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家族のしごと

作者: 金柑乃実
掲載日:2025/10/11

 人生の転機は10歳の時。孤児院育ちだったわたしたちは、とある家族に引き取られた。

 寡黙だけど静かな優しさを感じるお父さん。怪我をした時には優しく手当てをしてくれるお母さん。

 一緒に遊んでくれるお兄ちゃんたちに、いつもおもしろい実験をしているお姉ちゃんも。

 幸せだった。孤児院にいる時よりも、ずっと。

 だから、彼らの「仕事」を初めて見た時、心を奪われた。


「お邪魔します」

 そっと扉を開ける。中にいた屈強な男たちが、ぎょっとこちらを見る。

「おい、お嬢ちゃん。何か間違えてんじゃないか?」

「あれ?」

 扉の前を見る。確かにここが目的地のはずだ。

「間違ってはいないみたいです」

 そう答えて、スカートの下からナイフを取り出した。

「あなた方のお命、いただきます」

「は?」

 その瞬間、そのナイフはさっと空気を切った。

 一瞬遅れて、空気の隙間から真っ赤な血液が飛び出す。目の前の男が、首に手を当てて倒れこんだ。

「こいつ……!」

 近くで銃を取り出した男は、目に矢を受けて

「うわああぁぁ!」

 と倒れた。

「危ないよぉ、リゼル」

「ルミア」

 その矢を放ったのは、双子の妹。

「じゃ、さっさと片付けちゃお!」

 明るくおどけながら弓に矢をセットする妹に、

「うん、わかった」

 リゼルはナイフをかまえた。


「ただいまぁ」

 郊外に佇む小さな家。そこが、わたしたちの帰る場所。

「あらあら、今日も大変ね」

 まず笑顔を向けてくれるのは、お母さん。お夜食の準備をしていた手を止め、わたしの顔についた返り血を拭いてくれる。

「おかえり、リゼル、ルミア」

 そして、一番上のアレンお兄ちゃん。

「今日も頑張ったみたいだね。いい子にはあとでご褒美をあげないと」

「頑張ったよ!」

 ルミアは褒めてと言わんばかりにアピールする。そんな器用なことは、わたしにはできない。でも、ルミアがそうしてくれるから、わたしにも「ご褒美」がある。

「お父さん」

 そして、黙って座っていたお父さんに歩み寄る。

「これ、持ってきた」

「……あぁ」

 お父さんは静かにその麻袋を受け取り、中を確認した。殺した人の右耳なんて、見たくないはずなのに。

 顔色一つ変えず、お父さんは袋を閉じて

「よくやった」

 と低い声で告げる。この一言だけでも、わたしたちは充分満足。

 でも、それ以上がある。ルミアはそっちの方が嬉しそう。

 汚れた服を着替え、ベッドに入る。ルミアは隣で、目をランランと輝かせる。

「2人とも、今日は頑張ったね」

 ベッドのそばで、アランお兄ちゃんが頭を撫でてくれる。

「おやすみ」

 優しい声で紡がれるのは、優しい子守歌。これが、わたしたちの、何よりの「ご褒美」だった。


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