84話 賞品は、わ・た・し・なのです。
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「金尾さんは加茂くんの後ろの席に座ってね」
若杉先生にそう言われた金尾集子ちゃんは両手を振ってクラス中に愛想を振りまきながら机の列をかき分けて俺の後ろの席に座った。
……どうでもいいけど河合さんよりも大きい。これは呂姫ちゃんサイズだな。
俺は歩く度にゆるんゆるん揺れる集子ちゃん(元:ジジイということを忘れて……)の胸を無言で見ていた。
「……大吉さん、言いたいことがありそうですねっ」
「ぐ。……な、なんでもない。……バランスの問題なんだろっ?」
俺は指摘してきた恵ちゃんにそう返事をした。
「はい。バランスが大事です。……でも神武寮の部屋の中でなら巨乳化の姿をお見せできますよっ」
「いらんわっ」
俺はそう返答する。
アンバランスなスタイルなんて見ても仕方ないからな。
これは以前に恵ちゃんが言っていたことで、別に背丈を大きくしたり胸だけを大きくしたりすることは神様だから可能なのだが、幼い少女として今の姿で具現化したことから童顔と小柄な体格に合わせて幼い少女の胸のスタイルを維持している話のことだった。
そのときだった。
まだ教壇に立ったままの若杉先生が続けて発言する。
「はーい。ホームルームはまだ終わっていませんよ。
今朝の職員会議で決まった事柄を発表します」
するとクラス中がしーんと静まり返った。
なにが発表されるのかみんな興味津々と言った様子なのだ。
「――今月末に体育祭が行われます」
「「「「「おおーっ!!」」」」」
どよめきが教室内を支配した。
「去年までは体育祭は秋でした。
ですが秋には文化祭もあることから多忙になることで、今年から体育祭を五月に移行することになったのです」
――神武高校体育祭――
それは校内だけじゃなくて近隣住民に対しても一大イベントだった。
校外からも多数来賓が集まり、住民も競技に参加できるビッグな催しのひとつだったからだ。
当然、クラスの一年生たちもそのことは知っている。
「今年も従来どおり、学年対抗で行われます」
するとクラス中にブーイングが巻き起こった。
それは当然だ。
体力的にいつも優勝するのは三年生、準優勝が二年生、そしてビリが一年生と決まっているからだ。
「みなさんの気持ちもわかります。いつも優勝は三年生ですものね?
でもそんな一年生たちにもやる気が出るように、今年は豪華賞品が目白押しです」
「「「「「おおーっ!!」」」」」
再びどよめきが支配した。
「先生。豪華賞品って例えばなんですかっ?」
学級委員の河合花菜さんがみんなの気持ちを代弁して質問してくれた。
「そうですねー。今の段階で教えられるひとつは学食が一ヶ月間無料になる回数券です」
「「「「「おおーっ!!」」」」」
三度どよめきが支配した。
これは嬉しい。
学食が無料になるのは小遣いの節約にもなるし、なによりいちばん高価なサーロインステーキ定食も心置きなく食べられることを意味するからだ。
「……でも、最大の商品は違います。
今年の商品の目玉は……」
そう言った若杉先生がジャケットを脱いで教壇に置くと、更にブラウスのボタンを上から一つずつ外していくのだ。
やがて先生のたわわな胸を収納した薄ピンクの下着があらわになった。谷間は奥深く底がまるで見えない。
「……今年の賞品の目玉は……わ・た・し……」
そう言って若杉先生は小首を傾げてウィンクを決めたのだった。
「「「「「おおーっ!!」」」」」
四度目、いや今日一番のどよめきが支配した。
「……はう。……痛いですっ」
俺はすかさず隣の席の恵ちゃんに手刀を落とした。
すると恵ちゃんは額を両手で抑えて俺を涙目で見る。
「な、なんですぐにわかっちゃうんですかっ。大吉さん、看破するの早すぎですっ」
「こんなことをするのはお前しかいないだろうがっ」
教壇を見ると先生はいつの間にかブラウスを戻してジャケットも羽織っている。
やはりすべて恵ちゃんの神力の仕業だったようだ。
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私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。