街道のほう──というより、俺の馬車が置いてある方角、というべきだ。すっかり忘れてたが、ルミエルに留守番を命じたまま、ずっと放置プレイ中だった。もしや、何かトラブルでもあったか?
ルミエル本人については、とくに心配していない。むしろ住民のほうが、何らかの被害にあっているかもしれん。昨日の昼間も極悪非道の限りを尽くしてたし。面倒なことになってなきゃいいんだが。
「行ってみよう」
俺はミレドアの手を取り、急いで駆け出した。




