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第115話: 「異世界の追放について」



異世界では追放という概念が少し違う。追放と聞くと厳しい罰や居場所を失うというイメージがあるが、ここでの追放はむしろ「より良い場所への転職」に近いものだった。今回はタケシとミリーが、その異世界の追放文化について取材することにした。


◇◇◇


「タケシさん、今日は追放についての取材ですよ!なんだか少し暗いテーマに聞こえますが、実際はちょっと違うんですって!」


ミリーはタケシの肩に乗りながら、目をキラキラさせて話し始めた。彼女の羽が軽やかに揺れ、興奮が伝わってくる。


「追放って言うと、普通は悪いイメージだよな。罰を受けて追い出されるみたいな。でも、今日の取材場所はむしろ追放された人たちが『大勝利』みたいな感じらしいからな。これは俺たちも楽しみだぞ。」


タケシはカメラを構えながら、期待と不安が入り混じった表情で歩いていく。取材地は村外れにある広場だ。ここでは、追放された人々が新たな生活を始め、繁栄を築いた様子が見られるという。


◇◇◇


広場に到着すると、驚くべき光景がタケシとミリーを迎えた。広場は明るく、花々が咲き乱れ、追放されたという人々がのんびりと過ごしている。立派な家が並び、どこを見ても豊かな緑が広がっている。まるで夢のような環境だ。


「うわぁ…追放って言っても、まるでリゾート地じゃないか。」


タケシは驚きながら声を漏らし、カメラを広場全体に向けた。ミリーも目を見開いて感心している。


「本当ですね、タケシさん!私たちが想像していた追放とは全然違います。こんなに素敵な場所に追放されるなら、むしろ追放されたいくらいです!」


二人はさっそく現地の人に話を聞いてみることにした。近くで木陰に座り、ティータイムを楽しんでいる女性に近づいて声をかける。


「すみません、ちょっとお話を伺ってもよろしいでしょうか?追放について取材をしているんですが…」


女性はニコニコと笑いながら頷いた。


「もちろんいいですよ。私はリリアといいます。この広場で追放された人たちと一緒に暮らしているんです。」


「リリアさん、追放って普通は悪いことだと思うんですけど、ここはむしろ楽園みたいですね。どうして追放されたのに、こんなに素敵な環境で暮らしているんですか?」


タケシが興味津々で尋ねると、リリアはくすっと笑った。


「この世界の追放というのは、一言で言うと『再スタートのチャンス』なんです。前の環境で自分が合わないとか、何か問題があった場合、その人にとってより良い場所に送り出してもらうんです。ですから、ここに来る人たちはみんな、以前よりも自分に合った生活を手に入れているんですよ。」


「ほう、それは面白い考え方ですね。じゃあリリアさんはどんな理由で追放されたんですか?」


タケシがさらに踏み込んで聞くと、リリアは少し恥ずかしそうに笑いながら答えた。


「私は貴族の家に仕えていたんですが…実は、ちょっと料理が苦手でして。それで何度か失敗してしまい、貴族の皆さんに『ここじゃなくてもっと自由に生きられる場所があるんじゃないか』って言われて、ここに追放されたんです。」


「なるほど、料理が苦手で追放されたんですね。でも今はどうですか?」


「今は料理のことは気にせず、みんなと楽しく暮らしています。畑を耕したり、手芸をしたり、自分の得意なことに集中できて、とても幸せです。」


ミリーは感心しながら頷いた。


「すごいですね、リリアさん!前の場所では合わなかったことでも、ここでは自分の得意なことに集中できるんですね。」


リリアはさらに続けた。


「そうなんです。追放というと、まるで罰のように聞こえますが、実際はその人にとっての新しいチャンスなんです。追放されたことで、私は自分の本当に好きなことを見つけられたんですから。」


◇◇◇


取材を続けていると、タケシとミリーは次々と興味深い話を聞くことができた。例えば、元冒険者の男性は、パーティ内の人間関係に疲れて追放されたが、ここで自分のスキルを活かして村の警備を担当しているという。


「前は仲間たちとのいざこざが絶えなくてね。俺は戦うのは好きだったけど、人間関係はもうこりごりだった。でもここに来てからは、自分のペースで警備の仕事をして、ストレスもなくなったよ。」


男性はリラックスした表情でそう語り、タケシもそれに深く頷いた。


「確かに、どんなに強くても人間関係がうまくいかないと辛いですもんね。追放されて逆に楽になったんですね。」


「そうそう、追放っていうよりも『解放』って感じかな。自分らしく生きられるっていうのは、本当にありがたいことだよ。」


◇◇◇


さらに、タケシたちは子どもたちが楽しそうに遊んでいる様子も目にした。その中の一人、少年のカイルに話を聞いてみることにした。


「君もここに追放されてきたのかい?」


タケシが尋ねると、カイルは笑いながら答えた。


「うん!僕は前に住んでた村で、勉強が苦手で先生に怒られてばっかりだったんだ。でもここに来たら、誰も勉強のことでは怒らないし、好きな木登りをいっぱいしていいって言われて、毎日楽しいよ!」


ミリーはその答えを聞いて微笑んだ。


「カイルくん、それはよかったね!自分の得意なことを見つけて、それを思いっきりできるなんて素敵だわ。」


「うん!ここはみんな優しいし、好きなことをやらせてくれるから、本当に楽しいよ!」


◇◇◇


夕方になり、取材を終えたタケシとミリーは広場の端で休憩を取っていた。タケシはカメラを片付けながら、今日の取材を振り返っていた。


「追放って聞いて最初は驚いたけど、実際に見てみると、ここに来た人たちはみんな幸せそうだったな。『追放』っていう言葉の持つ意味が、全然違ってたよ。」


ミリーも隣で頷きながら言った。


「そうですね。追放というのは、ただの罰ではなく、その人にとってより良い場所で新しいスタートを切るためのチャンスなんですね。自分に合った場所で、みんながのびのびと暮らしているのを見て、私も元気をもらいました!」


タケシは満足そうに笑いながら、ミリーに目を向けた。


「俺たちも、自分の得意なことをもっと見つけて伸ばしていかないとな。異世界にはまだまだ面白いことがたくさんある。これからも取材を続けて、もっと多くの人たちにこの世界の魅力を伝えていこう。」


ミリーはタケシの言葉に嬉しそうに頷いた。


「はい!タケシさん、私たちならきっとできると思います。これからも一緒に頑張りましょう!」


二人は笑顔で広場を後にした。追放という言葉が持つ新たな意味を知り、異世界の広さと可能性を再確認したタケシとミリー。次の取材先でも、きっとまた新しい驚きと発見が待っているに違いない。


追放が新たなチャンスとして描かれた今回の取材、タケシとミリーの新たな発見とともに、異世界の多様な側面が垣間見えた。どんな逆境でも、そこには新たな可能性が広がっている。異世界チャンネルは、まだまだ続く。



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