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第3話: 「ゴーレムとスライムのデザート対決」


「さあ、次の取材はゴーレムとスライムのデザート作り対決だ!いや、本当に何でもアリなんだな、異世界って…」


異世界チャンネルのプロデューサー、タケシの新たな挑戦がまたやってきた。今回はゴーレムとスライムという、異世界ならではのキャラクターたちによるデザート作り対決。どんなデザートになるのか、想像もつかないが、観客はすでに集まっており、その期待は高まっている。


「タケシさん、大丈夫ですか?今回はゴーレムとスライムですからね、どちらも特殊な体を持っていますし、どんなハプニングがあるか…」


今日も俺の隣には頼れるアシスタント、妖精のミリーがいる。彼女は心配そうに俺を見上げているが、その小さな羽は相変わらず元気にパタパタと動いている。


「まあ、大丈夫だろう、たぶん。ゴーレムとスライムだろ?デザート作りくらいなら問題ない…はず…だよな?」


「タケシさん、ちょっと不安なこと言わないでくださいよ!今回も絶対に面白い取材にしましょうね!」


そんなやり取りをしながら、俺たちは「森の広場」と呼ばれる場所に向かった。ここは自然豊かな広場で、ゴーレムとスライムがデザートを作るにはぴったりの場所だ。広場にはすでにたくさんの観客が集まっており、みんな期待に満ちた表情を浮かべていた。


「おお、来たか人間のプロデューサーよ!」


大きな声が響き渡る。その声の主は「森の守護ゴーレム」と呼ばれる巨大なゴーレム、グロリアだ。彼の体はまるで岩そのもので、木々や草花が体のあちこちに生えている。


「今日はこのスライムのプルプルとデザート対決をするのだ。負ける気はしないぞ!」


対するスライムは「プルプル」と名乗る、透き通った青色をしたスライムだ。彼は柔らかく揺れながら、穏やかな声で言った。


「僕も頑張るよ、グロリア。みんなに美味しいデザートを楽しんでもらいたいからね。」


ゴーレムとスライムという異色のコンビが対決するということで、観客たちはすでに興奮している様子だ。俺たちもカメラを回し始め、いよいよデザート対決の開始だ。


「それでは、グロリアとプルプル、デザート作りを始めてください!異世界チャンネルの視聴者のみなさんも楽しみにしています!」


グロリアはその大きな岩の手で「森の果実」を集め始めた。彼の体には森そのものが宿っているため、果実もその体から直接取ることができる。赤や黄色の果実が次々と収穫され、その光景はまるで自然の恵みそのものだった。


「この果実は森の力で育った特別なものだ。自然の甘みを存分に楽しめるだろう。」


グロリアは果実を石のボウルに入れ、そのまま巨大な手で潰し始めた。潰された果実からは豊かな香りが広がり、甘い香りが辺りに漂った。


「すごい…これだけで十分美味しそうだ。タケシさん、果実のジュースが光ってますね!」


「ほんとだな、さすがは異世界の果実。なんか普通の果物じゃ考えられないくらい鮮やかだ。」


一方、スライムのプルプルは自身の体を使って果実を取り込み、独自の方法で加工を始めた。プルプルは果実を体内に取り込みながら、それをゆっくりと混ぜていく。まるで自分自身がミキサーになったかのような光景だ。


「僕の体は柔らかくて、果実を均等に混ぜるのに最適なんだよ。だから、ジュレみたいなデザートを作るのに向いているんだ。」


プルプルはそう言って、自らの体内から美しい透明なジュレを取り出した。そのジュレは見るからにプルプルとしており、果実の色が鮮やかに映し出されていた。


「これはすごいな…ジュレがまるで宝石みたいだぞ。ミリー、カメラをもっと近づけてくれ!」


「了解です!タケシさん、視聴者のみなさんもきっとこの美しさに感動すると思います!」


グロリアは果実を潰した後、そのジュースを使って特製の「森のゼリー」を作り始めた。彼は手のひらに魔法陣を描き、その魔法でゼリーを固めていく。その動作はゆっくりとしていて、しかし力強く、彼の大地のエネルギーを感じさせるものだった。


「このゼリーは自然の力をそのまま閉じ込めたものだ。森の精霊たちが喜ぶような、優しい甘さが特徴だ。」


グロリアはゼリーを完成させ、それを大きな葉の上に並べていった。ゼリーの中には果実のピースが散りばめられており、その美しさに観客たちも歓声を上げている。


「すごい…ゴーレムがこんなに繊細なデザートを作るなんて、思ってもみなかったよ。」


「タケシさん、グロリアさんのデザートは本当に森そのものって感じがしますね。自然の恵みが詰まってるみたいです。」


一方のプルプルは、そのジュレに特製の「ミントエッセンス」を加えた。ミントエッセンスはプルプルが森の中で見つけた特別なミントから抽出したもので、その香りは爽やかで甘く、ジュレの甘さを引き立てる役割を果たしている。


「このミントエッセンスを加えることで、ジュレに清涼感を持たせてみたよ。暑い日にはぴったりだと思うんだ。」


プルプルはそう言いながら、ジュレを美しく整え、その表面にミントの葉を飾った。その見た目はまさに夏のデザートといった感じで、観客たちも涼しげな声を上げている。


「うーん、プルプルさんのジュレも本当に綺麗だな。タケシさん、これってどっちが勝つかなんて決められないんじゃないですか?」


「そうだな、ミリー。でもまだ味見が残ってるからな。見た目だけじゃなく、味でも勝負だ!」


そして、ついに試食の時間がやってきた。まずはグロリアのゼリーからだ。俺はそのゼリーを一口口に含むと、その優しい甘さに驚いた。


「これは…本当に自然の甘さが詰まってる!果実の味がしっかりしていて、それでいて全然しつこくない。まるで森の中で食べるデザートみたいだ!」


グロリアは誇らしげに頷きながら言った。


「そうだろう。自然の力をそのまま感じてもらえるように作ったのだ。自然の恩恵を大切にすること、それが我々の使命でもあるのだ。」


次にプルプルのジュレを試食する。彼はにこやかに微笑みながら、ジュレを差し出してくれた。そのジュレを口に含むと、清涼感が一気に広がり、まるで夏の風が吹き抜けるかのような爽やかさがあった。


「これは…ミントの香りがすごく爽やかで、ジュレの甘さと絶妙にマッチしてる!暑い日に食べたら絶対に最高だ!」


プルプルは嬉しそうに揺れながら言った。


「ありがとう。僕の体は柔軟で、だからこそこういうデザートが得意なんだ。みんなに喜んでもらえてよかったよ。」


観客たちはどちらのデザートにも大きな拍手を送り、対決は大成功に終わった。グロリアとプルプルは互いに軽く頷き合い、異なる存在ながらも共に尊敬し合っていることが伝わってきた。


「タケシさん、今日の取材も大成功でしたね!」


ミリーが満面の笑顔で言った。


「ああ、まさかゴーレムとスライムのデザート対決がこんなに感動的になるなんてな。異世界って、本当に何が起こるかわからないから面白いよな。」


「次は…何でしたっけ?確か、天空の魔女と地下の精霊による、天空スイーツ対決ですよね?」


「えっ、また対決?しかも今度は天空と地下!?絶対に波乱の予感しかしないけど…まあ、やるしかないな!」


こうして俺たちの「異世界チャンネル」は、ますます異世界の人々に愛される番組へと成長していく。笑顔とハラハラが絶えない取材の日々は、まだまだ続くのだった。


「よし、行くぞミリー!次も最高の放送を作り上げるぞ!」


「はいっ!」


異世界チャンネルは、今日も元気に放送中だ!

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