第16話: 「中堅冒険者とモンスター討伐の現実」
「モンスター討伐の現場に同行だって?しかも中堅冒険者と一緒?いや、これかなりヤバいんじゃないの…。俺、何度目かの生還を願わなきゃならない気がするんだが。」
異世界チャンネルのプロデューサー、タケシはまたもや挑戦的な取材に臨むことになった。今回は「冒険者ギルド」の中堅冒険者たちと共に、モンスター討伐の現場を取材するという過酷な内容だ。冒険者というと、豪快で頼もしいイメージもあるが、実際には命がけの仕事。タケシは不安を抱えながらも、その真実を映し出すために取材に挑むことにした。
「タケシさん、今回は冒険者たちと一緒にモンスター討伐ですよ!すごくワクワクしますね!」
妖精のアシスタント、ミリーはいつものように目を輝かせている。彼女の小さな羽は今日も元気にパタパタと動き、その期待感がこちらにも伝わってくる。
「いや、ワクワクするのはいいんだけどさ…。冒険者って言っても、今回はモンスターと戦うんだぞ?俺たち、怪我しないかな…大丈夫かな…?」
「大丈夫ですよ、タケシさん!今回は中堅の冒険者さんたちがついてますし、それにちゃんと防具も借りてますから!」
「うーん…なんか不安が残るけど、まあ行くしかないか。」
俺たちは冒険者ギルドに向かい、今回の取材相手である中堅冒険者「ライアン」と合流することになった。ライアンは筋肉質な体に頼もしい笑顔を浮かべた男で、見た目からして経験豊富な冒険者であることがうかがえる。
「よう、タケシさんにミリーさんだな?今日は俺たちの討伐に同行するって聞いたぜ!ま、怖がらずに俺たちの後ろについてきな!」
「うわ、すごく頼もしいですね!よろしくお願いします!」
「頼りにしてるぜ、ライアンさん。俺たち、初めてのモンスター討伐だから、どうか無事に連れ帰ってくれよ…。」
ライアンは大きく笑いながら、俺たちにギルドから借りた防具を手渡した。それを着てみると、なんだかずっしりとした重みがあり、普段とはまるで違う感覚だった。
「さてと、今回の討伐対象は『スティールウルフ』というモンスターだ。鉄のような皮膚を持った狼で、攻撃もかなり鋭い。初心者には難しい相手だが、俺たち中堅ならなんとかなるさ。」
「初心者には難しいって…そんな相手と戦うのかよ。俺、無事に帰れるかな…?」
「タケシさん、怖がらないでください!ライアンさんたちがついてますから!」
ライアンたちと一緒に森の中を進むと、ギルドのシステムや冒険者たちの現状についての話が自然と始まった。
「ところで、ライアンさん。冒険者ってやっぱり大変なんですよね?特に初心者の人たちとか…。」
「ああ、その通りだ。実際、初心者の死亡率はかなり高いんだ。モンスターの危険性を知らずに突っ込むやつが多いからな。だからこそ、ギルドによる教育システムがもっと充実するべきだと思うんだよ。」
ライアンは険しい表情をしながら、続けた。
「初心者向けの訓練は最低限のことしか教えないが、それじゃあ足りないんだ。もっと実践的な訓練や、モンスターの生態について深く学ばせるべきなんだよ。例えば、『スティールウルフ』の弱点とか、どの角度から攻撃するのが一番効率的かとか、そういうことだ。」
「確かに…ただ突っ込むだけじゃ危険ですよね。でも、それを教えるためのシステムがないのは厳しいな…。」
「そうなんだ。だから、俺たち中堅やベテランが新人の教育を手伝うこともあるけど、それでも限界があるんだよな。」
ミリーが心配そうに聞いた。
「じゃあ、ライアンさんは新人さんたちをどうやって守ってるんですか?」
「まずは基本中の基本だが、回復薬の充実だな。回復薬がなければ、軽い怪我でも致命傷になる。だから、冒険者の中には回復薬の素材を集める専門の『素材収集冒険者』も必要不可欠なんだ。彼らは戦闘こそしないが、縁の下の力持ちだよ。」
「なるほど…冒険者って言っても、戦うだけじゃないんだな。支える役割も大事なんだな。」
ライアンはうなずきながら、俺たちに森の奥を指し示した。
「そうだ、あそこだ。スティールウルフの痕跡が見えるだろう?足跡が深くて、あの方向に向かっている。そろそろ戦いの準備をしないといけないな。」
「え、まじで?もう戦うの?俺、全然準備できてない気がするんだけど…。」
「大丈夫です、タケシさん!私がいますから!」
ミリーはそう言って元気づけてくれたが、正直、俺の心臓はバクバクしていた。ライアンは他の冒険者たちと軽く指示を出し合い、戦闘態勢に入った。
「よし、みんな準備はいいか?タケシさん、後ろに下がってろよ。安全な場所で取材してくれ。」
「お、おう。絶対無事に帰らせてくれよ…。」
ライアンたちはスティールウルフとの戦いに突入した。モンスターの唸り声が森中に響き、冒険者たちは巧みに動きながら攻撃を繰り出していく。その戦闘は見ているだけで手に汗握るもので、俺は思わずカメラをしっかりと握りしめた。
「うおおっ!すごい迫力だ…これが冒険者たちの戦いか。」
ライアンたちはチームワークを駆使してスティールウルフを追い詰めていく。彼らの動きには一切の無駄がなく、それぞれが役割をしっかりと果たしているのがわかった。そして、ライアンが一気にモンスターの弱点である首筋に剣を叩き込むと、スティールウルフはついに力尽きた。
「よし!討伐完了だ!みんな、無事か?」
「お疲れさま、ライアンさん!すごい戦いでした!」
俺もホッと胸をなで下ろしながら、ライアンに感謝の言葉を伝えた。
「ありがとう、ライアンさん。本当にすごい戦いだった…こんな間近で見られるとは思ってなかったよ。」
ライアンは笑って肩をすくめた。
「はは、まあこれが俺たちの日常だからな。タケシさんたちが無事でよかったよ。」
その後、ギルドに戻る途中で、ライアンは改めて冒険者という仕事の過酷さについて語り始めた。
「今回の取材でわかってもらえたと思うが、冒険者ってのは危険と隣り合わせの仕事だ。でも、それだけにやりがいもあるし、仲間との絆も強まる。初心者を守るためにはもっと教育が必要だし、俺たちもそのために努力してるんだ。」
「確かに、今日の戦いを見てて、本当に命がけの仕事だって実感したよ…。初心者が生き残るためには、ギルドのサポートももっと必要なんだな。」
「その通りだ。そして、それを支えるための『縁の下の力持ち』的な存在も重要だ。素材収集や回復薬の補給、そういったことがあって初めて、俺たちは戦えるんだ。」
ライアンもうなずきながら、真剣な表情で言った。
「冒険者さんたちを支えるために、私たちももっと理解しなきゃいけないですね。ギルド全体で支え合うことが大切なんですね。」
ミリーはにこやかに笑いながら、俺たちに言った。
「そうだ、みんなが力を合わせて初めて成り立つのが冒険者ギルドだ。だからこそ、今日の取材が冒険者たちの現実を伝える一助になれば嬉しいよ。」
ギルドに戻り、俺たちはライアンと別れることにした。彼の言葉とその背中からは、冒険者という仕事の誇りと責任感がひしひしと感じられた。
「タケシさん、今日の取材も大成功でしたね!」
「うん、本当に。冒険者たちの現実を目の当たりにして、改めて異世界の厳しさと美しさを感じたよ。」
「次はどんな冒険が待ってるんでしょうね!タケシさん、また一緒に頑張りましょう!」
「ああ、もちろんだよ。異世界はまだまだ未知がいっぱいだし、これからもその魅力を伝えていこう!」
こうして俺たちの「異世界チャンネル」は、ますます異世界の人々に愛される番組へと成長していく。笑顔とハラハラが絶えない取材の日々は、まだまだ続くのだった。
「異世界チャンネルは、今日も元気に放送中だ!」