表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
774/856

773:箱庭世界の管理者


 玉座の間から、王城前庭、ブランシーカーの舷側下へと、再び瞬間移動を行なう。

 もちろんレールたち一行を連れて。


 もうかなり夜も更けてきているが、ブランシーカーの周囲は、先ほどまでとはうって代わって、なぜか昼間のように明るくなっていた。


「うわ、まぶしっ」


 転移直後、リネスが思わず呟くほどの強い輝きが、ブランシーカーとその周辺を煌々と照らしていた。

 これは……カクテル灯?


 見回せば、ブランシーカーの四方に、わざわざ巨大な照明機器を複数配置してライトアップを施してるようだ。それも魔力照明じゃなく電力によるもの。ブランシーカー甲板上から、わざわざ複数の電線らしきものを引っ張ってるのが見えている。

 その電線の下に、これも巨大な立方体の鋼鉄製コンテナが並んでいる。重水素燃料の輸送用タンクだな。


 いつの間に誰がこんな用意を……って、こんなことができるのは、バハムートの凸凹コンビ、あのクラスカとイレーネぐらいしかいないか。

 俺からあの二人に頼んだのは、ブランシーカーへの重水素燃料の輸送であって、別に燃料注入作業までやってくれとは言ってないんだが。どうも二人とも、最後まできっちりやる気満々で必要器材を揃えてきたようだ。


「おお、来ていたのか」


 頭上遠く、声が響いた。照明下に浮かび上がる巨大な影が、のっしのっしとこちらへ歩み寄ってくる。黒龍クラスカだ。


「クラスカ、わざわざ悪いな。そっちも忙しいだろうに」

「なに、かまわんさ。例の不思議な船が、ここまで来たと聞いたのでな。一刻も早く、実物を見てみたかったのだ」


 クラスカは応えつつ、ブランシーカーの舷側へ首を向けた。そもそもブランシーカーの第一発見者は、クラスカたちが放った偵察用ドローンだった。その時点から、クラスカはブランシーカーの存在に興味津々だったらしい。技術屋の性というべきかね。


「外観上は我らと異なる文明の産物と見えるが、技術的に似通っている部分も多いな。燃料が共通なのもそうだし……」

「そりゃそうでしょう」


 と、レールの肩の上から、ちび妖精ブランが応えた。


「アタシたちの世界は、もとはといえばアンタたち……バハムートだっけ。アンタたちの世界で作られたデジタルデータだからね。いってみれば、アタシたちはバハムートがつくった箱庭の中の住人なのよ。だから似ているというより、もともとそっちの世界の技術そのものよ。もちろん、そこは出発点で、そこから派生発展した独自技術も多いけど」

「それって……どういうこと?」


 と、横合いから新たな声。見れば白龍のイレーネが歩み寄ってくるところだった。


「クラスカ、コンテナとエネルギーパイプの接続は終ったわ。あとは、この船に繋ぐだけよ」

「おお、それは助かる。あとの作業は私がやろう」

「ええ、お願いね……ところで、いまの話って」

「おそらく、サ・イゲ提唱理論に基づく、デジタルデータによる下位次元干渉型空間構築のことだと思うが」

「ああ、やっぱりその話。わたしの職場でも、かなり大掛かりな実装をやってたようだけど」

「そこの彼女の言葉が事実なら、とうに実用段階に入っているようだな」

「ええ、最大の課題点だった虚数空間干渉時のデジタル・パラドクス問題は、かなり早い段階でそのサ・イゲ理論によって解消したって聞いてるわ。といっても、わたしは専門部署とは違うから、それほど詳しくはないんだけど」


 クラスカとイレーネは、互いに顔を見合わせて、なにかよくわからん会話をしている。マジで何言ってんのかわからんのだが……これだから技術屋ってやつらは。

 イレーネが、ふと顔をブランのほうに向けた。


「……ところで、あなた。あなたは何者なの?」

「アタシはブラン。アタシ達の世界の管理責任者よ。ディーエとムエムによって創造された自律型プログラムだけどね」

「え」


 と、なぜかイレーネが固まった。

 なぜそこで固まるのか。今のブランの返答に、なにか思い当たることでもあるんだろうか?


「……ええと、いま……ディーエとムエム、って」

「ええ。アタシたちの世界の創造主、天神ディーエ、地神ムエムのことよ。もしかして、知ってる?」

「そ、そうね……そういう……こと……」

「イレーネ、何か知っているのか」


 やや挙動不審げなイレーネへ、横からクラスカが首をもたげて訊いた。


「知ってるというか……あたしの勤め先の社名なのよね……ディーエ・アンド・ムエムって……」


 え。なにそれ。


「ああ、ドラゴキャプチャーの製造元だろう? ……ん? 待てよ、ということは……」


 クラスカが何かに気付いたようだ。そういえば、ドラゴキャプチャーってイレーネの職場で製作されたものだったな。わざわざ宣伝用のプロモビデオまで作ってたし。以前に俺も見せられた、怪しい海外通販番組そのまんまなアレ。


「……つまり、きみの職場で、彼らの」

「ええ。あたしの勤め先とは別部署だけど……彼らがいた世界って、ようするに、うちの会社のゲーム開発部門の製品ってことね……」


 どんな繋がりだそれは……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ