第十四話 思い出
トレーニングが終わりお風呂に入ろうと脱衣所に向かうナル
服を脱ぎズボンを脱ごうとしている後ろ姿
◇
白く濁った湯舟に浸かっている
水を両手でかき上げ匂いを嗅いでいる
「あぁ~バニラの香りだぁ」
幸せそうなナル
昔の事を思い出し
《なんか住んでた世界と全く別の世界に来たみたいだなぁ》
◇
【回想】
周りにゴミがあふれた街の中で、古いテレビが捨てられていた。子供達が遊んでいる中でそのテレビを直しているマーサ。様々な種類のコードを使い、多くの電線に接続して電波を繋ぐ。するとテレビがついた。子供たちがテレビに集まってくる。
「すげぇ~」
15人程の子供の中に5歳のナルもいた。子供たちを見て嬉しそうなマーサ。テレビにはMNBの世界大会決勝が行われていた。
後に語り継がれるウミ対アンドスの世紀の一戦である
そのモニターを見たナルは
《これになりたい》
そう思いその日の夜にマーサに聞いてみた
「ナル世界一になるんだけどまず何からしよう?」
マーサは笑いながら
「何からしたらいいと思う?」
と聞いてきた。
「練習・・・?」
「うーん。それも大事だね」
「やってみる」
と言うと外に出てナルはウミの攻撃、動きを思い出してとにかくガムシャラに動いた。
時計の針が進むのも気にせず気が付くと2時間もの時間が過ぎていた。
そこにマーサが歩いてくる
「それじゃ世界一は遠いかもな?」
笑いながら言う
「なんで」
怒るナル
「まずは楽しくなさそうだ。どうやったら楽しくできるか考えなさい」
と笑いながら去っていくマーサ
「楽しくか・・・」
《確かに楽しくない。どうやれば楽しくなるかな?》
そんな事を考えながらマネと言う練習を始めていった
◇
「5歳のあの時の事だけ鮮明に覚えてんだよなぁ」
そう言いながら湯船に口をつけて息を吐きブクブクさせるナル
《あれは何歳の時だっけ》
◇
【回想】
10歳の時のナルが夕食を食べていた。
いつもどうり席に座り大量の卵料理と鶏肉にパン。
いつもどうり横にはいつもナユが座っていて、向かいにはパパ、ママが座っている。
「今日も楽しくできたか?」
マーサが聞いてくる
「楽しかったよ」
「そうかそうか」
笑顔で答えるマーサ
するとまた不思議な話をしてきた
「将来お前は大きな壁にぶち当たる。その時は愛を信じろ。」
「愛を信じろ。優しさを信じろでしょ!それ毎日聞いてんだけど!ねぇナユ」
「うん」
ナユは小さい声で答えた
「そうだったか。ナユお前は」
「多くの人に与えなさい」
小さい声で下を向き答える
持っていたパンの半分を千切り足元にいる懐いているネズミにあげる
「それも何回目?もう1000回は聞いてるよ」
ナルが言うとママがクスリと笑う。
◇
湯舟で顔が真っ赤なナル
「ヤバイのぼせた」
立ち上がる
《みんな元気してるかな?はやく会いたいな》
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