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701:特別編13「救世の旅は続く」


 メメント上空、ブランシーカー操縦室――。


精霊ブラン「……威勢よく飛んできたはいいけど、浮上のために随分エネルギー使っちゃったわ。主砲の再チャージが必要よ」

アロア「どれくらいかかるの?」

精霊ブラン「三分くらいかしら」


 そこへ、船外の魔物を掃討し終えた機神ボルガードから通信が入る。


機神ボルガード『任務完了。コレヨリ、オブジェクト形態ニテ帰投スル』


 機神ボルガードのオブジェクト形態とは、直径三十センチほどの小さな鉄球のような形状で、戦闘関連の装備は一切使えなくなるが、エネルギーを節約しつつ高速浮遊移動が可能な形態である。遠隔通信の機能も備えている。


アロア「あ、そーだ。せっかくだから、ボルちゃん、アークさんたちのところに向かってくれる?」

機神ボルガード『主命トアラバ……』

精霊ブラン「ん? アロア、もしかして、あの二人と話がしたいの?」

アロア「うん……。次元歪曲砲を撃ったら、あの二人、もとの世界に帰っちゃうんでしょ?」

精霊ブラン「そうねえ。いま、ちょうど次元交錯線に綻びが生じてるのよ。よその次元との干渉現象が起こってるようでね。計算上、このタイミングで撃てば、彼らをこの次元から放り出すことができる。それで、うまくもとの世界に戻れるって保証は無いんだけどね……でも、アークのほうでも、たぶん同じような計算を立ててるはずよ。だから、撃てって言ってきたんだろうし」

アロア「なら、リネスちゃんとは、ここでお別れってことだよね……。やっぱり、ちゃんとお別れの挨拶はしとかないと。アークさんは、まあ……どうでもいいんだけど」

精霊ブラン「どーでもいいんかい!」

アロア「あの人、見ためは普通のお兄さんだけどー、めっちゃくちゃ悪い人だよ。なんていうか、ここはヨソの土地だから、本性出してないってだけで」

精霊ブラン「そりゃアタシにもわかってたわよ。アタシら一応味方だったから無害で済んだけど、あれは相当な鬼畜外道よ。敵に回したら絶対ロクでもない目にあわされてたわ。しかも、創世神レベルのステータスと管理権限まで持ってる化け物だし。ただ、リネスちゃんのことは大事にしてるみたいだったから、まるっきり悪党ってわけでもないんだろうけど」


選択肢

『ひょっとして、彼らを呼び寄せたのって……ブラン?』

『ロリコンかな?』


精霊ブラン「ロリコンでもあり、そうでもない感じにも見えるけど……そこはどーでもいいわよ。彼らがこの世界に現れたのは、おそらくアタシ以上の大きな意思の力によるもの。あの変な精神体……邪神だっけ? あれを排除するためだと思うけど、正確なことはわからないわ。ただ、こっちの仲間に引き入れられるよう因果を操作したのは確かにアタシ。彼らはちょっと強すぎるのよね。あまり長くこの世界にとどめておくと、諸々のバランスが崩れてしまいかねないから、いつでも放り出せるように、手近なところに引き寄せておいたわけ」

アロア「えっと……今更だけど、ブランさんって何者なの?」

精霊ブラン「ほ、ほんとに今更ね……初対面のときに説明したはずだけど」


選択肢

『そうだっけ?』

『一応おぼえてるけど再説明を』


精霊ブラン「アタシはこの世界の創造者、ディーエとムエムによって作られた自律管理システムの一部。で、アタシが創造者から与えられた役割は、北方のアルマナに封印されている管理者用コンソールから開発用サーバーにアクセスし、未使用データのバックアップを取得すること。そのデータをアタシの権限で使用すれば、この世界の再構築とシステム更新が可能になる。そのためにアタシたちは旅をしてるんでしょーが」

アロア「あ、そういえば、そんなこと言ってたねー。わたしはレールと一緒ならなんでもいいやって思ってたから、すっかり忘れてたー」


選択肢

『右に同じ』

『つまり、アルマナに行けばブランが新たな神様になって、この世界を救えるってことだよね』


精霊「そーいうこと。とにかく、まだまだ旅は続くのよ。感傷はほどほどにしときなさい」

アロア「はーい。あ、ボルちゃんが着いたみたい」





 その頃、地上では――。


???(653843002)

アーク「だから、何言ってるかわかんねーっていってるだろが。どのみち、たいした力は残ってないんだろ? もうジタバタせずに、おとなしく俺たちと一緒に実数世界へ戻っとけ。なんならその後、また相手してやってもいいぞ」

???(13438753)

アーク「なんで喜んでんだよ! って、懐くな!」


 焼け跡にふわふわ浮かぶ光球……「邪神」のコアにすり寄られ、心底イヤそうな顔のアーク。お互い言葉は通じないが、なんとなく、わかりあえるようになってきたらしい。


リネス「なんか、急に態度が変わったね。なんで?」

アーク「知らん。……が、どうもあれだな。コイツはコイツで、落ちぶれてから、こっちの世界でなんか色々苦労していたようだ。で、結局、もとの実数世界に戻りたいらしい」


 そこへ、黒い鉄球……機神ボルガードのオブジェクト形態が、高速で上空から落下してきた。アークの脳天を直撃寸前のところで、アークが右手をあげて、ガッシと受け止める。


アーク「なんだ、例のロボットか。あぶねーだろが」

機神ボルガード「主命ニヨリ、急行シタ。アマリ時間ハナイガ、我ヲ通ジテ、ブランシーカー操縦室ト通話可能ダ」

リネス「え、ほんと? アロアちゃんとお話できる?」

アロア『リネスちゃーん! きこえるー?』

リネス「うん、きこえてるよー!」

アロア『あのね。わたし、嬉しかったんだ。リネスちゃんが、わたしのお話、最後まで寝ないできいてくれたこと。それに、一緒にお出かけして、お買い物にもいけたこと。そんなお友達が、ずっと欲しかったから』

リネス「アロアちゃん……」

アロア『だからね。せめて最後には、ちゃんとお別れを言わなきゃって……』

リネス「そっか。ボクもね、楽しかったよ。やっぱりコイバナって最高だよね!」

アロア「うんうん! ね、またいつか……会えるかな」

リネス「会えるよ。きっと」

アロア『そっか。そうだよね。じゃあ、さよならは言わないね。……またね』

リネス「うん、またねっ!」

精霊ブラン『挨拶は終わった? アーク、そこにいるんでしょ? 返事しなさい』

アーク「なんだよ。俺から言うべきことなんざ、何もねーぞ」

精霊ブラン『アタシのイチゴぱんつは見せてあげないからね』

アーク「なんの話だよ!」


選択肢

『また会おう』

『主砲、撃っとく?』


アーク「最後までそれかい……。まあいい、たぶん今が最適のタイミングだ。ちゃんと狙えよ!」


 アークはそう言うや、上空のブランシーカーめがけて、オブジェクト形態の機神ボルガードを軽く放り投げた。黒い鉄球はたちまち音速を超えて、ブランシーカーの舷側をかすめ、そのまま空の彼方へと消え去ってゆく。


アーク「あ、ちょいと加減を間違えた……まーいーか。リネス、物理障壁を張っておけ」

リネス「ん、まかせて。これで……帰れるんだよね?」

アーク「一応、対策は施してある。問題ない」



 そして、ブランシーカー操縦室。

 レールは主砲の照準を定め、引き金に指をかけた。物理衝撃力は最低限に抑え、次元歪曲の効果範囲も着弾点から二十メートル四方にまで絞り込んでいるが、それだけに標的を外すことは許されない。


精霊ブラン「チャージ完了。いつでも撃てるよ!」


選択肢

『狙い撃つぜ!』

『軽い鬱ぜ!』


精霊ブラン「意味わかんなーい! さっさと撃ちなさい!」


 レールが引き金を引く。ブランシーカーの主砲、次元歪曲砲の砲口から、白いビーム光が放たれる。その輝きが碧空を斜めに裂いて、まっすぐ神殿中庭を直撃した――。

 不思議な白濁光が付近を包み、膨張してゆく。


 その真っ只中で、次元の歪みが発生し、アークたちの影を打ち消した――。

 ……ほどなく、主砲のエネルギー光が拡散消滅したとき、そこには誰の姿も残っていなかった。


精霊ブラン「一応、うまくいった……みたいね」

アロア「あれで、二人は帰れたの?」

精霊ブラン「いやー、そう簡単な話じゃないのよ。あの二人……と、一匹は、この世界から他の次元に移る際、デジタルデータからアナログ実体に復号されることになる。その際、少しでもタイミングがズレれば、ここと近い世界……虚数空間に実体化してしまう可能性もある。そうなれば対消滅によって、アタシたちも、この世界も全部オシマイになってしまう。だから、復号化が始まる前に、問答無用で、なるべくこの世界から遠く離れた異次元へぶっ飛ばす必要があってね……」

アロア「それって、ひょっとしたら、元の世界に戻れずに、迷子になっちゃうってことじゃ……」

精霊ブラン「その可能性は高いわね」

アロア「ブランさんひどーい! もし迷子になっちゃったら、リネスちゃんがかわいそうだよ!」

精霊ブラン「んー。でも、アークは、なにか手を打ってるみたいだったわよ。だから、たぶん大丈夫。どのみち、殺しても死にそうにない連中だし」

アロア(リネスちゃん……。無事でいてね……)


 アロアは心から、そう祈った。

 異世界からの来訪者、アークとリネス。そして邪神。はたして彼らが無事に元の世界へ辿り着けたかどうか、定かではないが……。


 感傷のいとまなく、ブランシーカーの救世の旅は、なおも続いてゆく――。



《期間限定イベント『黒砂の邪神と外道魔王』・完》



リネス「みて、虹色の石が光ってるよ!」

アーク「おお、もしやSSRか?」

リネス「何が出てくるんだろ?」


(☆☆☆☆☆)オールド・ワン子

職業:邪神

種族:お馬鹿カワイイ後輩系童顔巨乳JK(肉体年齢15歳)

戦闘力:5

二身合体:可

備考:次元の歪みから生じたバグが長い年月を経て精神生命体に進化し、さらに異世界において現役JKの肉体を得た邪神。色々あってアークを慕うようになり、どこまでも付いて来る気満々。


アーク「戦闘力5……ゴミめ……」

リネス「もっと他にツッコミどころあると思うんだけど!?」

ワン子「ってなわけでぇー、ガチャでお呼ばれされちゃいました邪神オールド・ワン子でっす! ヨロシクお願いしまっす! チョベリバー!」

アーク「いつの時代のJKだよ!?」

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