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第4話: 「天空の魔女と地下の精霊のスイーツ対決」

「天空の魔女と地下の精霊によるスイーツ対決だって?本当に異世界ってなんでもアリだな…」


異世界チャンネルのプロデューサー、タケシの新たな挑戦がやってきた。今回の対決は、空と地の異なる存在同士、天空の魔女と地下の精霊がスイーツで競い合う。視聴者の期待に応えるため、俺とミリーは意気込んで取材に臨むことにした。


「タケシさん、今回は天空と地下の対決ですけど、二人ともかなり特殊な魔法を使うみたいですし、取材には十分気をつけてくださいね。」


妖精のアシスタント、ミリーが心配そうに俺を見上げながら話す。彼女の小さな羽はいつも通りパタパタと動いている。


「大丈夫だよ、ミリー。でも今回もハラハラさせられそうだな…天空の魔女って名前からしてかなり気難しそうだし、地下の精霊も地味に怖い気がするし…でも、やるしかないんだよな!」


俺たちは「天空の広場」と呼ばれる場所へとやってきた。ここは空に浮かぶ雲の上の広場で、異世界ならではの浮遊感に満ちている。周囲には小さな魔法のクリスタルが浮遊し、幻想的な雰囲気が漂っていた。観客たちも集まり、期待に満ちた顔で二人の対決を待っている。


「ようこそ、天空の広場へ。私は天空の魔女、セレナだ。今日は素晴らしいスイーツを作り出してみせるわ。」


セレナは優雅に挨拶し、ふわふわと空中に浮いている。その髪はまるで夜空の星を映したように輝いており、彼女の周囲には小さな精霊たちが舞っている。


「こんにちは、地の底から来た精霊、モグです。僕も負けませんよ。地の恵みを活かしたスイーツを皆さんにお届けしますからね!」


対するモグは、小柄で土の色をした精霊だ。地面からぴょこんと顔を出し、その笑顔には優しさが溢れているが、同時に地の力を感じさせる存在感もある。


「さあ、セレナとモグ、スイーツ作りを始めてください!異世界チャンネルの視聴者のみなさんも楽しみにしています!」


セレナはまず、「天空の果実」を集めるところから始めた。この果実は雲の中でしか育たない非常に珍しいもので、空気中の魔力を吸って成長するらしい。セレナが手を広げると、周囲のクリスタルが輝き、ふわふわと空から果実が集まってきた。


「この果実は天空の恵みそのものよ。そのままでも美味しいけれど、今日は特別に魔法で香りを引き立ててみせるわ。」


セレナは小さな精霊たちに果実を渡し、それを丁寧に磨かせながら準備を進めていく。その光景はまるで魔法の祭典のようで、観客たちも見入っていた。


一方のモグはというと、地中に潜り込み、「地の甘根あまね」と呼ばれる特別な根菜を掘り出していた。この甘根は地下深くでしか育たないもので、甘さと滋養に優れている。モグはその根菜を土から引き抜くと、手早く泥を払い落として見せた。


「この甘根は地のエネルギーをたっぷり吸って育ったものです。これを使えば、とても滋味深いスイーツになること間違いなしです。」


モグは甘根を丁寧にカットし、そのまま手のひらの上で魔法を使い蒸し始めた。彼の手のひらから立ち上る蒸気は、甘い香りを漂わせ、辺りの観客を魅了していく。


「すごい…地の底からこんなに甘い香りがするものが育つなんてな。ミリー、これ絶対カメラに収めておけよ!」


「もちろんです、タケシさん!今回は見どころがいっぱいですね!」


セレナは天空の果実を使ったムースを作り始めた。彼女は果実を手に取り、そのまま魔法で空気を含ませながら丁寧に潰していく。その過程で、小さな精霊たちが果実の周りを舞い、魔法の粉を振りかけていく。


「果実に魔法をかけることで、風のように軽いムースに仕上げるの。これが天空の味わいよ。」


セレナの手元には、ふわふわとしたムースが出来上がり、見た目も華やかで美しい。そのムースはまるで空気そのものを食べているかのような軽さを感じさせる。


「うわあ、ムースがまるで雲みたいですね、タケシさん!」


「ほんとだな、なんかふわふわで、見てるだけで美味しそうだ。」


一方、モグは甘根を蒸し終えると、次に特製の「地の蜜」を取り出した。この蜜は地中に住む虫たちが集めたもので、非常に濃厚で甘い。モグはその蜜を甘根に絡め、さらに地の精霊たちの力を借りてキャラメル状に仕上げていく。


「地の蜜を使ったキャラメルソースは、とても深い甘さが特徴です。この甘根に絡めることで、地の恵みを存分に感じてもらえるはずです。」


モグが作ったキャラメル甘根は、黄金色に輝き、見た目にも美味しそうだ。観客たちはその芳醇な香りに引き寄せられ、次々と歓声を上げている。


「うーん、モグさんのキャラメル甘根も素晴らしいな。タケシさん、どちらも美味しそうで、これは本当に難しい選択になりますよ!」


「そうだな、ミリー。でもまだ味見が残ってるからな。見た目だけじゃなく、味でどちらが勝つか決めるんだ!」


そして、ついに試食の時間がやってきた。まずはセレナの天空ムースからだ。俺はそのムースを一口口に含むと、その軽やかさに驚いた。


「これは…本当にふわっとしてて、まるで空気を食べてるみたいだ!果実の甘さが優しくて、口の中に広がる感じが素晴らしい!」


セレナは満足げに微笑んで言った。


「そうでしょう?これは天空の精霊たちの力で作り上げた、特別なムースなのよ。」


次にモグのキャラメル甘根を試食する。キャラメルソースが絡んだ甘根を口に入れると、その深い甘さが一気に広がり、まるで地の底から湧き上がるエネルギーを感じさせる味わいだった。


「これは…蜜の濃厚な甘さがすごくて、甘根のほくほくした食感と絶妙にマッチしてる!地のエネルギーをそのまま食べているみたいだ!」


モグはにこやかに頷きながら言った。


「ありがとう、タケシさん。地の恵みをみんなに感じてもらえたなら、とても嬉しいよ。」


観客たちはどちらのスイーツにも大きな拍手を送り、対決は大成功に終わった。セレナとモグは互いに笑顔で頷き合い、それぞれの異なる魅力を称え合っていることが感じられた。


「タケシさん、今日の取材も大成功でしたね!」


ミリーが満面の笑顔で言った。


「ああ、まさか天空の魔女と地下の精霊のスイーツ対決がこんなに感動的になるなんてな。異世界は本当に未知がいっぱいだよな。」


「次は…何でしたっけ?確か…女騎士が敵に捕まって『くっ、殺せ!』とか言う場面の取材ですよね?」


「えっ!?それ大丈夫なのか!?絶対に波乱の予感しかしないけど…まあ、やるしかないな!」


こうして俺たちの「異世界チャンネル」は、ますます異世界の人々に愛される番組へと成長していく。笑顔とハラハラが絶えない取材の日々は、まだまだ続くのだった。


「よし、行くぞミリー!次も最高の放送を作り上げるぞ!」


「はいっ!」


異世界チャンネルは、今日も元気に放送中だ!

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