一石
色々準備…
田所はいつか父親の『支配』を決行するのだろう
翌月も田所と会ってお世話して貰い、終わった後に話していた
「八神先生のお父さんはどんな人ですか?」
「そうですね…父は田所先生の所と同じく開業医で、産婦人科の院長です。でも…田所先生の父親みたいな虐待等は無かったですね…医師にも自分からなりたいと思い目指しました。病院の跡を継ぐことも強要されなかったので精神科医になれました」
「そうですか…」
「ただ、期待…僕の場合は八神の子孫を残す事ですが、この事はプレッシャーでもありましたね」
「確かに…子作りにプレッシャーを感じる男性も多いと聞きますね」
「はい。僕が子供を作らなければならなかった相手は姉しかいませんでしたから…姉は僕に執着し、束縛していました」
「それであの調教なんですね」
「はい、姉は僕を愛してると言っていましたが、僕には愛と言うものがよく分かりません。姉の事は好きでしたが、姉は好きと愛は違うと言いました」
「ふむ…確かに」
「田所先生は支配と従属で信頼関係と愛が生まれると言っていましたね」
「ええ」
「僕は姉に支配されていました。しかし姉は僕に支配されて無いと思います。姉はどうして僕を愛してると思っていたんでしょう…」
「確かに関係性から言えば八神先生をお姉さんが物理的には支配していました」
「はい」
「しかし、お姉さんは八神先生に支配されていたんですよ」
「そうなんですか?」
「お姉さんは八神先生の事しか考えられなくなっていた…自分の自由になるはずの時間は八神先生を常に監視し干渉する為に使っていた。束縛しながら精神的には束縛されていたんです」
「僕が束縛…そんな意識は無かったですが…」
「お姉さんは八神先生に従属していた…最後は八神先生の手を使って自分の命を差し出した…結果的に八神先生はお姉さんを物理的にも支配したんですよ」
「成る程…」
「だから、既に愛はあったんですね」
「そうですか…」
自分でも気づかなかったけど…
僕と御月は既に愛し合っていたと言う事だろうか…
正直ピンと来なかったが、田所がそう言うならそうなんだろう
「八神先生はお姉さん以外とはセックスはしなかったんですか?」
「いいえ…何人かとはしていました」
「そうですか。八神先生はどう言う人に欲情するんですか?」
「僕は…子供の身体でないと反応しないんですよ…」
「そうですか…それならお姉さんとするのは大変だったんじゃないですか?」
「そうなんです…何とか頑張りました…前に親友の妹がまだ子供の時にセックスしていた事を姉に知られた時は大変でした」
「ははは、じゃあ今は心置きなく?」
「はい」
「相手は…やっぱり患者さんかな?」
「ええ。親身になって寄り添ってあげるとちゃんと答えてくれて…やっぱり子供は純粋で可愛いです」
「そうですか…でも」
「?」
「八神先生も純粋ですよ?」
「そうでしょうか?」
「ええ。やはり代々遺伝子を濾過して来てますからね。正に純水ですね」
「かも知れませんね…」
昔父から八神家の経緯を聞いた時に僕が思った事を田所は指摘した
「ただね、やっぱり飲んでみて旨味を感じる水って色々ミネラルなどが入っている物ですよ?」
「確かに…」
「純水の使用目的は主に洗浄等です。人体には余り大量に摂取してると体内のミネラルバランスを崩す可能性があります」
「そうですね…」
「八神先生は何か…汚れた物…人などを洗浄したいんですか?」
「そんな事は無いですね。僕は他人の事を無理矢理矯正させたい等は思いませんね」
「八神家の言う遺伝子の浄化…その目的が達成したとして、その人間はどの様な者なんでしょうね?」
「そうですね…考えた事が無かったです」
「超能力を使えるとか空を飛べるとか…そんな超人は生まれないでしょうね」
「それは無理でしょうね」
「せいぜい病気になりにくいとか、人より頭が良いとか、身体能力が人より優れているとか…その辺りで頭打ちな気もします。所詮は人間ですから」
「でしょうね…」
「そう言った点はこの先の機械や科学技術の進歩や医療の発展等で補えると思いませんか?わざわざリスクを犯したり弾かれた犠牲者を出さなくてもその内、未来には誰にでも手に入れる事が出来る気がします」
「確かにそうですね…父から言われた事は人間は遺伝子操作で生まれたのではなく神から生まれたと…人間はデザイナーベビーのような人工的な操作でなく自然に生み出されるべきだと…」
「そうですね、その意見には同意しますね」
「しかし…僕が思うのは、八神家の使命、これは交配実験の様な気がしています。どこまで遺伝子を浄化された人間が作りだせるのかと言う…」
「僕もそんな気がしますね」
「特に父はその意識が強い気がしています。父は独自に奇形を生み出す交配実験に取り憑かれています」
「成る程、ただ…八神家も先祖の考えに支配されているのかも知れませんね」
「確かに…」
田所は僕の純水の池に一石を投じた
僕の中で何かの波紋が広がっていた…
「田所先生の言葉に僕も考えさせられました。しかし僕は先祖から託された使命は遂行するでしょう…ただ…」
「?」
「この先どうするかは子供達に託したいと思います…八神家の使命を強要をするつもりは有りません」
「そうですか…やはり八神先生はちゃんと人の意見に耳を傾けられる良い父親で純粋…純水な人ですね」
「そうですか…」
「ええ」
「八神先生は不純物も取り込んだ方がもっと魅力的な人になりそうですね」
「不純物…」
「ええ。もっと自由に…自分を解放して…」
何か僕に悪い事をさせようとしているのだろうか…
殺人とか…
僕はそう言うのは遠慮したい…
「僕を不良にさせようとしてます?」
「ははは、この歳で不良はないでしょう」
「まあ、確かに…」
田所が何か入れ知恵してるようですね…




