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第5話: 「女騎士捕縛取材~『くっ、殺せ!』の真実」


「次の取材は…え?女騎士が敵に捕まって『くっ、殺せ!』って!?ちょ、ちょっと待て、これ大丈夫なのか?」


異世界チャンネルのプロデューサー、タケシの新たな挑戦がやってきた。今回は女騎士が敵勢力に捕まったシーンを取材するということで、いつもとはちょっと毛色が違う。視聴者の期待も高まる一方で、何が起こるのか予測がつかない。


「タケシさん、ちょっと緊張してます?今回は確かに少し物騒な感じがしますけど、きっと面白くなりますよ!」


妖精のアシスタント、ミリーが不安そうに見上げてくる俺に笑顔で声をかける。その小さな羽は今日もパタパタと元気に動いている。


「いや、だってさあ、『くっ、殺せ!』って、普通に考えてやばくない?まあ、取材だからやるしかないけどさ…ただ、何が起こるかはわからないから、お互いに注意しような。」


「了解です、タケシさん!しっかりサポートしますよ!」


俺たちは「暗黒の城砦」と呼ばれる場所へとやってきた。この場所は、敵勢力とされるダークナイトたちの根城であり、まるで映画のセットのような不気味さと威圧感が漂っている。視聴者からの期待も高まっており、何としても成功させなければならない。


「ほら、人間のプロデューサーよ、ここが今日の取材対象だ。」


現れたのは、鎧に身を包んだダークナイト、ギルバートだ。彼は見た目こそ恐ろしげだが、実際には取材協力に積極的であり、俺たちに丁寧に説明してくれた。


「今日はこの女騎士が捕まった場面を再現する。もちろん、すべて演技だから安心して見てくれ。」


ギルバートが指し示した先には、銀色の鎧をまとった女騎士が縄で縛られて座っていた。彼女の名前はリリアナ。凛々しい表情をしており、いかにも騎士といった風格がある。


「くっ…こんなところで捕まるなんて…私の誇りが…!」


リリアナは演技で呻きながら、苦しげな表情を作っている。その姿に観客たちも息を呑んでいる様子だ。


「すごいな…まるで本物の捕虜みたいだ。ミリー、ちゃんとカメラに収めてるか?」


「もちろんです、タケシさん!これ、本当にリアルですね…。」


「さあ、リリアナ。お前は捕虜となったが、どうする?命乞いでもするか?」


ギルバートが挑発的に言うと、リリアナは顔を上げ、強い目で彼を睨みつけた。


「くっ…殺せ!私は誇り高き騎士だ。屈辱を受けるくらいなら、この命を絶つ方がましだ!」


「出た!『くっ、殺せ!』!これが有名なセリフなんだな…すごい迫力だ。」


俺はその場面に感動しつつ、カメラにしっかりと収める。リリアナの演技はまさに本物の騎士そのものであり、その強い意志が伝わってくる。


「リリアナさん、すごく迫真の演技ですね…!」


「ありがとう。これは私たち騎士の誇りを表現しているんです。視聴者の皆さんにも、騎士の強さと誇りを感じてもらえれば嬉しいです。」


リリアナはにこやかに答えたが、その目にはまだ演技の余韻が残っているようだった。


「さて、この後はどうするんだ?」


俺がギルバートに尋ねると、彼は少し笑って言った。


「まあ、普通ならここで終わりだが、今日は特別に捕虜となったリリアナに美味しい食事を提供するシーンを撮影することになっている。騎士でも食事は大事だからな。」


「えっ!?捕虜なのに食事を提供するのか?それってどういうことだ?」


「まあ、見ていろ。これも異世界の流儀ってやつだ。」


ギルバートはそう言って、リリアナの前に食事を運んできた。その食事は、なんと豪華な「騎士の宴」と呼ばれるもので、焼いた肉や新鮮な野菜、そして異世界特有のスパイスがふんだんに使われたスープが並んでいた。


「くっ…捕虜の私にこんな豪華な食事を提供するとは…どういうつもりだ…?」


リリアナが戸惑った様子で尋ねると、ギルバートは笑いながら答えた。


「俺たちは敵とはいえ、誇り高き戦士を粗末に扱うことはしない。お前が誇りを持ち続ける限り、俺たちもそれに応えるだけさ。」


「くっ…なんという皮肉な優しさ…でも、感謝する。」


リリアナはそう言いながらも、食事に手を伸ばした。その姿を見て、観客たちも歓声を上げる。彼女が一口スープを飲むと、その香りと味に驚いた表情を見せた。


「これは…なんて美味しいスープなんだ。まるで魂が癒されるような…」


ギルバートは満足そうに頷いた。


「そうだろう?このスープは『癒しのハーブ』を使っているんだ。戦いに疲れた体と心を癒す効果がある。捕虜でも癒されることには変わりないからな。」


「くっ…敵でありながら、ここまでのもてなしを受けるとは…悔しいが、美味い。」


リリアナは少しずつ食事を進め、やがて満足そうに笑みを浮かべた。


「タケシさん、これって思った以上に心温まる取材ですね!」


ミリーが感動した様子で言った。


「ああ、まさか『くっ、殺せ!』からこんなに和やかな食事シーンに繋がるとはな…。異世界はやっぱり予想がつかないことばかりだ。」


ギルバートとリリアナはお互いに敬意を表し合い、その場面はまるで戦場での友情を感じさせるものだった。取材は大成功に終わり、観客たちも拍手喝采を送っていた。


「タケシさん、今日の取材も大成功でしたね!」


「本当にな。最初はどうなるかと思ったけど、リリアナさんとギルバートさんの演技と心意気に感動したよ。次は何が待ってるんだろうな…」


「次は…確か魔法の森で、伝説の料理人と一緒に幻のキノコを探す取材ですよね!」


「また食べ物か!まあ、それなら平和で良さそうだな…でも幻のキノコって、なんだかんだで波乱の予感がするけどな!」


こうして俺たちの「異世界チャンネル」は、ますます異世界の人々に愛される番組へと成長していく。笑顔とハラハラが絶えない取材の日々は、まだまだ続くのだった。


「よし、行くぞミリー!次も最高の放送を作り上げるぞ!」


「はいっ!」


異世界チャンネルは、今日も元気に放送中だ!

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