58話 破壊力抜群です。
【毎日昼の12時に更新します】
この作品には以降のストックがありません。
そのため書き上げてからの投稿となるので一日一回の更新となります。
すみませんが、よろしくお願いいたします。
この物語は毎話毎話が短いです。
それは4コマ漫画のようなテンポの良さ、余韻を全面に打ち出しているからです。
……決して、私の手抜きではありません。
……きっと。
俺はなにがなんだかわからなかった。
いきなりさっきまでとは逆の行動を取り始めた二人が異様に思える。
そしてその澤井さんがソファに座り、河合さんがテーブルの上にあるペットボトルのお茶を湯呑に入れたときだった。
「ふああ。……どうしてかしら? やっぱり眠たいわ。ベッドに行こうかしら?」
「ふああ。……あれ? あくびが止まらない。やっぱり寝ようかな」
そう言ってふらふらと立ち上がった二人なのだが、二、三歩進むとまた振り返り、
「……眠くなくなったわ」
「目が覚めちゃった」
と、ソファに戻り、また座ると眠気を訴えて寝室に向かおうとする行為を繰り返しているのだ。
「……おかしい」
これはおかしい。
物事の察しが悪い俺でも、この異変は気がつく。
見ると、恵ちゃんと呂姫ちゃんが互いに、ぐぬぬと唸って睨み合っている。
「……ははあ、なるほど」
ここで俺は察した。
澤井さんと河合さんの二人を眠気をもよおさせて寝室に向かわせようとするのが恵ちゃんの神力。
そして眠気を覚醒させて居間にとどまらせようとさせようとしている、つまり恵ちゃんの邪魔をしているのが呂姫ちゃんの神力なのだろう。
つまり恵ちゃんと呂姫ちゃんの二人の女神は互いに神力を使って争っているに違いない。
「人間名:神子恵。そろそろ観念しなさい」
「なにをっ! 人間名:辻神呂姫。そろそろあきらめなさいっ!」
ふたりは睨み合いながら互いに牽制し合っている。
俺の考えはまず間違いないだろう。
そんなときだった。
この部屋の廊下に通じる扉がバタンと開かれたのだ。
「なに騒いでいるんですか? 消灯時間はとうに過ぎているんですよっ」
若杉先生だった。
この部屋が余りにも騒がしいので、各部屋を巡回している若杉先生の耳に騒動が伝わってしまったに違いない。
先生はつかつかと部屋の中に入って来た。
「楽しくて騒ぎたくなってしまう気持ちはわかるけど、規則なのよ。もう寝なさい」
若杉先生の乱入でこの騒動は終わりを告げる、……かと思われた。
だが余りにも気合が入りすぎている恵ちゃんと呂姫ちゃんにはそれが伝わっていなかったのだ。
「どうしたのかしら? 先生は眠くなってしまったわ。
悪いけど寝室で寝かせてね」
と、女子用寝室へと先生はつかつかと歩み始めたのだ。
だがその状態は数歩しか続かず、ドアの前でいきなりくるりと方向転換した。
「なんだか目が覚めてしまったわ。お茶でも飲もうかしら」
そう言って居間のソファに腰掛けたのだが、ペットボトルのお茶を湯呑に注いでいると、
「ふああ。……すごい眠気だわ。やっぱりベッドを借りるわね」
そう言って立ち上がるのだが、また数歩進むといきなりくるりと方向転換してしまう。
「すっかり眠気が去ってしまったわ。いっそコーヒーでも飲もうかしら?」
と、言ってソファに腰掛けたのだ。
「はう……」
「お、おう……」
恵ちゃんと呂姫ちゃんが額を両手で抑えた。
そして、二人とも、ううう、と唸った。
「なにするんですかっ? 痛いですよっ」
恵ちゃんは涙目だった。
「お、思った以上の破壊力……。一瞬気が遠くなりかけたわ……」
呂姫ちゃんが目を白黒させている。
そうなのだ。俺は恵ちゃんだけじゃなく、呂姫ちゃんの額にも手刀を落としたのであった。
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。