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693:特別編05「駆け去る黒風」


 サーガン大砂漠北部、オアシス都市メメント。

 大砂漠に点在するオアシスのなかでは最大の規模を擁する独立都市であり、貿易拠点としての機能と施設も整備されている。

 メメントには宗教都市としての側面もある。アルガム教団という宗教団体の総本山であり、古代文明の遺構から出土したとされる黒い人型の石像を神体として崇め、その豪華絢爛な神殿と大聖堂はメメント最大の観光名所になっている。都市人口のおよそ三分の一がアルガム教団の信者もしくは関係者であり、都市運営にも多大な影響力を持つ。

 その日、「白き船」ブランシーカーは、メメントの地上港に船体を寄せて、一時の休息に入っていた。


精霊ブラン「……ってわけでぇ、まずは燃料公社に行って重水素の価格交渉ね。当然、船長のレールに行ってもらうわよ?」


選択肢

『わかった、行ってくる』

『よし、燃料公社を砲撃だ!』


精霊ブラン「なんでアンタはいつも何かあるたび砲撃したがるのよ!」

アーク「レールって見ためはおとなしそうだが、案外と物騒な性格してるよな」

リネス「アークがそれ言っちゃうのもどうかと思うけど……」

アロア「じゃあ、そっちはレールに任せて、わたしたちは外を見にいこうよ! ここ、すっごく賑やかな街なんだって!」

精霊ブラン「はしゃぐのも結構だけど、物資の買出しを忘れないでね。アタシは船を離れるわけにいかないから、必要物資のリストを渡しておくわ」

機神ボルガード「大丈夫ダ。主ニハ、私ガ付イテイル」

アロア「なにいってるの、ボルちゃんはお留守番だよ?」

機神ボルガード「ソンナ……ナゼ、イツモ私ダケ……」

精霊ブラン「船にも少しは戦力が残ってなきゃ困るのよ。どうせ、他のみんなも出かけちゃうだろうし。ボルっちはこの船のセンサーも兼ねてるんだから残ってよね。そのほうがご主人様の役にも立てるってものよ」

機神ボルガード「ナルホド、ソレハ一理アル」

アーク「そんなんで納得するんかよ」

精霊ブラン「所詮は旧世代のAIだからね。ちょろいものよ。そうと決まったら、みんな行った行った」





 燃料公社前。

 市街の中心からやや外れた旧工業区に立つ、古い煉瓦造りのビルのような建造物。レールとアークは肩を並べて、その正面玄関をくぐった。


アーク「なんでこうなった……」


 アークはアロアたちショッピング組ではなく、レールに同行していた。精霊ブランから、レールの護衛を懇願されたのである。


アーク「あのちびっこい妖精が、スカートぴらぴらさせながら、オ・ネ・ガ・イ♪ とかってウインクしてくるんだもんなぁ。色気も何もないくせに……」


選択肢

『白だったね』

『イチゴ柄のほうがよかった?』


アーク「柄はどうでもいいが、あんなサイズの下着が存在するのが驚きだな……」





 一方、市街地のショッピングエリアでは――。


アロア「うわー、ホントに賑やかだねー!」


 石畳の道路が整備され、雑多な屋台や商店が立ち並ぶ区画。車道にはトラックや荷馬車が頻繁に行き交い、往来の雑踏も賑やかで活気がある。アロアたちショッピング組は、暇なクルー数名とともに、屋台めぐりを楽しんでいた。


リネス「わー……お菓子やアクセサリーの屋台が、あんなにたくさん……」

テルメリアス「ここでしか買えない、名物のお菓子もあるそうよ。あとで一緒に見に行きましょうね」


(イベント配布SR)銀河の使者テルメリアス

職業:宇宙忍者

種族:リトルグレイ(宇宙年齢265周期・雌)

戦闘力:3900

二身合体:可

備考:正体は宇宙人だが、宇宙忍術によって人類の美女に偽装している。あまりに長いこと偽装しているため、すでに本来の姿を忘れて戻れなくなっている。


リネス「うん! あ、でも、先に物資の買出しをするんじゃなかった?」

アロア「それはレールとアークさんが合流してからにしましょ。わたしたちじゃ、あんまり重い荷物は持てないし」

ダイタニア「そうそう。あたしら、か弱い乙女なんだしね」


(SSR)無敵鋼娘ダイタニア

職業:デラックス超剛筋

種族:人間(23・女)

戦闘力:14192

二身合体:可

備考:筋肉が全ての問題を解決するという特異な信条を掲げる武術集団のもとで鍛え上げられたエージェント。きわどいビキニアーマーが弾け飛びそうな全身これ筋肉、もしくは筋肉がビキニアーマーをひっかけて歩いているような容姿で、素手でタングステンのインゴットを叩いて砕くほどの剛力無双だが、本人はそういった自覚が薄く、無力な乙女だと本気で思い込んでいる。


リネス「か弱い……かなあ?」

アロア「あっ、リネスちゃん! あっちのお店、小物屋さんだって! すっごいキラキラしたのがいっぱい並んでるよ!」

リネス「わっ、ホントだ! 服もあるみたいだね」

アロア「行ってみようよ!」

リネス「うん!」

テルメリアス「ふふふ、ずいぶん仲良くなったのね、あの二人」

ダイタニア「リネスちゃんって、アロアちゃんのノロケ話を、最後まで寝ないで聞いてたらしいよ」

テルメリアス「え、あの恥ずかしくて脳が溶けそうなバカ長い大河ストーリーを……?」

ダイタニア「波長が合うってやつかもね。仲良くなるのも当然か」

テルメリアス「ところで、ダイターンちゃん?」

ダイタニア「きわどい呼称はやめなさいって! どうしたのよテルるん。アロアちゃんたちと行かないの?」

テルメリアス「その略称もどうかと思うわ……じゃなくて。どうも私たち、尾行されてるみたいよ?」

ダイタニア「え、マジで? さすが宇宙人。あたし全然気付かなかったよ」

テルメリアス「私が宇宙人だったのは遠い昔の話よ。いまじゃ身も心も人類そのものなんだから……それで、どうする? 尾行はヘタクソだけど、明らかに敵意を感じるわ」

ダイタニア「そんなの、か弱い乙女が取るべき道は、ひとつでしょ」

テルメリアス「つまり……」

ダイタニア「全力で抵抗する!」


オートイベント戦闘。彼女らを尾行していたのは、いかにも怪しげな黒衣の男二人組。しかしテルメリアスの分身殺法とダイタニアの鉄拳の前に、あえなく叩きのめされる。


黒衣A「ぐえええっ…… し、死ぬ……!」

ダイタニア「あーもう、ちょっと頚椎がひん曲がっただけなのに、いちいち死にそうな声出さないでよ」

テルメリアス「いやそれ致命傷だと思うけど」

黒衣B「ちょ、ちょっと後ろについて歩いてただけなのに、ここまでするか!?」

テルメリアス「宇宙忍者の察知能力を甘くみないでちょうだい。殺る気満々だったでしょ、アナタたち」

黒衣B「ふ、ふふ……やはり誤魔化せんか。だが、我々の本当の標的は、オマエたちではない……この世界に、真の終わりをもたらすために……」

テルメリアス「あら、どういう意味?」

黒衣A「ぐぇーッ」

ダイタニア「あ、死んじゃった」

黒衣B「ふっ、我らは所詮捨て駒……殺すなら殺すがいい」


 そのとき、商店のほうから、アロアの悲鳴があがった。


アロア「たっ、たいへん! リネスちゃんがー!」


 テルメリアスとダイタニアが慌てて振り向くと、その視界の先に――いままさに、リネスの身体を小脇に抱えて、一陣の黒風のごとく雑踏を駆け去る、何者かの姿があった――。



リネス「わー、ボク誘拐されちゃったよ。どうしようアーク」

アーク「俺が迎えに行くまで、なるべくおとなしくしてろ。話がややこしくなるから」

リネス「うん、じゃあなるべく手加減する。犯人半殺しくらいまではいいよね?」

アーク「ほどほどにな」

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