64話 新たな神です。
【毎日昼の12時に更新します】
この作品はプロットなしで書いています。
邪神登場以降すべて書きながらのアイディアで書いています。
破綻しなければいいのですが……。
下山は至って快調だった。
俺の手刀が効いたのか、それとも歩きながらの悪ふざけは危険だからなのか不明だが、女子たちの姿が水着に変わることもなかったからだ。
■
廃村の公民館跡に戻った俺たちは一旦各部屋へと帰り、荷物を置いたり着替えたりした後に放送が入り、再度集まることになった。
集まった場所は公民館跡の脇にあるグランドだ。
ここは野球ができるくらいの広さがあり、各クラス別に集まっても余裕がある。
そしてここは到着したときに古い祠があった場所でもあった。
「みなさんにお知らせがあります。急な話ですが転校生を紹介します――」
若杉先生のこの言葉に、俺はとっさに横に並ぶ恵ちゃんと呂姫ちゃんを見た。
きっと疑わしい目で見ていたと思う。
なぜならば二人とも両手を顔の前にクロスさせて、俺の手刀を警戒しながら視線を合わせてきたからだ。
「わ、私じゃありませんよっ! やったとしたら呂姫ちゃんですっ!」
「ちょっと他人のせいにしないでよ! 私もなにもしてないよ!」
恵ちゃんも呂姫ちゃんもそろって否定する。
二人とも神力を使った訳ではなさそうである。
だがそうだとすればおかしい……。
研修の最中のこんな場所で、いきなり転校生の加入は絶対にあり得ない。
しかも前日まで噂にもなっていないのだ。
更にである。
クラス一同、転校生のこと自体には興味津々と言った雰囲気なのだが、この場での転校生加入の異常さについて、誰も疑問に思っていないのだ。
これは明らかに――神力――だろうが!
「――紹介します。山井臥留子さんです――」
紹介された少女が若杉先生の横に並ぶ。
美少女である。
「「「おおっ~」」」
どよめきが辺りを支配した。
現れたのは紺色の着物姿の少女で髪は漆黒で腰までの長髪。
前髪は眉毛の辺りで真横にカットされた姫カット。
肌は青さ混じりの純白で、磁器のような色合いだ。
そして目は切れ長で穏やかで怜悧そうな印象を受ける大人しめの女の子だ。
背は恵ちゃんよりは髙いが高校生の女子としては低い。小学生でも通用するレベルだった。
「……山井……臥留子……です……」
霞のように小さな声で臥留子ちゃんはそう呟いた。
「げっ! 人間名:山井臥留子ちゃんじゃないですかっ!」
「うわっ! 人間名:山井臥留子よっ!」
恵ちゃんと呂姫ちゃんがのけぞるのが見えた。
「ひょっとして知り合いか?」
俺の質問に対して二人は何度も首肯する。
なるほど。
彼女も神なのだろう。だから神力を使ってこんな転校をやらかしている訳だ。
「あの子はヤバいんですっ! 私の天敵のひとり、いや一柱なんですっ! 呂姫ちゃんみたいな者なんですっ!」
「あいつは疫病神! 私もずいぶん手こずった相手なんだよっ!」
散々な言われようだった。
なるほど、疫病神か……。
だが俺はそれほど恐れる気がしなかった。
たぶん麻痺しているのだろう。
だってダメダメ子宝の神と邪神がすでにいるのだ。もうひとりくらい変なのが増えても騒々しいのはそう変わらんだろう。
「――山井さんは宗教上の理由から制服を着られませんので、いつも和服姿となります。そのことをみなさん理解して優しくしてあげてくださいね」
若杉先生はそう言った。
どんな宗教上の理由だよっ! 思わずツッコみたくなってしまう。
「そして班組ですが、河合さんの班でお願いね?」
「はい。わかりました」
河合さんがそう請け負った。
きっとそうなるんだろうなと思ったけど、やっぱりそうなったのであった。
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。