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759:性別チェンジ


 話はまとまった。

 ブランシーカーは、その乗員まで丸ごと、わが魔王城の客となる。


 陸上巡航船というものの、全長二百メートル、全備重量三万トンを超える巨大戦艦クラスで、おまけに重力制御による飛行すら可能という超兵器だ。火力に至っては、いま魔王城にある偵察型空間戦車を遥かに上回る火砲を備えている。主砲だけは、そうそう使わせるわけにいかないが……。

 加えて、この船には現在、五百人近い乗員がおり、なかには単独で勇者、魔王クラスの戦闘力を持つ化け物みたいなSSRキャラが数十人も乗り込んでいる。


 アロアの護衛役のボルガードだけでも、数値上は俺の魔王時代に匹敵する戦闘力を持っている。あくまで数値の上の話ではあるし、大精霊化しつつある現在の俺の力には到底及ばんが。

 それにしても、とんでもねえ船もあったもんだ。もとの世界じゃ、この船を敵に回したばかりに壊滅に追い込まれた勢力や国家がいくつもあるという。そりゃそうだろーなぁ。


 たとえ重量が三万トンだろうが五百五十トンだろうが、俺の瞬間移動魔法を用いれば、魔王城には一瞬で転移できる。

 ただ、これだけ図体の大きな代物だと、どのへんに転移先を設定すべきか、ちょっと迷うところ。


 王宮内だと、こんなものを収容できる空きスペースは中庭ぐらいだが、いまあそこは空間戦車のガレージになっちまってるし。

 城下の前庭は、スペースとしてはじゅうぶんな余裕があるが、アズサをはじめとするヴリトラたちとトカゲ竜どものキャンプ地になっている。そこへ、いきなりこんなものを転移させたら、連中を驚かせちまうだろう。


 ここはまず、城と連絡を取って、アズサに状況を伝えておくか。


「あははー、アロアちゃん、くすぐったいよぉー」


 脇のほうで、リネスが嬌声をあげた。まだアロアと抱き合ってる。

 リネスは機嫌良さそうだが、アロアは、なんだか頬を赤らめて、興奮気味にリネスの腰もとをまさぐっている……。いや、何やってんのキミ。


「レールが女の子の間は、アロアはそっち趣味になっちゃうのよ。シナリオの都合上、そういう設定でね……」


 と、横から守護精霊ブランが、これまたメタな説明を入れてきた。

 主人公のレールは性別を自在に変えられるが、ヒロインのアロアはあくまで女の子なので……そういうことになるわけだな。業が深い。


 ほっといても害はなさそうなので、俺は腕にはめた陛下トレーサー……この名称もなんか、いいかげん変えたほうがよさそうな気がするが……を起動させた。


「へ、陛下、ご無事ですかっ? いったいなにゆえ、そのような場所に?」


 やや慌てた様子で、スーさんの声が応答した。

 しまった。スーさんに何も告げずに、いきなり旧魔王城跡地まで瞬間移動しちまったもんだから、俺の現在地を示すトレーサーの座標も、当然そこを指してるわけだ。そりゃスーさんも驚くわな。





 スーさんへの事情説明に、思いのほか手間取ってしまった。なんせスーさんには、俺がレンドルから瞬間移動魔法を教わっていたことすら、まだ伝えてなかったのだ。

 さらにブランシーカーの素性となると、もう口で説明するのがまだるっこしいレベル。


 ともあれ、俺の瞬間移動で、でっかい船を城下へ転移させる、ということだけは、どうにか伝えられた。


「……面倒をかけるが、前庭のアズサたちに声をかけて、すぐに端っこへ退避させといてくれ」

「はっ」

「あと、クラスカとイレーネに、空間戦車用の燃料コンテナを持って、前庭へ出てくるように言っといてくれんか。まだ王宮には予備が置いてあるはずだ。あいつらには聞きたいこともあるしな」

「承知しました。それと、こちらからもお伝えしたいことが」

「ん? どうした」

「パスリーン・エルグラードどの……でしたか。今日、陛下がお連れになられた、あの女装しておる少年でございますが」


 おや、ここでパッサの名前が出るとは。何かあったのかな?


「どうも、チーどのと意見が対立し、揉めておられるご様子。詳細は、私めにはわかりませんが、例の鉄巨人の件で、技術的な問題が生じているようです」


 またロートゲッツェ絡みか。さっき、チーがいきなり分解作業を始めたとか聞いたばかりだが。あれも、なかなか一筋縄ではいかんようだな。


「わかった。後で様子を見に行こう」

「お願いいたします」

「よし。では切るぞ」


 俺は通信を切り、ふたたび操縦室の面々をかえりみた。


「よし、話はついたぞ。これから、この船を丸ごと、俺の城へ転移させる」


 告げるや、レールは、「お任せします」と、少し緊張した面持ちでうなずいた。

 ブランが、やや心配げな顔つきで訊いてくる。


「それ、危険はないんでしょうね?」

「まかせとけ。次元の迷子になるようなことはありえねえよ。なあ、リネス?」


 と、リネスのほうをかえりみると、「んんんー」と、くぐもった声がきこえた。

 アロアの両腕で、頭をがっちり抱きすくめられ、アロアの胸もとに顔をうずめた状態で、身動きできなくなってるようだ。


 もっとも、とくに嫌がってる様子ではないが。

 ただ。


「うふふふ、リネスちゃぁん……あぁ、ほんとに、かわいいっ……」


 なんか、アロアの表情がヤベェことになっている。本当にほっといていいのかな、これ……。



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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 来年も楽しみにしていますね。 よいお年を。
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