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747:物理世界への帰還


 気付くと、周囲には、リネスやアイツやフルルらが、すぐ間近に顔を寄せて、こちらの様子をのぞき込んでいた。

 俺は地面に片膝ついて、全裸のツァバトを抱きかかえ、そのぷっくりした腹を、左手で、さわさわとまさぐっていた――。


 どうやら、精神世界から現実世界へ帰還できたようだ。おそらく、こちらでは時間はほとんど経過していない。

 ……ってちょっと待て、なんでツァバトが一糸まとわぬ全裸になってんだよ! いつの間に!


 ふと自分の右手を見ると、なにか白いものを、しっかり握りしめていた。いや、ツァバトのパンツだよなこれ! なんでいつの間にか俺がツァバトのパンツ奪ったみたいな状態になってんだよ!


「……お」

 そのツァバトが、俺の腕のなかで、ぱちりと瞼を開いた。つと顔をあげ、左右色違い……オッドアイの両眼で、じっと俺を見つめる。


「お互い、無事に戻れたようだな。ふふふ、なかなか楽しい経験だったぞ」


 ツァバトは、穏やかに微笑んでみせた。全裸で。


「なあ、ツァバトよ」


 俺は声をひそめて訊いた。


「おまえ、なんでこっちでもパンツ脱いでんだ? で、なんで俺がそれを持ってるんだ?」

「細かいことは気にするでない。パンツは汝にくれてやるから、大切にしまって、家宝にするのだぞ?」

「いらんわ。返す」

「むむ。では、無理強いはせぬが、欲しくなったら言うがよい。汝が望みさえすれば、二十四時間いつでも、我の脱ぎたてほかほかを届けてやろう」


 なんの出前サービスだよ! ウーバーパンツかよ!


「……あふん、そこ、もっと優しく触れるがよい」


 ツァバトが悶えるように囁く。うわ忘れてた。いまだ俺の左手は、しっかりツァバトの腹をまさぐっていた……。

 小型魔法陣の烙印は、既に消え去っている。このままでは、周囲からガチに変態認定されかねん。


 俺は慌ててツァバトから離れて立ち上がり、パンツを手渡した。


「うむ。これにて、この件は無事に済んだ。ただ、まだ少々問題は残っておるが……」


 俺から受け取ったパンツをはき、脱ぎ散らかしたワンピースを拾って、もそもそと着込みながら、ツァバトは言った。

 問題とは――と、訊こうとしたが、それ以前に……左右から注がれる視線が、痛い。このまま周囲に何の釈明もしないでいれば、俺はただ幼女のパンツをにぎりしめて幼女の腹をまさぐった変態で終わってしまいかねない。


「……ツァバト。色々誤解があるようだから、ちょっと説明してやってくれんか」

「べつに、よいではないか。ささいな誤解など、気にせずともよかろうに」


 しれっとツァバトは応えた。こいつ絶対、ワザとやってやがったな……。

 相変わらずジト眼を俺に向けてくるリネスらに、俺はやむなく事情を説明した……。





 一連の事情を語るには、まず大精霊という存在から説明する必要があり、ごく根本的なところから話さねばならなかった。

 おかげで少々時間はかかったが、どうにか周囲の誤解はとけたようだ……。


「ふうん。そのエロヒムの抜け殻みたいなのが、今もアークの中にあるんだ?」


 リネスが確認してくる。


「そうだ。俺のほうでは自覚してなかったが、ツァバトがいうには、俺の精神が乗っ取られる直前で、かなり危険な状態だったらしい。その対処のために、ああいうことをしてたわけだ」

「え、じゃあ、もしその対処が間に合わなくて、乗っ取られたりしたら……」

「今頃、俺が俺じゃなくなってるだろう。見た目はおそらく変わらんが、中身は幼女誘拐常習犯の変態になってたろう」

「さっきのおまえも、たいがい変態に見えたけどな」


 アイツがズバリ指摘してくる。いやもう勘弁してくれ……。それもこれも全部ツァバトのせいだし。

 皆が言うには、さきほど、俺がツァバトの腹にちょいと触れた直後――ツァバトの全身がまばゆく光り輝き、それがおさまると、なぜかツァバトは全裸になっていて、パンツは俺の手にしっかと握られていたという。まるでパンツだけが俺の手に瞬間移動したように見えた……とはフルルの証言。


 なんでそんなことになってたのか、さっぱり理屈がわからない。ツァバト当人ですら、よくわからないらしい。いや今となっては心底どうでもいい話だけどな! 勝手に瞬間移動するパンツとか傍迷惑にもほどがあるわ。

 ……ともあれ、つまらんことに時間を費やしてしまった。気付けばもう日暮れ近い。


「陛下、そろそろ城内へお入りください。皆、陛下のご帰還をお待ちしておりますので……」


 スーさんが告げてきた。そうだった、いつまでこんな庭先で、うだうだやってる場合じゃなかった……。


「わかった。みんなも、それでいいな?」


 と俺が言うと、皆それぞれうなずいてみせた。

 が、パッサだけは、ずっとうずくまって下腹部を押さえていた。いつまで興奮してんだオマエは。


「魔王さまー、おなかすいたー!」


 ハネリンが声をあげた。ああ、確かにそんな時間だな……。まずは晩メシか。

 でもって、エロヒムの件は片付いたにせよ、処理すべき案件は山積みだ。


 後でチーやクラスカたちと会って、この城の現状を確認せねばなるまい。これから忙しくなりそうだ。



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