79話 高利貸しの神の登場です。
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「ふぉふぉふぉ……。だいぶお痛が過ぎたようじゃな」
見るとそれは髪を長く伸ばした白髪の老人だった。
頭頂部はすでに髪はないが鼻の下と顎に立派な白髭を蓄えた仙人のような爺さんだ。
「出やがりましたねっ! 人間名:金尾集っ!」
「来やがったなっ! 高利貸しの神っ!」
「……爺さん……。来て……ほしくなかった」
恵ちゃん、呂姫ちゃん、臥留子ちゃんがそれぞれ口にする。
「金尾集? 高利貸しの神?」
俺は当然の疑問を口にした。
新たな神の登場なのはわかるのだが、それだけじゃこの爺さんの説明には不足する。
「……この金尾爺さんは八百万の神の一柱ですっ!」
「こいつは金貸しの神よ。足元見て高利をふっかけるのよ」
「……良くない……人……いや……神……」
なるほど、だいたいわかった。
だがなぜこの場に現れたのかがわからない。
理由のひとつは先程、恵ちゃんたちが言っていた通り神力を使いすぎたため居場所がバレたのだろう。
だが、だからと言ってなぜこの場に登場したのかが不明だ。
だが、その理由はこの爺さんが自ら説明してくれたのだ。
グラスに入った酒を舐めるようにして味わった後にこう告げたのだ。
「無許可で三柱の神が集い、神力を使った。これは組合の規則に抵触するぞ。
なのでワシがすでに罰金を建て替えてやったわい。ふぉふぉふぉ……」
「……八百万組合に払ってくれってなんて……、た、頼んでいませんよっ」
恵ちゃん、呂姫ちゃん、臥留子ちゃんたちの顔色は真っ青だ。
「なあ、罰金ってなんだ? それに八百万組合ってのはなんだ?」
俺は疑問を口にした。
すると呂姫ちゃんが説明してくれた。
「八百万組合って言うのは、私たち八百万の神々が所属している互助組合よ。会費を支払って互いに助け合う組織なの。
そして組織には細かな規則があるのよ。その中に――」
「――無許可で三柱の神が集い、神力を使った、って言ってたな」
俺は呂姫ちゃんの言葉を引き取った。
「そ、そうなんですっ。神々は力が強いので、本来三柱以上が集う時は許可がいるんですっ」
つまりそれが問題になっていると言うことだな。
そしてこの爺さんが罰金を建て替えたと言っていた。
なので金を返せと言いたいのだろう。高利貸しの神って言ってたしな。
「罰金って、いくらなんですかっ!」
「……額を……明らかに……して……」
恵ちゃんと臥留子ちゃんが金尾老人に言い寄る。
「二百両じゃ。すでにお前さんたちの名義で支払済じゃ。感謝するのじゃぞ。ふぉふぉふぉ……」
「ぐぬぬ……。た、大金じゃないですかっ!」
恵ちゃんは歯噛みをして悔しがる。
だが俺はピンと来なかった。
なぜかと言えば二百両って小判だろ? 今の時代でなに言ってんだ? って感じなのだ。
「現在の貨幣制度だといくらになるんだ?」
俺は三女神に問うた。
恵ちゃんはぽかんとして口を開けて考え込んでいる。
呂姫ちゃんは、うぬぬと腕組みして悩んでいる。
ダメだ、こりゃ。
と思っていたら、臥留子ちゃんが答えてくれる。
「……諸説ある。……おそらく……一両は現在の7万円……以上の価値」
……だとすると最低でも一千四百万円以上かよっ! すげえ大金だなっ。
「これが借用書じゃ。ふぉふぉふぉ……」
みると毛筆で書かれた書類だった。
確かに借用書で、神子恵、辻神呂姫、山井臥留子の連名で二百両をこの金尾集から借りたことになっていて、ご丁寧にも三女神の印鑑が押されている。
「……えっと、本人が書いてなくて捺印もしていない書類が有効なのか?」
俺は当然の疑問を口にした。
だが、三女神とも渋い顔のままだ。なにか理由があるに違いない。
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。