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第114話: 「異世界の虫を頑張って食べる会」



異世界には独特の文化がたくさんあるが、その中でも最もユニークなものの一つが「虫を食べる会」である。虫といえば、日本ではなかなか馴染みがないが、異世界では栄養価が高く、また貴重なタンパク源として知られている。今回、タケシとミリーはその「異世界の虫を頑張って食べる会」に参加し、その実態を取材することにした。


◇◇◇


「タケシさん、今日はついに虫を食べる会ですよ!なんだか緊張してきました…」


ミリーはタケシの肩に乗りながら、少し心配そうな表情を見せた。彼女の羽が小刻みに震えているのを感じて、タケシは苦笑しながら頷いた。


「俺も緊張してるよ、ミリー。でも、これも異世界文化の一環だろ?取材班として逃げるわけにはいかないってもんだ。」


「それはそうですけど…でも、虫ですよ?食べるなんて、どんな味がするんでしょうか。」


「そりゃあ…多分、カリカリしてたり、ジューシーだったりするんだろうな。」


タケシはあえて軽い調子で答えたが、実際のところは全く自信がなかった。彼は自分を奮い立たせるために、カメラを構えて会場へ向かって歩き始めた。


会場は村の中央広場で、大きなテントが張られていた。中には様々な種類の虫が並べられており、それぞれに「焼き」「蒸し」「揚げ」などの調理法が書かれた看板が立っていた。会場にはすでに多くの村人たちが集まっており、彼らは楽しげに虫料理を手に取っていた。


「うわぁ…タケシさん、見てください。あの人、あんなに大きな虫を丸ごと食べてますよ!」


ミリーが驚いたように指さした先には、巨大なコガネムシをかぶりついている村の男性がいた。彼はまるでステーキを食べているかのように、楽しげにその虫を食べていた。


「…マジかよ。あんなの食べられるなんて、すごいな。」


タケシは思わずため息をつきながら、カメラを男性に向けた。男性はカメラに気づくと、にっこりと笑って親指を立てた。


「お兄さんたちもどうだい?このコガネムシ、香ばしくて最高だぜ!」


「え、えっと…俺たちはまだ…準備が…」


タケシは言葉を濁しながら、ミリーに助けを求めるような目を向けた。ミリーも同じように困った顔をしながら、肩をすくめた。


「タケシさん、せっかくの取材ですから、勇気を出して食べてみましょうよ。視聴者の皆さんもきっと期待してますよ!」


「そ、そうだな…よし、行くか!」


タケシは自分に言い聞かせるように深呼吸をし、屋台の一つに近づいた。そこには、小さな虫が串に刺さっているものが並べられていた。見た目はまるで焼き鳥のようだが、よく見ると、足や羽がついたままだ。


「これ…食べるのか…?」


タケシは恐る恐る串を手に取り、目を閉じて口に運んだ。ミリーはその様子をじっと見守っていた。


「どうですか、タケシさん?」


「…う、うん…意外と…イケるかも?」


タケシはゆっくりと咀嚼しながら答えた。香ばしい味わいとともに、カリッとした食感が口の中に広がった。思ったよりもクセがなく、むしろ香ばしさが美味しく感じられた。


「おお、意外といけるじゃん!なんかナッツっぽい味がするぞ!」


タケシが笑顔でそう言うと、周りの村人たちから拍手が起こった。彼らは楽しそうに笑いながら、次々と虫料理を勧めてきた。


「次はこれを試してみなよ!これは揚げたグラナシムシだ。サクサクしてて、美味しいぞ!」


タケシは勧められるがままに揚げた虫を手に取り、再び口に運んだ。今度はサクサクとした食感で、香ばしさがさらに増していた。


「おお、これも悪くない!なんかポテトチップスみたいな感じだな!」


ミリーはタケシの勇姿を見て、少しずつ勇気を出してきたのか、小さな虫を手に取ってみた。


「わ、私も…ちょっとだけ、挑戦してみます!」


彼女は小さな羽のついた虫を手に取り、目を閉じて口に運んだ。数秒後、ミリーの目がぱっと開いた。


「…あれ?これ、意外と美味しいかも!ちょっと甘くて、カリカリしてますね!」


タケシはその様子を見て、大きく頷いた。


「だろ?虫って言うから抵抗があったけど、実際食べてみると全然いけるよな!」


◇◇◇


その後、タケシとミリーは様々な虫料理に挑戦していった。焼いたものから、蒸したもの、さらには特製ソースをかけたものまで、次々と試してみた。


「タケシさん、この虫は何かフルーティーな味がしますね!」


ミリーが食べたのは、フルーツの香りがする「フルルムシ」。果実を主食としているため、その体にも甘みが残っているのだという。


「ほんとだ、これなら普通のおやつとしてもアリだな!」


タケシは感心しながら、次々と虫料理を食べ続けた。村人たちも彼らの挑戦に感心し、次々と新しい料理を勧めてくれた。


しかし、その中で一つだけ、タケシもミリーもためらった料理があった。それは「生のデラゴムシ」だ。大きな透明な体に、青く光る内臓が透けて見える。その見た目はまるで異世界の宝石のようで、美しい反面、食べるには勇気が必要だった。


「タケシさん…これは、さすがに…どうします?」


ミリーが心配そうに尋ねると、タケシも少し顔を引きつらせながら言った。


「うーん、これだけは…いや、でも取材だしな。逃げるわけにはいかないよな!」


タケシは勇気を振り絞り、デラゴムシを手に取った。そして、深呼吸をしながらそのまま口に運んだ。


「…っ!お、おお…これは…!」


口の中に広がる独特の味わい。少しぬるっとした食感と、強い磯の香り。しかし、その後に感じる甘みと旨味が何とも言えない。


「…意外と…いける!?いや、これ、クセになるかも!」


タケシが驚いた顔でそう言うと、周りの村人たちは歓声を上げた。ミリーもそれに続いて小さく拍手をしながら言った。


「タケシさん、さすがです!私も…挑戦してみます!」


ミリーは勇気を出してデラゴムシを手に取り、恐る恐る口に運んだ。数秒後、彼女の顔に驚きの表情が浮かんだ。


「…うわぁ…これ、すごいです。でも、意外とクセになりますね!」


タケシはミリーの挑戦に拍手を送りながら、大きく頷いた。


「そうだろ?異世界の虫って、ただの食材じゃなくて、文化なんだよな。こうして食べてみると、その土地の人たちの生き方が見えてくるっていうか…なんだか感動するよ。」


ミリーも同意しながら、目を輝かせた。


「本当にそうですね。最初は怖かったけど、これも異世界の一部なんですよね。こうやって文化に触れるのって、すごく大切なことなんだなって思います!」


タケシは満足げに頷き、カメラを回しながら村人たちに話しかけた。


「皆さん、今日は異世界の虫を食べる文化に触れてきました!最初は抵抗があったけど、実際に食べてみると、美味しいし、その土地の人たちの生き方が感じられます。こういう経験が、異世界の魅力をもっと深く知ることにつながるんだよな!」


ミリーも笑顔でカメラに向かって話しかけた。


「皆さんもぜひ、機会があれば異世界の虫料理に挑戦してみてください!驚きと発見がたくさんありますよ!」


◇◇◇


取材を終えたタケシとミリーは、村の広場から少し離れた丘の上で休憩を取っていた。夕焼けに染まる空の下、二人は今日の体験を振り返っていた。


「タケシさん、今日は本当に驚きの連続でしたね。でも、なんだか楽しかったです!」


ミリーが笑顔で言うと、タケシも笑いながら頷いた。


「ああ、確かに。最初はどうなることかと思ったけど、結局は楽しめたし、良い経験になったよな。異世界にはまだまだ俺たちの知らないことがたくさんあるんだろうな。」


「そうですね!これからもたくさんの異世界の文化に触れていきましょう!」


タケシはミリーに頷き、遠くに見える村の景色を眺めながら言った。


「よし、次はどんな冒険が待っているか、楽しみだな。俺たちの異世界チャンネルは、まだまだ続くぞ!」


二人は笑顔で手を振りながら、次の冒険に向けて歩き出した。異世界の虫を食べる会での体験は、彼らにとって忘れられない一日となった。未知の味と文化に触れることで、さらに異世界への理解が深まったのだった。


「異世界チャンネル、次回もお楽しみに!」


夕陽に照らされた二人の背中が、次なる冒険への期待を映し出していた。



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