72話 隠し事なのです。
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「な、なにやってんだっ! 目、つぶってるからその間になんとかしてくれっ!」
俺は言葉通りに目を閉じて、そう叫んだ。
おそらく新井は神力で別のなにかを見ているだろうから、美少女たちの裸体は見ていないに違いないし……。
そんなときだった。
「楽しんでいただけましたかっ?」
「まあ普通の男子なら感涙にむせぶところよね?」
そんなことを口にしながら、姿を現したのはジャージ姿の恵ちゃんと呂姫ちゃんだった。二人ともゾンビや骸骨の格好はしていない。
所詮、その姿は神力で見せていたからだろう。
なんとも偉そうな登場だ。
澤井さん、河合さん、臥留子ちゃんを全裸にしておきながらの態度にちょっと腹が立つ。いや、正直立腹した。
「はう。……痛いですっ!」
「お、おう。……痛い!」
俺は恵ちゃんと呂姫ちゃんに手刀を落とした。
「な、なにするんですかっ! お楽しみしたじゃないですかっ!」
「楽しんだのは否定できないよね? ひどい仕打ちだよ!」
澤井さん、河合さん、臥留子ちゃんの姿は元のジャージ姿と幽霊姿に戻っている。
もちろんさっきまでの痴態のことなんか、まったく憶えていない様子だ。
「いくら神力で記憶も証拠も残らないからって、本人たちの承諾がないのに勝手に裸に剥くな! だいたいなんのために彼女らを裸にする必要があるんだ?」
俺は鼻息も荒く、恵ちゃんと呂姫ちゃんに詰め寄った。
「建前は肝試しですから、悲鳴を上げてもらうためですっ。
でもホントは子宝のためですっ。大吉さんにその気になってもらって種付してもらうためですっ」
「鼻の下伸ばしてたよね? 実は内心では大好評だったよね?」
これは困った。
恵ちゃんの種付うんぬんは頭から否定できるが、呂姫ちゃんの言い分には正当性がある。
うーむ……。
俺はなにか打開策を考えようと試みた。
このまま無垢な美少女たちを生贄にさせる訳にはいかないからだ。
「……じゃ、じゃあ臥留子ちゃんはどうなんだ? 臥留子ちゃんにも俺は欲情して襲いかからなくちゃならないのか?」
同じ女神仲間だ。
まさか臥留子ちゃんの同意もなしにそれを狙っていたとは思えない。
だが、ここで俺は予期せぬ事態を目にすることになった。
恵ちゃんはそっぽを向き下手な口笛をフィーフィーと吹いているし、呂姫ちゃんなんかはあからさまに俺から視線を逸して目を閉じているからだ。
……これは、なにかあるな?
俺はそう確信した。
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。