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第18話: 「悪女とその闇の噂」

「若い娘の血を飲んで若さを保っている悪女だって?まったく、どうして俺たちがそんな人の取材をすることになったんだよ…。もう少し平和な企画を頼みたいんだけどな。」


異世界チャンネルのプロデューサー、タケシの新たな取材は、今回も一筋縄ではいかないものだった。今回の取材対象は、名うての悪女「レイナ・ド・ベルモンド侯爵令嬢」。彼女の名は王国中に知れ渡っており、その理由は彼女が持つ「冷酷さ」と「美貌」、そして「若さを保つために若い娘たちの血を飲んでいる」という黒い噂だった。


「タケシさん、今回は本当に大丈夫ですか?だって、レイナさんは怖いって有名なんですよ…。もし何か逆らったら…。」


隣で心配そうに言うのは妖精のアシスタント、ミリーだ。彼女の小さな羽は緊張でいつもの元気なパタパタがなく、代わりに震えている。


「まあ、俺だってこんな取材は気が進まないけどさ…。命令だからやるしかない。とにかく、無茶はしない方向で行こう。生きて帰ることを最優先にだ。」


「はい、タケシさん…絶対に無理しないでくださいね。」


俺たちはベルモンド邸に到着した。門の前には厳重な警備があり、鋭い目つきの衛兵たちが行き交っている。何とも物々しい雰囲気だ。


「おお、よく来たな、異世界チャンネルの連中よ。」


突然、門の前に現れたのは、一人の男だった。彼は侯爵家の執事らしく、厳格な顔つきをしている。まるでこちらを見下すような冷ややかな視線だ。


「侯爵令嬢レイナ様がお待ちです。どうぞ、中へお入りください。ただし、失礼のないようにな。」


「は、はい…わかりました。」


俺たちは執事に案内されながら、ベルモンド邸の内部へと進んでいった。その豪華さは目を見張るものがあり、廊下には高価な絵画や彫刻が並び、金箔で装飾された家具が所狭しと置かれている。


「タケシさん、なんか…圧倒されちゃいますね。すごく豪華だけど、どこか冷たい感じがします。」


「ああ、俺もそう思う。なんかこう…表面的には華やかだけど、その裏には何かが隠されている感じがするんだよな。」


そして、ついにレイナ・ド・ベルモンド本人と対面することとなった。彼女は応接室の奥のソファに座り、静かに俺たちを見つめていた。彼女の姿はまさに「美貌の悪女」という言葉にふさわしいものであり、その艶やかな金髪と冷たく輝く瞳が印象的だ。


「まあ、あなたたちが異世界チャンネルの取材陣ね。わざわざ私のところまで来てくれるなんて、感謝するわ。」


「ど、どうも…。今日はお時間をいただきありがとうございます、レイナ様。」


「ふふ、そんなに緊張しなくてもいいわ。私はただの貴族令嬢よ。ただし…失礼があれば、どうなるかはわからないけれどね。」


レイナの言葉には微笑が浮かんでいたが、その笑顔の裏には明らかな威圧感があり、俺は思わず背筋を伸ばした。


「さて、今日は何を聞きたいのかしら?あなたたち、私にまつわる噂を知っているんでしょう?」


「え、ええと…実は、レイナ様が若さを保つために、若い娘の血を飲んでいるという噂が広まっていまして…その、真相をお聞きしたくて…。」


レイナは一瞬、驚いたように目を見開いたが、すぐに笑い声を上げた。その笑いは、まるでこの世のすべてを見下しているかのような冷たいものだった。


「ああ、その噂ね。まったく、人々は面白いことを考えるものね。私が若い娘の血を飲んでいるですって?ふふ、どうかしらね。それが真実かどうか…あなたたち、確かめてみる?」


「えっ…!?」


俺は一瞬、声を失った。まさかこんなにあっさりと噂を認めるようなことを言われるとは思ってもいなかったからだ。ミリーも驚きで羽が震えている。


「ま、待ってください!それって、本当なんですか?その…娘たちをさらって、血を抜き取るなんて…そんなこと…。」


レイナはゆっくりと立ち上がり、俺たちの方へ歩み寄った。その瞳は冷たく輝き、まるでこちらの心を見透かしているかのようだった。


「さあ、どうかしらね?人を蹴落とすには手段を問わない、そういう生き方をしていると、自然とこういった噂も立つものよ。私は確かに、多くの人を蹴落としてここまで来たわ。けれど、それが私のやり方なの。」


「そ、それじゃあ、噂はただの誇張で…?」


「ふふ、信じるか信じないかはあなたたち次第。でも、覚えておいて。私に敵対する者は…どうなるか、ね。」


レイナの声には明らかな威圧が込められており、俺たちは思わず黙ってしまった。この令嬢がただの噂話で恐れられているわけではないことが、肌で感じられる。


「タケシさん…帰りましょうよ…。なんか、ここに長くいると本当にヤバい気がします…。」


「お、おう…そうだな。レイナ様、本日はお時間をいただきありがとうございました。これで失礼します…。」


レイナは微笑みながら手を振り、俺たちを見送った。その笑顔はどこか寂しげで、しかし同時に冷酷さも感じさせるものであった。


「気をつけて帰るのよ。あなたたちがどんな記事を書くか…楽しみにしているわ。」


俺たちは急いで邸を出て、何とか無事に取材を終えることができた。外の空気を吸った瞬間、俺は思わず大きく息を吐いた。


「はあ…緊張した…。ミリー、俺たち無事に帰れたな。」


「ほんとですよ!あんな怖い人、もう二度と取材したくないです…。」


「でもまあ、これが仕事だからな…。あの噂の真相はわからなかったけど、少なくとも彼女がただの貴族令嬢じゃないことは間違いない。」


「そうですね…。でも、彼女の中には何か…寂しさも感じましたね。」


「ああ…。それが彼女の本当の姿なのかもしれないな。ま、とにかく、無事に帰れて良かったよ。」


こうして俺たちの「異世界チャンネル」は、また一つ異世界の闇を垣間見た取材を終えることができた。悪女レイナの真実は闇の中だが、その影には確かに何かが隠れているのだろう。


「異世界チャンネルは、今日も元気に放送中だ!」

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