春休みを静寂にさせて。
子供であるのに関わらず深夜にサイクリングをすることに決めた主人公。半月が輝く中、家を出て向かう場所とは。
自転車は寝ているように見えた。まあ、そんなこと関係ないけど。
外は春であってもやっぱり寒い。ただ、それが良い。
サイクリングコースが家の近くにある。目指す場所はもう決まっていた。
僕はヘルメットを被って、とうとう自転車に乗った。サドルが寒い。まあ、ハンドルもだけど。
周りの家の照明は消えている。車なんて全く通らない。信号機のライトアップが綺麗だ。昼にはここに人がいたことを思わせてくれる。それが深夜になればただ一人、なんか……
「青だ。」
感動を遮るように信号機のライトアップは変わった。
僕はただ、一人でいることに興奮している訳ではない。それ以上にスリルがある。大人に子供が深夜、サイクリングをしているなんて見つかってしまうのであれば大変だ。
僕はそう思いながらペダルをこいだ。自転車だとある程度速さがついて風が全身に当たる。少し寒かったものが余計に寒くなった。
サイクリングコースまではある程度距離がある。「サイクリングコースが家の近くにある」なんて嘘じゃないか、などと思っただろう。しかし、どちらとも正しい。なぜなら、遠回りをしているからだ。勿論、理由は大人に発見されないため。よって、人通りの少ない道を通っている。
周りの音はしない。強いて言うのであれば、自転車の音。「ワァ~」なんてものはもうでなくなった。
周りの景色は見えない。強いて言うのであれば、自転車のライトに照らされた所。
周りの匂いはしないし、味もしない。
感じるのは風。寒さ。そして、静寂。
よい子は深夜に外に出たらだめだよ。
次回は主人公がサイクリングロードに到着します。(唐突なネタバレ)