第十話 50m走②
ドア横のランプが青に光る。
2番目に待っているゼッケン42番の小太りな男がなかなか入らない為周りがざわつき始める。
ナルが42番のもとに走って駆け寄り、声をかける。
「42番さん。青いランプになったから入れるよ」
周りからも「早く入れ!」との声が飛び交うが、一向に入ろうとしない。
アキがシンの元に歩み寄り耳打ちする
「こいつわざと入らねんだ」
モニターには20秒のカウントが始まっており、残りが12秒。
無視する42番に再度話しかけるナル
「早く入んないと失格になるんじゃないの?」
42番は笑いだした。
――残り時間8秒
「なんで俺が失格になるんだぁ~」
お腹を抱え笑っている。
皆がポカンとした顔をしている中、1番のゼッケンをつけた女性が急に焦りだす。
――残り2秒
「やっと気がついたか!どうせバカは勝ちあがれないんだよ」
さらに大きく笑い、地面に座る。
「ちょっとまってよ!!」
1番の女性は慌ててドアに向かう。
スタートの合図がドア越しに響くと同時に外に出て、赤いランプがともった
「なんの為に・・・」
ナルが42番に悲しそうに問う
「まずこれはテストという名の勝負なんだぞ?ライバルは一人でも減った方がいいに決まってるだろ」
「そんなことない!」
「まぁ子供にはわかんねぇーよな。こ・ど・も・に・は」
◇
ナルはイスに座り横にシンが、その横にアキ。
「あの1番の人どうなったかなぁ」
落ち込みながら話すナルに
「恐らく失格だね」
シンが静かに言う
42番は顔、頭がボコボコに腫れた状態で部屋の端の方で失神している。
「ナルも今は自分の事に集中しよう!」
「そうだぞ!案外発想をだすの難しいからな。しかもナルは初めてなんだろ?」
シンとアキに言われわ我に返るナル
《そうだった。リアルすぎて現実だと思っていたここもシミレーションの中だったんだ》
「うん」
少し元気を取り戻すナル
「いきなりイメージを形にするのは難しいからな。ナルは何か案はあんのか?」
アキに聞かれヤバさに気が付くなる
「ヤバイ」
一人の世界に入り込むナルを見て微笑むシンとアキ
「まだまだ考える時間あるからゆっくり考えて。僕は22番だから次だ」
自信がある者は早い段階で自ら出たため、今は基本的にゼッケン順になってきている。
「シン頑張ってね」
「うん。ナルもがんばって」
シンがドアの方に向かって歩いて行く。
◇
ゴールのプレハブにシンが入っていく
「シン!お前すげーじゃん」
モニターで見ていたシュウサがチョコを食べながらシンに話しかける
「うん」
少し照れながら小さな声で返事してシュウサの横に座る
モニターには23番の挑戦者がバイクを作ろうとするも時間がかかりその場から消えた
シュウサがシンに聞く
「ナル大丈夫そうだった?」
「うーん。まだ案がないみたい」
「あいつ何やってんだよ!あいつのおかげで楽しくなってきたのに」
「うん。僕も」
◇
まだ下を向き悩んでいるナル
「行ってくる!ゴールでまってるからな」
アキが言うも聞こえていない
「オイ!ナル」
ビックリした表情でアキを見る
「俺の次なんだからしっかりしろよ!クリアして待ってるからな」
「うん!頑張って」
アキがドアの方に歩いて行く姿を見て
《もうやるしかないよね》
「よしっ!」
と気合を入れドアの前まで歩き出すナル
◇
スタートラインに着くアキ
「よっしゃー!!!!やってやんぜ!」
やる気に溢れているとスタート音が鳴り響く
アキは巨大なパチンコの様なものを作りだす
少し時間がかかっているが
お腹に太いゴムをあてゴールとは反対に走る。
そこからゴムの反発で後ろ向きのまま高速で飛び出しゴール5秒12
そのまま転倒
「いってぇ~危なかったぜ」
「おめでとうございます」
◇
ゴールのプレハブで見ていた者何人かが腹を抱えて笑っている。
アキがドアから入ってくる
「おっさんおもしれーな」
シュウサが笑いながらアキをイジる
シンも笑いをこらえながら
「おめでとう」
いじられても反応の薄いアキはすぐにモニターを見る
「次はナルだ」
アキが言うと3人がモニターを見る。
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