第109話: 「異世界の探偵—不思議な事件簿」
今回の異世界チャンネルのテーマは「探偵」。異世界でどのような探偵がどんな事件を扱っているのか、その現場にタケシとミリーが密着取材することになった。まさか異世界にも探偵がいるとは、想像もしていなかった二人。果たして異世界の探偵はどんな推理を披露し、どのようにして謎を解き明かしていくのだろうか?
◇◇◇
「タケシさん、今日は探偵についての取材なんですよね!探偵って、なんかかっこいい響きがありますよね。帽子にマント、そしてパイプ…そんな感じですか?」
ミリーが目をキラキラさせながら、タケシに話しかけた。タケシは少し肩をすくめて笑いながら、カメラを調整した。
「いやいや、異世界の探偵がどんな姿かはわからないけど、なんか面白い人だったらいいな。だって、俺たちが取材するんだぞ?真面目な探偵ばかりじゃなくて、ちょっと変わった人に違いないさ。」
「確かに、異世界の探偵ですもんね。何か魔法を使ったり、ドラゴンに助けてもらったりするのかもしれませんね!」
二人が向かったのは、異世界の探偵事務所「ミステリーハウス」。そこには、町のちょっとしたトラブルから大きな事件まで、幅広く扱う異世界唯一の探偵がいると噂されていた。
◇◇◇
「こんにちは、こちらは探偵事務所『ミステリーハウス』ですか?」
タケシが扉を開けると、中から低い声が聞こえてきた。
「いらっしゃい、君たちは取材班かい?それとも新しい依頼者か?」
中にいたのは、年配の男性—いや、年齢不詳の風貌をした探偵だった。長めのコートを着ており、頭には小さな帽子をかぶっている。そして驚くべきことに、肩には一羽の黒猫がちょこんと座っていた。
「おや、この猫はまさか…助手ですか?」
ミリーが目を輝かせて尋ねると、探偵は鼻を鳴らして笑った。
「いやいや、この子はただの飾りみたいなもんだよ。本当の助手は君たちと同じで、あっちにいる妖精さ。」
探偵が指差した方向を見ると、そこにはちょこんと座っている小さな妖精がいた。妖精は忙しそうに書類をまとめており、タケシとミリーに軽く手を振った。
「こんにちは、私は探偵の助手をしているルーシーです。今日はどんなご用件でしょうか?」
タケシはカメラを向けながら説明した。
「今日は異世界の探偵の仕事について取材させていただければと思って来たんです。どんな事件を扱っているのか、興味があって。」
探偵は椅子に座り直し、顎に手を当てて考え込むように見せた。
「そうだな、探偵の仕事か…。今日はちょうど面白い依頼が入っているところなんだ。一緒に来てみるかい?現場を見れば、異世界の探偵がどんな仕事をしているのかわかるだろう。」
ミリーは嬉しそうに飛び上がった。
「わあ、それは楽しみです!タケシさん、行きましょう!」
◇◇◇
探偵に連れられて、タケシとミリーは町外れにある古びた屋敷に向かった。その屋敷はまるで幽霊が出てきそうな不気味な雰囲気を醸し出しており、タケシは思わず身震いをした。
「こ、ここが現場ですか?なんか、不気味ですね…。まさか幽霊事件とかじゃないですよね?」
探偵はニヤリと笑い、首を横に振った。
「幽霊事件なんてものは存在しないよ。これはもっと現実的な問題さ。屋敷の主人が、突然家にある宝石が消えたと騒いでいるんだ。だが、どうも屋敷に侵入した痕跡はないらしい。さて、この謎をどう解くか…。」
ミリーは興味津々で探偵に質問した。
「侵入した形跡がないのに宝石が消えるなんて、まるで魔法みたいですね。でも、本当に魔法が関わっているんでしょうか?」
探偵は肩に座っている黒猫を撫でながら答えた。
「それがね、意外と魔法じゃないことも多いんだよ。人々はすぐに不思議なことを魔法のせいにしたがるけれど、実際には人間の欲望が生んだ犯行のことがほとんどさ。」
タケシはカメラを回しながら探偵に続いて屋敷の中に入った。屋敷の中は薄暗く、埃がたまり、どこか冷たい空気が漂っていた。
「さて、まずは現場を調べてみようか。お二人さん、何か怪しいものを見つけたら教えてくれ。」
◇◇◇
タケシとミリーは探偵と一緒に屋敷の中を歩き回り、宝石が消えた部屋に到着した。そこには豪華な家具が並び、宝石が置かれていたはずのガラスケースが空っぽになっていた。
「うーん、確かにこの部屋には窓も少ないし、侵入するのは難しそうですね。」
タケシが感想を述べると、探偵はガラスケースをじっと見つめていた。
「そうだね、この部屋に無理やり入るのは難しい。だが、ここには一つ、妙な点があるんだよ。」
ミリーは不思議そうに首をかしげた。
「妙な点?何がですか?」
探偵はガラスケースの蓋を指差しながら言った。
「この蓋だよ。普通、宝石を守るためには鍵をかけるものだが、この蓋には鍵がかかっていない。つまり、犯人は最初からこの部屋に自由に出入りできる人間だったんだよ。」
「ええっ!?じゃあ、屋敷の中にいる誰かが犯人ってことですか?」
タケシが驚いた声を上げると、探偵は静かに頷いた。
「その通り。だから、屋敷の中にいる全員に話を聞いてみる必要があるな。お二人も協力してくれるかな?」
◇◇◇
屋敷の使用人たちに話を聞き始めたタケシとミリー。どの使用人も口を揃えて「宝石なんて触っていない」と主張していたが、探偵はその中でも特に一人の若い使用人に目をつけていた。
「君、少し緊張しているようだね。何か隠していることはないかい?」
探偵が優しく声をかけると、その若い使用人は視線をそらし、手を震わせ始めた。
「い、いや、何も隠してなんかいませんよ。ただ、その…。」
探偵はその様子をじっと見つめながら続けた。
「ただ、何だい?君が何かを知っているのは明らかだ。正直に話してくれれば、君のためにもなるんだよ。」
若い使用人はついに観念したようにため息をつき、口を開いた。
「実は…屋敷の主人が、宝石を売ろうとしていたんです。でも、それを奥様には秘密にしていたんです。それで、私に宝石をこっそり持ち出して、街の商人に売るよう頼まれたんです…。」
ミリーは目を丸くして驚いた。
「なんと!まさか屋敷の主人が自分で宝石を売ろうとしていたなんて…。これはびっくりです。」
タケシもカメラに向かって話しかけた。
「皆さん、これが異世界の探偵の実力です。犯人はまさかの屋敷の主人自身だったわけですね。探偵さん、さすがです!」
探偵は肩の黒猫を撫でながら、静かに微笑んだ。
「人間の欲望が絡むと、往々にしてこういう結果になるものさ。魔法や不思議な力なんて必要ない、ただ人間の心理を読み解くだけで解決できることが多いんだよ。」
◇◇◇
取材を終えたタケシとミリーは、探偵にお礼を言い、事務所に戻ることにした。
「探偵さん、今日は本当にありがとうございました。異世界の探偵の仕事について、とても興味深いお話を聞けました。」
探偵は頷き、最後にこう言った。
「いつでもまた来てくれたまえ。異世界の謎は尽きることがないからね。そして、君たちのような好奇心旺盛な人々がいる限り、探偵の仕事もなくならないだろうさ。」
ミリーは笑顔で答えた。
「はい!次はもっと大きな事件を解決するところを見たいです!」
タケシも笑いながら頷き、カメラに向かって話しかけた。
「皆さん、いかがでしたか?今回は異世界の探偵の仕事について取材しました。不思議な事件の裏には、人間の欲望や心理が絡んでいることが多いんですね。これからも異世界の驚きと発見をお届けしていきますので、次回もお楽しみに!」
タケシとミリーは笑顔でカメラに手を振りながら、次の冒険に向けて歩き出した。異世界の探偵という謎多き職業に触れた彼らは、また一つ新しい知識を手に入れ、次の挑戦へと向かっていく――。