97話 玉転がしなのです。
【毎日昼の12時に更新します】
そして次の競技は玉転がしだった。
これは俺が参加する唯一の競技だ。
商品券目当ての四女神は全種目出場だが、体育が苦手な俺はいちばん身体能力の差が出なそうなこの競技にだけ出ることに決まっているのだ。
「男女がチームに分かれるんだな」
俺は競技場に向かいながらそう言った。
「みたいですねっ。男子四名がひとつの玉を、女子四名がひとつの玉をそれぞれ転がすみたいですっ」
恵ちゃんがそう説明してくれた。
そして俺は男子チームの玉転がしの場所に着いた。
見るとそこには新井がいた。他の二人は他クラスのヤツで名前も顔も知らない。
そこで女子の方を見ると女子チーム四人はすべて女神たちだった。
あいつら神力で他のクラスの女子選手に出場させなかったようだ。
要するに必勝体制にするために女神たちだけのチーム結成としたのだろう。
競うのは各学年男女二チームで合計六チームでの争いとなる。
こういう競技ではチームワークの差で勝利が決まるので、男女の体力差は関係ないことから男女一斉の試合となったようだ。
ルールはスタート地点から三十メートルくらい先にある折り返し地点をUターンして、スタート地点に戻ってゴールとなるようだ。
そして転がす大きな玉も観客側からもはっきりとわかるように、一年は赤、二年は青、三年は黄色と学年カラーになっている。
俺は背丈ほどもあるハリボテの玉の前に立つ。
俺は右から二人目ですぐ左は新井。
つまりいちばん右側のヤツといちばん左側のヤツは一組だか三組だかのヤツでぜんぜん知らんヤツらだ。
「位置について。よーい――」
――ダーンッ!――
競技が始まった。
……ところがである。
俺たち一年男子チームは最悪だった。
玉がまっすぐに進まないのだ。
見れば俺の右横のヤツが力いっぱい押しすぎるのだ。
そして新井の向こうのいちばん左側のヤツは逆にほとんど力を入れていない。
要するにやる気がなさそうなのだ。
なので玉は大きく左に左に曲がってしまう。
「おい。もっと力を抜けよ。じゃないとまっすぐに進まないだろう?」
「知るか。お前たちがもっと力を入れればいいだけだろうが?」
俺が右横のヤツに指摘すると、なんとも反抗的な返事が返ってくる。
「あのさ。もっと力入れてよ。押す力がバラバラだからまっすぐに進まないんだよ?」
新井が自分の左横のヤツにそう意見する。
「……やだね。だりーし」
まったくやる気なしの返答があった。
俺の右横のヤツもそうだが、こいつも駄目なヤツだ。
見ると先頭を行っているのは一年女子の赤い玉だった。
つまり四女神チームである。
本人たちは仲が悪いと互いに言っている様子があるが、こうして見るとなかなかのチームワークであることがよく分かる。
で、俺たちのチームだ。
「うわっ。コースアウトしたぞっ」
「うん。玉の反対側に回ってやり直そうよ」
俺と新井が声を掛け合うことで辛うじてリタイアせずにすんでいるが、非協力的な二人にヤツらのせいで、動きがモタモタしているので、このままだとタイムアウトしかねない。
そんなときだった。
予想もできない出来事が突然起きたのだ。
予兆としてはあった。
俺の右側のヤツの強引な力押し。いちばん左側のヤツの手抜きでまっすぐに進まない玉がいきなり正常に前進し始めたのだ。
何事が起きた?
俺はそう思って俺のすぐ左側にいる新井を見たのだ。
「……だ、誰ですか? あなた?」
驚天動地だった。
新井がいるはずの位置に、たわわな胸で茶髪ポニテ美少女が、笑みを浮かべて玉を押していたのだ。
チームワークは大切なのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。