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005:魔王のペット

 王族のうち、成人男子は全員公開処刑。女子供は面倒だからハネリンと一緒にお持ち帰りして、俺のハーレムに放り込むことにした。子供らのなかには当然、男の子もいるが、まあこれはこれで、色々と使いみちがだな。

 あと、貴族の女ども。これもハーレムに持ち帰ることにした。けっこうな粒揃いでな。幼女から年増まで、ほとんどハズレがないってのが凄い。翼人万歳。


 ついでに、監獄に収容されてた囚人連中を、労働奴隷及び繁殖奴隷として連行することにした。数はそう多くないが、翼人は身体が頑健で使いでがあるし、罪人だから、誰からも反発されることなく連れていけるしな。

 以前、人間どもの国をぶっ潰したときは、奴ら弱いくせにひたすら反抗的だったこともあって、問答無用で蹂躙しまくったもんだ。だが翼人どもは、ちゃんと手続きを踏んで降伏して、恭順の意も示してきたわけだから、色々と勝手が違ってくる。占領行政にはずいぶん気を遣ったぞ。むやみに一般市民の反感を買うような真似ばっかやって、反乱でも起こされたらかなわんからな。人間どもが刃向かってきても、たかが知れてるが、翼人相手にガチでやりあうのは疲れるっていう事情もある。あいつら俺らの魔法効かねえし。


 俺が取ったこれらの戦後措置は、ハネリンには物足りないものだったらしい。都を蹂躙しなかったことで、ハネリンの家族やら親戚やらは無事に済んだし、そこはハネリンも俺様に感謝してるらしいが、ただ王族連中に個人的な恨みがあったとか。

 ハネリンは翼人の戦士階級の生まれだ。これはある意味、闘奴みたいなもんで、王族どもの娯楽のために、光の守護者への試練とかいうお題目のもと、闘技場バトルやらなんやら、さんざん友人知人どうしでの殺し合いを強いられてきたそうな。ハネリンは例の称号を獲得するまでに、それこそ何十人という親しい人々を、自分の手で殺し続けてきたわけだ。王族どもが笑いながら見物してる前でな。そりゃ恨むわ。そんな事情から、王族なんて皆殺しにしてほしかった、と。馬鹿もん、それだと若くてかわいらしい王女様とかムッチムチの王妃様まで殺さにゃならんじゃないか。俺の楽しみを奪う気か貴様。


 とはいえ、そんな荒んだ心境も、時間とともに微妙に変わっていったようだ。俺のペットになったってことは、もう戦士である必要も、殺しあう必要もなくなったわけだからな。


 ――魔王さまって、なんだかんだ言って、ぬるいよねー。結局、王族の半分くらい、生かしちゃったし。


 戦後処理を済ませて、城への凱旋中、ハネリンは帰りの馬車のなかで、いきなりそんなことを抜かしおった。ペットの分際で生意気な。


 ――でもね、そこが好きかも。あのときだって、ハネリンのこと、簡単に殺せたのに、生かしてくれたもんね。あのときから、ハネリンの命は、魔王さまのものなんだよ。


 どうやらこいつの脳内では、あの戦場羞恥プレイは、なにやら美しい思い出に変換されてるらしい。なんという異次元思考回路。好意的解釈にもほどがあるというか……どうも翼人の感性というのはよくわからんな。ま、本人がそれで納得してるんなら、別にかまわん。

 それ以来、ハネリンはずっと俺に懐いている。最強戦士の面影なんて、もうどこにも残ってない。今ここにいるのは、ちょっとだらしない、ただの甘えたがりの小娘だ。だが、それが本来のこいつの姿なんだろう、という気もする。


「魔王さまっ、顔洗ってきたよー」


 洗面所から戻ってきたハネリンが、でかい胸をぽいぃぃんと弾ませながら、また抱きついてきた。


「なあ、ハネリン」

「なーに?」

「お前、まだ恨んでるか? 王族どものこと」


 なぜ、急にこんなことを聞く気になったのか。自分でもよくわからん。ただ、なんだな。ペットの心のケアというのは、飼い主の義務だろうとか、まあそういうことでだな。

 ハネリンは、にぱっと笑った。


「とっくに終わったことだよ。魔王さまが、終わらせてくれたんだもん」

「まあ……そうなるな」

「だからね、ハネリンも、恨みとかそういうの、もう忘れることにしたんだよ」


 そう言って屈託ない笑顔を見せる。どうやら余計な心配だったようだな。

 それにしても、ペットの心配をする魔王か。確かに、ぬるいかもなぁ。


「ねっ、魔王さま。今日はぁ、あのときみたいに……してほしいなぁ」


 ふと、ハネリンは目を潤ませながら、頬をすり寄せてきた。


「ダメだ」

「えぇー? なんでー?」

「あのときより、もっと激しく、だ」


 俺が重々しく告げると、ハネリンは一瞬、きょとんと俺の顔を見つめた。

 すぐに、ハネリンの頬が、ほにゃーと緩んでいく。


 色々想像して興奮してきたのか、次第に顔全体を上気させ、だらしなく開いた口もとからは、よだれがひと筋。興奮しすぎだお前。


「えへ……まおーしゃまぁ……」


 背中の羽をふにゃんと垂れ下げながら、ハネリンは心の芯までとろけたような顔して、小さな身体を俺に預けてきた。



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