692:特別編04「大聖堂に響く声」
黒砂の荒野に塵煙を蹴立てて、ブランシーカーの旅は今日も続く――。
ブランシーカー食堂。
アロア「おはようございます、リネスちゃん!」
リネス「おはよーアロアちゃん。ゆうべは色々お話きかせてくれてありがとね。面白かったよ!」
アロア「でしょ、でしょ! わたしとレールの運命の出会い! 二人で手を取り合って、あらゆる障害をはねのけて突き進む愛の物語っ!」
リネス「とくにアレだね、帝国の首都めがけて主砲発射するあたり、もうドキドキものだったよ! やっぱ悪の帝国は皆殺しにすべきだよね!」
アロア「えへへ、わたしのお話、最後まで寝ずに聞いてくれたのって、リネスちゃんが初めてだよ」
リネス「そうなの? 最後まで夢中で聞いてたよボク」
アロア「それって、気が合うってことかも。わたしたち、仲良くやっていけそうな気がする!」
リネス「うん、仲良くしよーよ! ……あ、そういえば、アークは?」
選択肢
『動力室に行ってるはずだよ』
『アルカンシエルに用事があるとか』
精霊ブラン「アルカンシエルってのは、もと大天使でね。色々あって今はうちの船に乗り込んで動力源……もとい、エンジン技師みたいなことをやってるの。美人だから、クルーの男どもにも人気があってね。専属の……えーと、セラピスト……みたいなことも、やってるから」
リネス「セラピスト?」
精霊ブラン「その、なんというか、クルーの精神安定……のために、色々と相談に乗ってあげる……お仕事よ」
リネス「そっか。なんか相談しに行ったってこと?」
精霊ブラン「たぶんね……子供には言えないことって、あるでしょうし……」
その頃、ブランシーカー後甲板上。
モップを手にひとり甲板掃除にいそしむ少年。そこへ、動力室から上がってきたアークが声を掛ける。
アーク「よう、少年。ずいぶん精が出るな」
オレイン「あ、お客さん。もう用事はお済みですか。ずいぶんスッキリしたご様子で」
(SR)破衣孤剣オレイン
職業:剣士
種族:人間(14・男)
戦闘力:5000
二身合体:可
アーク「いやーまさか、動力室で、鎖に繋がれた美人のねーちゃんが待ってるなんてな。おかげで随分スッキリさせてもらった」
オレイン「船旅ですからね。どうしても、こういうのは必要ですよ。でも、あまり女性陣には大きな声でいわないでくださいよ」
アーク「わかってるよ。しかし見たとこ、この船、乗ってる奴らの半分以上が女みたいだけど」
オレイン「そうですね。それも美女と美少女ばかりです。……見ためは、ですが」
アーク「なんか問題でもあるのか」
オレイン「そうですねえ。例えば、いま、あちらの船楼の下で、手毬遊びをしてる子がいるでしょう」
アーク「ああ。見たとこ、小さな子供のようだが」
(SSR)紅蓮の復讐姫アルジェリン
職業:炎獄殲滅魔神
種族:人間(9・女)
戦闘力:12280
二身合体:不可
オレイン「彼女は、さる小国の姫君だったそうですが、クーデター騒ぎで両親と兄弟を惨殺され、命からがら国を脱出して、いまはクーデターの首謀者である大臣に復讐するため、この船に乗り込んで、機会を待っているそうです」
アーク「いきなりくっそ重いな!?」
オレイン「それから、向こうの舷側で、ぼーっと突っ立ってる若い娘が見えますか」
アーク「あー。景色でも眺めてるのか」
(SSR)幻想竜神マルティナ
職業:滅殺竜女王
種族:不明(862・女)
戦闘力:9800
二身合体:可
オレイン「外見は若くて美人ですが、竜神の化身で、実年齢は八百歳以上だそうです。どうもボケが始まっているようで、あんなふうに船内を意味も無く徘徊している姿をよく見かけます」
アーク「職業欄がいちいち物騒なのはなんでだ……」
オレイン「……とまあ、これはほんの一例ですが、この船の女性陣はだいたいこんな調子で、アクが強すぎるといいますか、ともかくおいそれと声を掛けられるような相手じゃないんですよ。結局、我々がまともに話せるのは守護精霊のブラン様ぐらいという」
アーク「個性派揃いってのも考えものだな……」
その頃、メメント神殿の大聖堂内。
黒衣の男がひとり、聖堂に祀られた巨大な神像を見上げていた。
???「時は近い……」
男の周囲には、姿こそ見えないが、複数、人間の気配がある。
聖堂内に、低く、獣の唸るような声が響いている。
???「聴いておられるか。我等の慟哭。この見捨てられた空と大地へ投げかけられる、大小無数の嘆きの声を。そして御覧あれ。美しくも物悲しき、この荒廃の夕空を。ただ衰退の一途を辿る世界の黄昏を……」
男は、静かにその場に拝跪し、呪詛とも祈りともつかぬ文言とともに呼びかける。
???「再び、御声を聴かせたまえ。我らが新しき神よ……」
ふと、それまで響いていた獣声がやみ、静寂が降りた。
ほどなく――。
(滅びの火種、今まさにこの地へ至らん)
どこからともなく、重厚荘厳なる「声」が響き渡る。
(汝、すみやかに行きて、白き船を迎えよ)
黒衣の男は拝礼を施し、応えた。
???「御意のままに……!」
男は、音もなくその場から姿を消した。
無人となった大聖堂。その祭壇上で、巨大神像の両眼が、青く妖しく輝いた。
???(596328)
???(38528544975……)
その不思議な「声」は、誰の耳にも届くことはなかった。
ブランシーカー操縦室。
精霊ブラン「メメントに着いたら、すぐに燃料と物資の補充だよ。レール、アロア、よろしくね」
アロア「うん! えーっと、カラメルマキアートゼリーをいっぱい買ってくればいいんだっけ?」
精霊ブラン「それアンタが食べたいだけでょ?」
選択肢
『じゃあマンゴープリン山盛りで』
『まずは燃料公社に掛け合ってくるよ』
精霊ブラン「だからデザートは後回しにしなさいよ! 燃料なきゃ動けないでしょーが! まずは燃料公社よ!」
アーク「燃料公社?」
精霊ブラン「この船の主動力は魔力核融合でね。魔力の他に重水素燃料が必要なのよ。それを一手に扱ってるのが燃料公社。公社といっても名ばかりで、各地で勝手に独自商売してるけど……」
機神ボルガード「左舷、敵影ヲ認ム。警戒セヨ」
リネス「また敵ー?」
精霊ブラン「えっと、グラスハウンドジャガー、5体ね。話の続きは、この敵を蹴散らしてから!」
アーク「いちいち話の途中で敵が出て来るの、なんとかならんのか」
精霊ブラン「諦めなさい。そういう仕様なのよこれ。さあ戦闘準備よ!」
《新規戦闘エリア「メメント森」が開放されました!》
《イベント期間中、当該エリア内での戦闘経験値及びアイテムドロップ率が1.2倍になります》
アーク「倍率しょぼくないか?」
リネス「さらに倍率上げたいならアイテム買えってヘルプに書いてあるよ」
アーク「容赦ねえなこの運営」




