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第1話: 「ドラゴンのグルメレポート」


「よし、今日の取材はドラゴンの食レポだ!あ、ヤバい、絶対ヤバいやつだこれ…」


異世界チャンネルのプロデューサーに任命されてからまだ数日しか経っていない俺、タケシ。今日もまた一段とハードな取材が待っている。なんせ、取材対象は「ドラゴン」だ。しかもただのドラゴンじゃない。「食にこだわる美食家ドラゴン」のグルメレポートだなんて、もう生きて帰れる気がしない。


「タケシさん、大丈夫ですか? ドラゴンの取材なんて…、最初から飛ばしすぎじゃないですか?」


隣で不安そうに話しかけてくるのは、異世界チャンネルのアシスタントで妖精のミリーだ。彼女は小さな羽をパタパタさせながら俺を見上げて、心配そうに眉を寄せている。


「大丈夫だよ、ミリー…多分。ってか、これ仕事だからね?プロデューサーとしてはやるしかないだろ。でも、もしもの時は…頼むから俺のことは忘れないでくれよ。」


「もう!そんなこと言わないでくださいよ!ちゃんと生きて帰ってきてくださいね!じゃないと次のプロデューサー見つけるの大変なんですから!」


「そこ!?俺の命よりも人手不足が心配かよ!」


心臓バクバク、手汗ドバドバの状態で、取材場所である「炎の谷」へとやって来た俺たち。すると、そこには巨大なドラゴンが悠然と鎮座していた。彼の名前は「グラドン」。見た目からして、頑固でこわもての顔つきだが、その瞳には何かしらの知識の深みが感じられる。


「おお、待っていたぞ。人間のプロデューサーと妖精か。今日は特別な料理を紹介してやろう。」


地響きのような声が谷中に響き渡る。ミリーはビクッと羽を震わせ、俺はもう一度手汗を拭いた。


「え、ええと…今日はどんな料理を…?」


「ふむ、今日は火山の麓から採ってきた『炎のキノコ』を使ったスープだ。このキノコは、ただ煮込むだけではダメだ。特別な火加減で炙り、その後に炎の息を使って香りを引き出すのだ。」


「え、ちょ、ちょっと待ってください。炎の息で炙るってことは、俺たち近くにいても…大丈夫ですか?」


「ふん、人間よ、私の料理を舐めるなよ。炎の扱いは私の誇りだ。安全に美味を引き出してみせよう。」


グラドンの言葉に力強さを感じつつ、俺はちょっとした覚悟を決める。


「いや…それにしてもドラゴンが料理するなんて、思ってもみなかったな。火吹いて焼き尽くすくらいしかイメージがなかったんだけど…」


「タケシさん、それ言わない方が…」


ミリーがこっそり耳打ちしてくるが、もう遅い。グラドンがじろりとこちらを見てきた。


「人間よ、お前は私を何だと思っているのだ?単なる火の化け物か?」


「あ、いやいや、そんなことないですって!もちろん、グラドンさんは偉大な…その…グルメの探求者というか、その…すごい存在ですよ!」


「ふむ…まあよい。とにかく見ていろ。このキノコの繊細な調理法をな。」


俺は心の中で深く息をつきながら、カメラを回し始めた。グラドンは巨大な爪でキノコを丁寧に扱い、その巨大な口から吹き出す炎で慎重に炙っていく。その様子はまるで、巨匠が最高の食材を扱っているかのようだった。


「さて、特別な火山の麓で採集するシーンも取材しておこう。ミリー、カメラを準備してくれ。」


「はい、タケシさん!」


俺たちはグラドンの案内で、火山の麓へと向かった。足元には不規則な岩が広がり、溶岩の熱気が空気を歪ませている。この環境で生きる植物なんて想像もできないが、グラドンは自信たっぷりに先導していく。


「この辺りだ。炎のキノコは非常に繊細で、熱を好むが強すぎると枯れてしまう。見ろ、あそこだ。」


グラドンが大きな爪で指し示した先には、赤く光るキノコが群生していた。その姿はまるで炎のようで、一見すると熱で燃えているようにも見える。


「これが…『炎のキノコ』か。すごいな、こんな過酷な場所で育つんだ。」


「そうだ。このキノコは特別な条件でしか育たない。そのため、採集には慎重さが求められるのだ。」


グラドンはまるで宝石を扱うかのように慎重にキノコを摘み取り、一つずつ籠に入れていった。俺はその様子をカメラに収めながら、自然の偉大さとグラドンの知識に感嘆していた。


「タケシさん、ドラゴンがこんなに繊細に植物を扱うなんて、思ってもみませんでしたね。」


「ほんとだよな。ドラゴンってもっとこう…破壊的な存在かと思ってたけど、グラドンさんはまるで自然の守護者みたいだ。」


「ふん、人間よ、自然は我らドラゴンにとっても大切なものだ。壊すだけではなく、育て、守ることもまた我らの誇りなのだ。」


採集を終えた俺たちは、再び「炎の谷」に戻り、料理の準備に取り掛かることとなった。


グラドンは炎のキノコを丁寧に洗い、特別な石の上に並べた。その石は、まるで炎を閉じ込めたような不思議な輝きを放っている。


「この石は、火山の心臓から取り出したものだ。熱を保ち、調理のための最適な温度を提供してくれる。炎のキノコを炙るにはこれ以上のものはない。」


グラドンはそう言って、巨大な口から炎を吐き出した。炎の舌がキノコを優しく包み込み、表面を均等に炙っていく。その火加減はまさに職人技で、キノコの香りが辺りに広がっていった。


「すごい…まるで魔法みたいだ。でも、これは純粋な技術なんだな。」


「そうだ、料理とは技術と情熱の結晶だ。魔法ではなく、心を込めた手仕事が大切なのだ。」


炙りが終わると、グラドンはスープを作り始めた。炎のキノコを大鍋に入れ、特別な調合のスパイスを加えていく。そのスパイスは異世界ならではのもので、見たこともない色と形をしていた。


「このスパイスは、山岳地帯で採れる『風の実』だ。これを加えることで、スープに爽やかな風味が加わる。」


「風の実…なんか名前からしてすごいな。どんな味になるんだろう。」


グラドンはスープを煮込みながら、何度も火加減を調整していた。その姿はまるで、芸術家が作品を完成させるかのようで、俺はただただ見入ってしまった。


「さあ、できたぞ。人間よ、試食してみろ。」


グラドンが差し出したスープは、赤く燃えるような色をしていた。しかし、その香りは驚くほど芳醇で、鼻をくすぐるような香ばしさがあった。


「え、俺が試食するの?マジで?これって、もしかして…俺の命運をかけた一杯とかじゃないよね?」


「タケシさん、早く!今飲まないと、グラドンさんが怒りますよ!」


ミリーが急かす中、俺は意を決してスープを口に含んだ。


「……美味い!! いや、本当に美味い!! 炎の香りがこんなにも深みを与えるなんて、想像以上だ! しかも、風の実の爽やかさが後から追いかけてきて、絶妙なバランスだ!」


グラドンは満足そうにうなずいた。


「そうだろう。料理は心と技術、そして情熱だ。どんな生き物でも、心を込めれば素晴らしいものが作れるのだ。」


「グラドンさん…あなた、実はただの火吹きドラゴンじゃなくて、本当に料理人だったんですね。」


「ふん、当たり前だ。」


その言葉に俺は心から感動し、同時に異世界の奥深さを感じずにはいられなかった。この世界にはまだまだ俺たちが知らない魅力がたくさん詰まっている。


「タケシさん、今日の放送は大成功ですね!」


ミリーが満面の笑顔で言った。


「ああ、まさかドラゴンのグルメレポートがこんなに感動的になるなんて思わなかったよ。これからももっと面白い取材をしていこう。次はどんなハプニングが待ってるか分からないけどな!」


こうして俺たちの「異世界チャンネル」は、放送事故寸前のハプニングを乗り越えながらも、少しずつ異世界の人々に愛される番組になっていくのだった。


「よし、次は魔法使いのパンケーキ対決だ!絶対無事に終わらない気がするけど…行くぞ、ミリー!」


「はいっ!」


笑顔とハラハラが絶えない「異世界チャンネル」は、今日も元気に放送中だ!

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