78話 理由があったのです。
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「恵ちゃんが子宝の神だから、男女の仲をなんとかしようと言うのは理由としてはわかる。だけどなんか急ぎすぎみたいな印象を受けるんだが……」
俺は思っていたことをぶつけてみた。
やり方があまりにも稚拙だからだ。
すると再び、恵ちゃんと呂姫ちゃん、臥留子ちゃんは顔を見合わせる。
「ちょっとマズイことになりそうなのよ」
最初に口を開いたのは呂姫ちゃんだった。
「私は神子恵の邪魔ができれば楽しいから、ついつい楽しんじゃっていただけなんだけど……」
「……来る。……だれか……が来る……」
ぽつりぽつりと臥留子ちゃんが意味不明な言葉を呟く。
「そうなんですっ。私だけじゃなくて、みんなで神力を使いすぎちゃったから、他の神々に見つかりそうなんですっ」
「見つかる? 他の神々……?」
「はいっ。特に仲が良くない神たちに察知されて邪魔される前に事をなそうと……」
……ははあ。なんとなくわかったきたぞ。
「……それで急いで俺と女子たちをくっつけようと慌てたって訳なのか?」
「はいっ。……そうなんですぅ」
「そうよ。私だって嫌な神の登場は嫌だもの」
うなだれる恵ちゃん。呂姫ちゃんの顔も神妙だ。……臥留子ちゃんだけはいつもの無表情だが、恵ちゃん、呂姫ちゃんに否定している様子はないので同意見なのだろう。
「……わかった。……とりあえずは服装の神力だけを解いてくれ」
すべての神力は今は解けないだろう。
なぜならば、すべての神力がない状態になれば、澤井さん、河合さん、新井に聞かれたくない話ができないからだ。
「わかりましたっ」
「わかったわ」
「……理解……した」
三女神が同意すると部屋の照明は桃色から白色に戻り、男子寝室のベッドの上にいた澤井さんと河合さんは部屋着のジャージ姿に戻った。
「……あら? なんで男子の寝室にいるのかしら?」
「……あれ? おかしいな」
澤井さんと河合さんは、まるで狐につままれたかのようにキョトンとした表情を見せたものの、リビングへと戻ってきた。
――そのときであった。
カランとグラスと氷がぶつかる音がした。
俺はとっさにソファを見る。
するとそこに見知らぬ人物が座ってアルコールを嗜んでいるのが見えたのだ。
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私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。