第十九話 修行
51番サイトの元にカラスが返ってくる
「これでスタート位置は分かった」
カラスを優しく撫でると、一瞬で消し去るサイト
ハンモックから降り歩き出す
◇
サイトが78番が作った家の前に来る
「こういう馬鹿が1番嫌いだ」
サイトが家に近づき右手を家にあてると右手と家の間に大きな光が作り出される
すると家は一瞬で崩れる
「痛ってぇ~」
崩れ落ちた家の瓦礫の中から傷だらけの78番が出てくる
するとサイトは右手の上に巨大な蜂を作り出し、その手を78番の方に向ける
「ちょっと待て」
蜂は78番の身体に針をさすと、78番が消えた
「バカは嫌いだ!」
表情を変えずサイトが小声で言う
◇
モニターが横に4個、縦に8個の計20個が並んだ部屋で審査役のプロのプレイヤー4名が監視している
「今年の参加者はレベルが高いって事か?」
椅子にのけぞり後ろを振り返りながら言うと、後ろに立っている背の低いスーツの男性が答える
「そうだね。2次テストで10名まで落とすのに、AIによってあんな珍獣を使わないと駄目なくらいって事だからな」
電話のコール音が鳴る
真ん中に座っている女性がデスク上のボタンを押し答える
「ミキタ様どうされましたか?」
◇
ナルとアリが話しているとシンが戻ってくる
「どうだった?」
ナルが聞く
「いや、見つからなかった。意外に大きいフィールドだね。まぁ明日も探してみるよ」
「うん。ありがとう」
「アリはどう?」
「大分調子いいみたい。ね?アリ」
「うん」
笑顔で答えるアリ
「なら今日はここで休もうか」
「そうしよう!」
即答でナルが答える
「所でナルはまだ何も作り出せないんだよね?」
「うん。練習のやり方すら分からなくて」
「アリは何か作れる?」
シンが聞くと
「私は強くイメージできる簡単な物ならなんとか」
「ならどうせなら僕が教えるから特訓しよう!」
◇
建物の外に居る3人
シンの説明を真剣に聞いているナルとアリ
「まず簡単な説明からするね。MNBの中では自分が想像できる物はなんでも作り出せると言われているんだ。だけど人によって作りだせる物に違いが出る。まず1番簡単なのは現実世界でよく使っていた小さな物。これは頭でイメージしやすいし小さいから作りやすい。ナルはまずここを目指すといいかな。アリはここまでできる感じだよね?」
「うん」
「じゃあアリ何か作ってみてくれる?」
「分かった」
アリは右手の手のひらを見ながら集中する
すると小さなナイフが出来上がる
ナルはアリを尊敬のまなざしで見ている
「OK。そんな感じ。アリの場合は今のを目線を使わずイメージだけで作る。それを素早く。それができれば次のステージの大きい物が簡単に作れるようになるよ」
ナルがシンに質問する
「シュウサが作ってた青い輪みたいなの、作るのは難しい?」
「あれはカナリ難しいかな。プロの選手でも作れない人は多くいる。まずは小さい物を作るスピードが結構試合には大切で。次に大きい物を相手との駆け引きの中でいかに素早く作り出すか。その次のステージでこの世にない物をイメージだけで作り出せるかって感じだね。1番難しいのは生き物を作ること。この世の中の生き物を作るのは新しい物を作るより難しいと言われてる。そして最後がこの世にない生き物を作る事かな?これはできる人をまだ見た事ない。僕のドラゴンは生き物の形をした乗り物だからこの世にない物を作ってるだけなんだ」
「なるほど」
ナルが頷きながら答える
「でも今のはあくまで僕がつけた順番で、この世にない物は作れないけど生き物は作れるって人もいるし、その人達の特徴なんかも反映されるから大体の基準がそうなんだって思ってもらえれば」
「じゃナルはまず何をしたらいい?」
「そうだね。まずナルは最初に作り出す物を決めよう。アリはとにかくナイフを速く作る練習」
シンはボタンを押すタイプの大きめのストップウォッチを手の平で作り出しアリに渡す。
「アリはこれで時間を計りながら」
「何作ろう?」
「ナルが生まれてからよく触ってた物って何?」
少し考えたナルは悩みながら
「ボール?小さい頃ゴミ山の中に捨ててあった黄色のボールをよく持ってた」
照れながら話すナル
「それにしよう!じゃまずはその時の事を具体的に思い出して」
目を瞑り考えるナル
《あれは6歳の時だったかな・・・》
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