可愛いマコト
「私は何でもマコトのお話を聞くし、とことん付き添うからね。」
「うん」
「私だけはマコトの味方だからね。」
「うん」
「だからマコトは私の事を信じて。」
「うん」
「一緒に治療、頑張っていこうね。」
「うん。分かった」
○○○○○○○○○
「マコト、何それ!?」
「クラスの子に貰った…」
「可愛いマコトに近付く害虫は駆除しなくちゃ!」
そう言って姉の御月は学校でクラスの女子からバレンタインに貰った数個のチョコを取り上げた。
そのまま全てゴミ箱に捨てた
「マコトは誰にも渡さないんだから…」
そう言って後ろから抱きついて来て僕の頭に顔を埋めた
僕、八神眞事は小学5年生でこの春は6年生になり夏には12歳になる
姉の御月は歳が離れていて12歳年上だった
看護学校を卒業して今は父の病院で働いていた
父は病院を経営していて、産婦人科の病院だった
母は僕を産んだ後亡くなっていた
姉は所謂ブラコン気味で、僕に何かと干渉して来た
大切にされてるなあって思っていたけど、この歳で姉とお風呂に一緒に入っているのは変だとこの間学校の友達に揶揄われた。
母が居ない分、姉が可愛がってくれていて母親みたいに思っていたので、僕は別に変だともなんとも思っていなかった
姉が言うようにまだ僕は子供なのも有るが、髪も少し長めでよく女の子と間違われていた
顔つきも可愛らしかったのかも知れない
この年頃だとヤンチャな男の子より僕みたいなタイプの方が女子からもて囃されていた。
学年が変わってクラス替えをして姉の御月が名簿を見ながら聞いて来た
「この中に…バレンタインにゴミを渡して来た奴はいる?」
「ううん。いないよ」
「まあ、でも気を抜けないな…ベタベタしてくる女子がいたらすぐ知らせるんだよ」
「うん」
相変わらず過保護と言うか僕に干渉して来ていた
「そろそろ眞事も大きくなったし、夏休みにはお婆ちゃんの所へ御月と2人で行きなさい」
父からそう言われた
毎年お盆休みには父も同行していたが、今年は父抜きみたいだ。
御月も良い大人になっていたが、なんだか子供だけで遠出をする事に少しワクワクしていた。
「お婆ちゃんの所には私が子供のころ遊んでいた秘密基地があるから、聞いてごらん。きっと楽しいよ」
「へえ!分かりました、お父さん」
面白そうな事が増えて楽しみになっていた
○○○○○○○○○○
「こんにちは、お婆ちゃん」
「あら、眞事、御月も。大きくなったわねえ」
「はい。12歳になりました」
「そう、早いわねえ。今年は2人だけでよく来たわね。スイカ冷えてるからおあがり。」
「わあ!有難う」
「ねえ、お婆ちゃん、お父さんが秘密基地があるって言ってたんだけど…」
「ああ、坂の上の離れの事かね多分。明日御月と行っといで。掃除しといてあげるから」
「わあ!やったあ」
「小さいお家で楽しいよ。周りに何もないから静かで誰も来ないから騒いでも大丈夫だからね」
「そうなんだあ!まあ、僕は騒いだりするタイプじゃないけど…」
「そうだねえ。眞事は可愛くて賢くて良い子だもんねえ。自慢の孫だよ。将来はお父さんの病院を継ぐのかい?」
「うーん、まだ分かんない。でも医者にはなりたいから勉強頑張ってるよ!」
「そうかい、そうかい、楽しみだねえ。母親がいない分御月に沢山甘えるんだよ」
「うん」
「マコトは可愛がってあげてるわよ。今もこの先もずっとね」
「うんうん、安心だよ」
「それじゃあマコト今日は暑いし、この後は私と川にでも行って遊ぼっか」
「うん!やったあ!」
「都会じゃ川遊びなんて出来ないからね。沢山遊んでおいで。」
「はーい」
「晩御飯はご馳走たくさん用意しとくからね。今日はいっぱい遊んで沢山食べてぐっすりおやすみ。明日は秘密基地もあるからね」
「うん!」
これから行く川遊びと晩御飯と明日の秘密基地の事でずっとワクワクしていた




