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07話 寝言です。

【毎日昼の12時と夕方の18時に更新します】


この物語は毎話毎話が短いです。

それは4コマ漫画のようなテンポの良さ、余韻を全面に打ち出しているからです。

……決して、私の手抜きではありません。……きっと。







「幸せに決まっているじゃありませんか?

 一生、神様と縁がない人だって世の中いっぱいいるんですよ。

 むしろそっちの方がずっと多いんですっ」




 恵ちゃんは得意気に言う。




「まあ、

 確かに神様なんだから御利益もありそうだし、俺はきっと幸せなんだろうな」




 俺は言葉を引き取って、ドアを開けた。

 そして外を指さす。




「さあ、もう遅いから、

 そろそろ(ほこら)に帰ったらどうだ?」




 すると(めぐみ)ちゃんはものすごく驚いたようで、

 座布団からぴょんと跳ねた。




「な、なにを言うんですっ。

 私は大吉さんを幸せにするんですよっ。

 追い返してどうするんですかっ?」




「そうは言ってもな。

 布団はひとつしかないし、俺、いちおう男だし。

 面倒が起こる前になんとかしたいと思うだろ?」




「なんて失礼なんですか。

 神様にはもっと丁重に扱って欲しいです」




 そう答えると恵ちゃんは押し入れを開けた。

 そして中から布団を取り出すと畳の上に敷いたのである。




「まさか、俺の布団で寝るなんて言わないだろうな。

 まだ季節的には寒いんだし、風邪引きたくないんだけどな」




 呆然と立っていた俺がそう言うと、

 恵ちゃんは押し入れの中へと入っていった。




「安心してください。

 今夜は私は押し入れで我慢します。でも約束ですよ?」




「なにをだ?」




「さっき言ったじゃないですか。

 明日には神棚を買ってください」




「ああ、そう言えば言ってたな」




 俺が答えると、

 恵ちゃんは押し入れの扉をぴたりを閉めた。




「じゃあ、お休みなさい」




「あ、ああ。お休み」




 俺はあっけにとられっぱなしだった。

 すっかり恵ちゃんなる子宝の神様に振り回されっぱなしだったからだ。

 だが今は温和しく押し入れに入ってくれたので、やっと部屋が静かになった。




「さて、俺も寝るか」




 俺は寝間着に着替えて布団に入る。

 そして電気を消したのであった。




「……なんだか嵐のような一日だったな」




 俺は今日一日を振り返る。

 朝から夕方までは平穏無事な一日だったのだが、

 祠で拝んでから財布や眼鏡を無くしたりして、

 そして子宝の神様が押しかけてきて大騒ぎの一日になったのをしみじみと振り返っていた。




 そうしたら、

 まもなく眠気がやって来て俺は深い眠りについたのであった。




 ……それから二時間くらい経った頃だろうか。




「うるさい」




 俺は飛び起きた。

 時計を見るとすっかり真夜中だ。

 だが近くからいびきが聞こえてきて安眠を邪魔されたのだ。




 最初は隣の部屋のやつかと思った。

 だがよく耳を澄ますとどうやらこの部屋から聞こえてくるような気がするのだ。




「……もしや?」




 俺は押し入れをそっと開けた。

 すると犯人はそこにいた。




 空っぽになった押し入れの中で、

 ネコのように丸くなって眠っている恵ちゃんが、

 グガガーっといびきをかいているのがわかったのだ。




「おい、起きろ」




 俺は恵ちゃんを揺すった。

 だがまったく起きる気配がない。




「……うーん」




 俺は思案に暮れた。

 無理に起こすと気の毒な気もするし、

 だと言ってこのままだと俺が眠れない。それに近所迷惑でもある。




 そのときだった。




「……大吉さん、

 きっと幸せにしてあげますね」




 寝言だった。

 俺はそれを聞いて思わず笑みをもらした。

 悪い神様じゃないんだな、と思ったのだった。




 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。


私の別作品

「生忌物倶楽部」連載中


「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み

「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み

「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み

「墓場でdabada」完結済み 

「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み

「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み

「空から来たりて杖を振る」完結済み

「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み

「こころのこりエンドレス」完結済み

「沈黙のシスターとその戒律」完結済み


 も、よろしくお願いいたします。

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[一言] 神様と一緒にずっと暮らしてほしい
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