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春休みを数えて。  作者: 銅鑼の鳴る部屋
夜更かしサイクリング編
6/10

春休みを咲かせて。

深夜にサイクリングロードを目指して闇を駆け抜ける未成年の主人公。この外出はやがて、クライマックスへと進行していく——

 ただ一人、起きていた。大人に出会うことなんてなさそうだ。すべてを独り占めできる。貸し切り状態だ。ただ、一人であるがゆえに静寂がまとわりつく。ただそれだけであった。

 ——空の下で生まれ、やがては天へ帰ってゆく。

 いつか空の上へ。雲を越えて。やがては、地球の外へ。宇宙を越えて。音も光もたどり着けない場所へ。全てから脱出して。なにもかもを越えて。いつかわかる。きっとわかる。ただ、いつなのかは誰も知らない。知っているとすれば神のようなものか、本能くらい。でも……僕は知らない——

 考え事をしていた。いつかは誰もが考えるようなこと。この世界の仕組みについて。サイクリングロードまではあと少し。目指すべき場所へは確実に近づいている。時間なんて気にならない。そもそも時間なんて存在しないのではないかと考えてしまう。たぶん、そうである。

 いろいろなことを考えていると、サイクリングロードに着いた。

 別に、サイクリングロードは観光スポットではないから「綺麗」なんて感動することはない。結局はただの道である。最終的な目的地があるから、まだクライマックスではない。むしろ、これからなのだ。

 同じように静かな夜をただ進んでゆく。サイクリングロードだからといって普通の道路を進むのと特に変化はない。ただ、近くの川の音がする。

 「着いた。」

 白い石でできている鳥居。自転車を置く場所がわからず、とりあえず鳥居を一緒にくぐった。空いているスペースを見て「ここだ」と思った。

 自転車を置き去りにして誰もいない神社を楽しむ。

 この神社は基本は人がいない。そんなに大きくはないし、誰を祀っているのかすら知らない。しかし、個々の神社には誰が見ても美しいという場所があった。社殿(再緯線箱を入れるときによく見るでっかい建物。アニメだとここの中に入った人がたたりをうけるイメージが僕の中ではある。)の右側に道がある。そこを通ると、桜が七、八本くらいある場所に到着する。桜は円を描くように並んでいる。わかりやすく例えると、モデルが独特な服を着て歩くランウェイみたいな感じ。道があって、道を進むと円のようなものがあって、そこに桜がある。

 僕の足音だけして、他は何も聞こえない。

 ここは、毎年、春になると親友の大井と二人で桜を見上げた。よく、満開の桜を見て、「きれいだねー」なんて言っていた。そんな、場所だった。しかし、県外の有名な学校を受験したらしく、見事に受かったのと家が古くなったということで遠くに引っ越すことになった。だから、卒業式の後は一切会えていなかった。桜を一緒に見たかったのだが、花など咲いていなかった。だから、いつか一人で見に行こうと思っていた。

 ここに一人で来るのは初めてだ。そもそも、桜が咲いているかどうかわからないのになぜ、ここに来たのか。自分でもわからない。

 「トットットット」

 地面が石だから、やけに音が響く。

 「トットットット」

 「トットットット」

 「トットット」

 そこには、ライトアップされていた桜たちの姿があった。まだ、つぼみが多く、満開の花を咲かせるべく準備している。

 しかし、数輪の花が満開に、

——春休みが咲いた。

今回は長く書きました。うん、これでも自分基準ではかなり長い長い。まあ、夜更かしサイクリング編のクライマックスみたいな。

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