89話 女体化で決勝も勝つのです。
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……まあ、確かにそれも理屈だな。
そう思った俺は恵ちゃんには手刀の件を謝った。
「すまん。早とちりしてしまったようだ。痛かっただろう?」
すると恵ちゃんはその大きな目をまん丸にした。
「だ、大丈夫ですっ。慣れてますしっ。……でも意外です。大吉さんはちゃんと謝れる人だったんですねっ」
「あ、当たり前だ。俺だって悪いことをすれば謝るぞ」
そんな弁解じみて答えてしまった俺を見て、恵ちゃんはニンマリとする。
「へっへっへ~。なんか嬉しいですっ」
と、ご機嫌な笑顔を見せるのだった。
■
その後、二年生と三年生が綱引き対決したのだが、予想に反して二年生が勝ってしまった。もしかして俺たち一年生に負けたショックがあったのかもしれないが意外な結末だ。
普通であれば、まず三年生が勝つからだ。
その結果、決勝は一勝ずつの一年生と二年生で行われることになった。
「勝ってきますよっ」
「まあ、負けないわね」
「ふぉふぉふぉ」
恵ちゃん、呂姫ちゃん、集子ちゃんが二の腕に力こぶ(小さいが……)を見せて意気揚々と出場していく。
「絶対に……勝つ。……必勝……」
と小声ながらもいちばん気合が入っているのは臥留子ちゃんで、両腕で力こぶ(極小サイズだけど……)を見せつけて去っていくのであった。
綱引き会場の右側が一年生で二年生は左側となった。
「位置について。よーい――」
――ダーンッ!
そして綱引き決勝が始まった。
最初はあまり大きな動きはなかったのだが、先の三年生戦同様に体格差と男女比率差の影響が徐々に出てきて、一年生側はずるずると引っ張られる形になってきた。
……やっぱりな。
……ってことは、やるのかな?
俺がそう思ったときだった。
「「「「「キャーッ!! なによこれっ!!」」」」」」
二年生女子たちが全員全裸になっていた。片手で胸を隠し、もう片手で下を隠す。
「「「「「お願いっ! 見ないで~っ!!」」」」」
いや、それだけじゃなかった。
なんと二年生男子全員が女体化してしまったのだ。
そしてもちろん素っ裸なので胸と下を隠すのに大変で、綱引きどころの騒ぎじゃない。
……これはもしかして臥留子ちゃんの仕業か?
そうなのだ。
先日の林間学校でジジイ姿の金尾集を女体化して金尾集子ちゃんに変身させたのは臥留子ちゃんだった。
だからきっと女体化は臥留子ちゃんの得意技なのかも知れない。
だとすると脱がすのが得意なのが恵ちゃんなので、今の試合は二人の合体技かもしれないな。
そしてである。
引手が誰もいなくなった二年生の綱はずるずると一年生側へと引っ張られ、勝負はついたのであった。
もちろんそのときは服は元に戻り女体化も終わっているし、彼ら彼女らにはその記憶もない状態だ。
会場は割れんばかりの騒ぎとなった。
番狂わせも番狂わせで初っ端の競技でいきなり最下位候補の一年生が優勝してしまったのだからだ。
これには一年生側の観客席だけじゃなくて、来賓の一般の方々も大喜びであった。
そして会場のいちばん見通しがよい校舎の外壁に設けられた得点板には一年生が百点、二年生が五十点、三年生が零点の数字が示されたのであった。
「お疲れ様。……でも神力は次の競技からはほどほどにしろよ」
「わかりましたっ。イエッサーですっ」
そう言って恵ちゃんが敬礼してきた。
「大勢の女体化……は……疲れる……」
そしてそう返事してきたのは臥留子ちゃんだった。
やはり二年生男子が全員裸体の美少女になってしまったのは臥留子ちゃんの神力のようだった。
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私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。